魔神が見つめるその先は──渋川難波、冴えわたる選択眼【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 12/12 第1試合(麻雀チャンネル)】担当記者 ヤマサンブラック

 

――最もスリリングだった局が、続く東2局2本場だ。


北家の柴田が、親の渋川の第1打である【南】を一鳴き。
なんと柴田は配牌で風牌が3トイツという、小四喜が見える手だった。

渋川がすぐさま【北】を切ると、柴田は当然これもポン。
卓上に緊張が走る。

渋川の手には【東】が1枚あるが、さすがにここで手はかけない。

【白】をポンした寿人はイーシャンテンに。戦う構えを見せる。

柴田もいちおうのイーシャンテンだが、【東】が出れば当然ポン。あくまで狙いは小四喜だ。

やはりイーシャンテンの渋川。7巡目に【1ピン】をツモったところで手が止まる。


仕掛けが入っていない状況なら【東】を切りたいところだが……

長考の末、【東】は切らずに打【6ピン】とした。


同巡、寿人が【西】をノータイムでツモ切り。

はたして、寿人以外にこの【西】をノータイムで切れる選手がどれだけいるだろうか。痺れる一打だ。

次巡、渋川のツモは【西】

結果論ではあるが、渋川が前巡に【東】を切っていたら、この【西】は食い上がって柴田のツモ牌だった。
柴田に手出しが入ったことで瞬間的に【西】の危険度は上がったが、切るならいまとばかりに、渋川は打【西】とした。

――ここで、渋川が長考した7巡目に戻ろう。
柴田の手牌はこの形だった。

仮定の話だが、渋川が【東】を切っていたら、柴田はマンズのカンチャンターツを外していただろう。
そして【西】が重なり、【1ソウ】【4ソウ】待ちの小四喜をテンパイしていた。

さらに恐ろしいことに、その【4ソウ】を渋川は11巡目に引いていた。

つまり、7巡目に渋川が【東】を切っていたら、柴田の小四喜は成就していたかもしれないのだ。
くり返すが、あくまで仮定の話に過ぎない。
それでも、観る者の肝を冷やすほどの一局であった。

最終的にこの局は、寿人が瀬戸熊から【白】ドラドラ、5200は5800を出アガった。

リードしていたこともあるが、冷静な判断で危機を回避した渋川は見事だった。

──その後は渋川がさらに加点、寿人も跳満をツモって追撃するも、渋川がリードを守り切って、約1か月半ぶりのトップを獲得した。

試合後のインタビューで、渋川は語った。

「連勝どころか1着、2着すらなかったんで、本当に久々に来たチャンスだったんで、この流れ本当に途切れさせられないなと思ってね、かなり気合入ってましたね」

柴田に小四喜の可能性があった局については、こう述べた。

「鳴かれるかどうかはわからないんですけど、鳴かれた瞬間にもうあの局は終わってしまう」

「鳴かれたらひどいなと思ったんで、落ち着いてやろうと思いました」

──攻守に的確な判断を見せた渋川が勝利したことで、サクラナイツは日をまたいでの連勝となった。
今季も折り返しを迎え、チームはいまだ厳しい状況にあるが、桜は厳しい冬に力を蓄えるからこそ、春に咲き誇ることができるのだ。

サクラナイツは一歩ずつ前進し、きっと花を咲かせてくれる。
そう思わせてくれる、好試合であった。

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