銀狼の爪痕──東城りおとSai:再始動の夜【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 10/3 第2試合(麻雀LIVEチャンネル)】担当記者 小林正和

狼の雄叫びのような、迫力ある東城の仕掛け、

雷鳴が轟くような本田からのリーチに挟まれたのだ。

こうなると、いったん身を伏せるしかない。生えたばかりである己の牙を研ぎ澄まし、機を伺うように逃げ隠れる。

そして、その時を待ち続けた阿久津は、再び卓上へと姿を現した。

16巡目

前巡に「テンパイならば見合う」と【8ピン】を押すも、次にやってきたのは【2マン】であった。

局面を整理しよう。

・自身は現状、ほぼラス目の親番。
・残りツモ番は、あと1回。
・通っている【2マン】をツモ切れば【6マン】【7マン】シャンポン待ち。
・無筋の【6マン】を切れば、【1マン】【4マン】【7マン】待ちと僅かに広がる。

参考資料して、ナーガの全タイプ判定を確認すると「【2マン】切ってのダマ寄り」で揃っていた。

ここで阿久津が選んだのは…

目には目を、牙には牙を。

阿久津はあえて危険な【6マン】に手をかけ、牌を横に向けたのであった。

試合後、自身の振り返り配信において

阿久津翔太
「東城さんは【6マン】シャンポンも多そう。でも自分がそれをブロックしてるのと、もし【4マン】【7マン】だった場合は【5マン】【5マン】【6マン】【6マン】【7マン】とか【5マン】【6マン】【6マン】【7マン】【8マン】になる。そうなった場合、山に【4マン】【7マン】は残ってそうだから勝負になるかなと。
気合いでトップ取りに行くなら“ここしかない!”って思考から始まりましたね。」

続けて

「あぁっ! 自分が2枚ブロックしてるって事は東城さんの複合系【4マン】【7マン】もブロックしている事になるから、やっぱり【6マン】はキツかったなー。」

東城へ8,000の放銃。
結果的に、二つ目の傷を負う事とはなった。

阿久津は本来、緻密な理詰めにも長けた打ち手。
だが、時折見せる良い意味での“ラフさ”もまた彼の武器の一つだ。

だからこそ、今この場に座っている。そして対局後の振り返りから得た反省を、すぐさまアップデートし、すでに次の対局を見据えている事だろう。

「色々な人が雷電を下の順位に予想してますが、本当に見る目がないなって思いますよ。」

「昨シーズンの終わり頃から手応えがあって、今シーズンは年間通して戦える力が整った感じがありますね。そして、まだ新しい選手には負けるつもりありません。」

とあるインタビューでの言葉。

普段の様子からは、とても想像できないかもしれない。
しかし、この熱い言葉を発した漢がいる。

その漢とは…

チームメイトが落ち込んでいる時でも、眩しいほどの笑顔で周囲を明るく照らす存在。

本田朋広であった。

昨年度は、レギュラー・シーズン敗退となればチーム編成の見直しを迫られる状況。その中で見事ファイナルへと進出したTEAM雷電

振り返れば新たな雷電らしさは、それは雷電らしくない裏返しだったのかもしれない。

だが今シーズンは違う。
まだ序盤とはいえ、各選手がのびのびと打ち、しっかり押し、そして何より魅せる面白い麻雀を体現している。

南2局

本日、第一試合に続きバースデー連投となった“やんちゃすぎる系雀士”本田朋広

しかし、その表情は決して晴れやかなものではなかった。
自身のお祝いムードとは裏腹に、苦しい展開を強いられていたのである。

手牌だけ見れば、ここは【2ソウ】切りの一手。
しかし、よく見るとドラの【中】が浮いており且つリーチを受けている。そして、その相手は新加入Mリーガー・阿久津翔太であった。

(本田なら… ここは真っ直ぐ)

ここまで意地でも触れなかった【東】【北】の暗刻。
そして、ここでのドラの【中】切り── それは正に心の叫びである。

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