狼の雄叫びのような、迫力ある東城の仕掛け、

雷鳴が轟くような本田からのリーチに挟まれたのだ。
こうなると、いったん身を伏せるしかない。生えたばかりである己の牙を研ぎ澄まし、機を伺うように逃げ隠れる。
そして、その時を待ち続けた阿久津は、再び卓上へと姿を現した。

16巡目
前巡に「テンパイならば見合う」とを押すも、次にやってきたのは
であった。

局面を整理しよう。
・自身は現状、ほぼラス目の親番。
・残りツモ番は、あと1回。
・通っているをツモ切れば
シャンポン待ち。
・無筋のを切れば、
待ちと僅かに広がる。
参考資料して、ナーガの全タイプ判定を確認すると「切ってのダマ寄り」で揃っていた。
ここで阿久津が選んだのは…

目には目を、牙には牙を。
阿久津はあえて危険なに手をかけ、牌を横に向けたのであった。

試合後、自身の振り返り配信において
阿久津翔太
「東城さんはシャンポンも多そう。でも自分がそれをブロックしてるのと、もし
だった場合は
とか
になる。そうなった場合、山に
は残ってそうだから勝負になるかなと。
気合いでトップ取りに行くなら“ここしかない!”って思考から始まりましたね。」
続けて
「あぁっ! 自分が2枚ブロックしてるって事は東城さんの複合系もブロックしている事になるから、やっぱり
はキツかったなー。」

東城へ8,000の放銃。
結果的に、二つ目の傷を負う事とはなった。

阿久津は本来、緻密な理詰めにも長けた打ち手。
だが、時折見せる良い意味での“ラフさ”もまた彼の武器の一つだ。
だからこそ、今この場に座っている。そして対局後の振り返りから得た反省を、すぐさまアップデートし、すでに次の対局を見据えている事だろう。

「色々な人が雷電を下の順位に予想してますが、本当に見る目がないなって思いますよ。」
「昨シーズンの終わり頃から手応えがあって、今シーズンは年間通して戦える力が整った感じがありますね。そして、まだ新しい選手には負けるつもりありません。」
とあるインタビューでの言葉。
普段の様子からは、とても想像できないかもしれない。
しかし、この熱い言葉を発した漢がいる。
その漢とは…

チームメイトが落ち込んでいる時でも、眩しいほどの笑顔で周囲を明るく照らす存在。
本田朋広であった。
昨年度は、レギュラー・シーズン敗退となればチーム編成の見直しを迫られる状況。その中で見事ファイナルへと進出したTEAM雷電。
振り返れば新たな雷電らしさは、それは雷電らしくない裏返しだったのかもしれない。
だが今シーズンは違う。
まだ序盤とはいえ、各選手がのびのびと打ち、しっかり押し、そして何より魅せる面白い麻雀を体現している。
南2局

本日、第一試合に続きバースデー連投となった“やんちゃすぎる系雀士”本田朋広。
しかし、その表情は決して晴れやかなものではなかった。
自身のお祝いムードとは裏腹に、苦しい展開を強いられていたのである。

手牌だけ見れば、ここは切りの一手。
しかし、よく見るとドラのが浮いており且つリーチを受けている。そして、その相手は新加入Mリーガー・阿久津翔太であった。
(本田なら… ここは真っ直ぐ)

ここまで意地でも触れなかったや
の暗刻。
そして、ここでのドラの切り── それは正に心の叫びである。