――最もスリリングだった局が、続く東2局2本場だ。

北家の柴田が、親の渋川の第1打である
を一鳴き。
なんと柴田は配牌で風牌が3トイツという、小四喜が見える手だった。
渋川がすぐさま
を切ると、柴田は当然これもポン。
卓上に緊張が走る。
渋川の手には
が1枚あるが、さすがにここで手はかけない。
をポンした寿人はイーシャンテンに。戦う構えを見せる。
柴田もいちおうのイーシャンテンだが、
が出れば当然ポン。あくまで狙いは小四喜だ。
やはりイーシャンテンの渋川。7巡目に
をツモったところで手が止まる。
長考の末、
は切らずに打
とした。
はたして、寿人以外にこの
をノータイムで切れる選手がどれだけいるだろうか。痺れる一打だ。
次巡、渋川のツモは
。
結果論ではあるが、渋川が前巡に
を切っていたら、この
は食い上がって柴田のツモ牌だった。
柴田に手出しが入ったことで瞬間的に
の危険度は上がったが、切るならいまとばかりに、渋川は打
とした。
――ここで、渋川が長考した7巡目に戻ろう。
柴田の手牌はこの形だった。
仮定の話だが、渋川が
を切っていたら、柴田はマンズのカンチャンターツを外していただろう。
そして
が重なり、![]()
待ちの小四喜をテンパイしていた。
さらに恐ろしいことに、その
を渋川は11巡目に引いていた。
つまり、7巡目に渋川が
を切っていたら、柴田の小四喜は成就していたかもしれないのだ。
くり返すが、あくまで仮定の話に過ぎない。
それでも、観る者の肝を冷やすほどの一局であった。
最終的にこの局は、寿人が瀬戸熊から
ドラドラ、5200は5800を出アガった。
リードしていたこともあるが、冷静な判断で危機を回避した渋川は見事だった。
──その後は渋川がさらに加点、寿人も跳満をツモって追撃するも、渋川がリードを守り切って、約1か月半ぶりのトップを獲得した。
試合後のインタビューで、渋川は語った。
「連勝どころか1着、2着すらなかったんで、本当に久々に来たチャンスだったんで、この流れ本当に途切れさせられないなと思ってね、かなり気合入ってましたね」
柴田に小四喜の可能性があった局については、こう述べた。
「鳴かれるかどうかはわからないんですけど、鳴かれた瞬間にもうあの局は終わってしまう」
「鳴かれたらひどいなと思ったんで、落ち着いてやろうと思いました」
──攻守に的確な判断を見せた渋川が勝利したことで、サクラナイツは日をまたいでの連勝となった。
今季も折り返しを迎え、チームはいまだ厳しい状況にあるが、桜は厳しい冬に力を蓄えるからこそ、春に咲き誇ることができるのだ。
サクラナイツは一歩ずつ前進し、きっと花を咲かせてくれる。
そう思わせてくれる、好試合であった。

アラフィフ場末雀士。
小説や漫画原作を書いてはボツを繰り返すワナビ。
X:@zantetsusen
note:https://note.com/hagane_5800
















