多井としても、自身の着を上げるためには何としてもアガリが欲しい。しかし、ライバルの瀬戸熊は役の見える2フーロでテンパイ濃厚、しかも最終手出しが
で、
は待ちになっている可能性が高そう。また、こちらも2フーロでテンパイ濃厚の亜樹に放銃してもラス落ちで試合が終わる。
それでも、これを最後の勝負として打つ選択もあっただろう。しかし、多井は
を打って手を崩した。勝負はおろか、トイツの
で粘ろうとすらしなかった。
危ない牌を通し、アガりきれれば確かにカッコいい。しかし、放銃すればそこでジ・エンド、そして通したところでこの手がどれだけアガれるのか。それが分かっているからこそ、多井は自らの放銃での決着を拒否し、あるかも分からない良い結末を目指した。その姿を、本当にカッコいいと思った。この
切りにこそ、多井隆晴という打ち手が常にトップであり続けた理由が詰まっているのではないだろうか。
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は瀬戸熊以外の手に続々とわたり、瑞原に至ってはチートイツのテンパイに。親番で連荘必須、オリがないならここは当然のリーチ。
アガリトップの瀬戸熊にもオリはない。
だから宣言牌のまたぎにもかかわらずこの
を打ち抜き・・・
亜樹のアガリで決着。3900は4500。
対局場が風林火山の赤に染まるなか、ABEMAの中継は、
痛恨のラス落ちを喫した瀬戸熊、
そして我慢に我慢を重ねて瀬戸熊を上回った多井の、対照的な表情と結末を映し出していた。
ABEMASは多井の執念によって、再び雷電の前に出て最後の直接対決を終えた。しかし、ここまで116試合という長いシーズンを戦ってきた両チームのポイント差は、わずか1.4。タンヤオドラ1のアガリで変わってしまうほどの微差は、お互いの命運を残酷なまでに分かつ、とてつもなく重い意味を持つデッドライン。
その境界をABEMASが死守するのか、雷電が踏み越えるのか、あるいは。
Mリーグの、歓喜と悲哀が交差する狂乱のラスト2週間が幕を開けた。

さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。














