西原理恵子 & 山崎一夫 こんにゃくゼリーとモチはどっちが危険?

こんにゃくゼリーとモチはどっちが危険?

ダイエット食品として人気のこんにゃくゼリーで、子供や年寄りが、窒息死する事故が起こり、メーカーに損害賠償を求めるケースが増えているそうです。
関連して、商品の法規制が検討されているとか。

さて、今年の正月も、モチを喉に詰まらせて亡くなった高齢者がたくさんいました。
ぼくも大みそかに、七味たっぷりの温かい素ウドンでムセてしまい、危うく鼻からウドンを出して死ぬかと思いました。

こんにゃくゼリーよりも、モチなどの死亡者のほうが、おそらく何百倍も多いんでしょうけど、規制しようという動きはありません。
もちろん、食べる人の数自体が多いので、危険度を正確に比較するのは難しい。

こんにゃくゼリーで亡くなった方は気の毒ですが、ゼリーの危険度は、モチやウドンやご飯やパンやフグに比べて、規制するほど高くないと思われます。
日常生活には、実際の危険度とイメージがかけ離れているケースもけっこうあります。

夏になると海で溺れた事故が報道されますが、自宅の風呂で溺れる人のほうがもっと多いそうです。
最近は良く知られるようになりましたが、交通事故の死者数と自殺者では、統計上後者のほうが数倍多い。

自殺者の実数は、家族の意向により隠されることも多いので、実態はさらに多いと推測されます。

「車に気をつけてね」

出かける家族にこんな声をかけるのは日常的ですが、

「自殺に気をつけてね」

というのは無い。

アルコール依存症、いわゆるアル中もかなり危険率は高い。
今日の酒で急性アルコール中毒やケンカなどで死ぬ確率は低くても、長いスパンで見ると「慢性自殺」と言われるくらい危険なのだ。
アルコール依存症を夫を持っていた西原理恵子さんは言います。

「アル中は生還率がとても低い病気。十年生存率で見るとガンよりも怖い。
周囲に隠したり、家庭内で無理にめんどうを見ようとすると、関係者全員が地獄を見る。愛情はもちろん必要だけど、治療は専門家に任せるべきだと思います」

交通事故に関する各種保険はたくさんありますが、自殺やアル中専用の保険は聞いたことがない。
保険に関しては、過度に不安を煽るような広告は、以前に比べると規制が厳しくなってます。

ムダなお金をカモられないためにも、こちらの規制は当然のいように思います。
危険度と、リスク負担のコストのバランスを計算するのは難しいと思いますが、

「本当にそうかなあ?」
「どうも怪しい」

という直観は大事にしたいものです。

不運が続いても慎重になり過ぎない

さて麻雀の話です。
昔の麻雀打ちは、個人の勝負の経験を中心に、それぞれの麻雀理論を作り上げていました。

今のようにネット麻雀などが無かったし、統計や確率に関するテキストもあまり普及していませんでした。
もっとも、テキストが豊富な現在だからと言って、ぼくを含めて、みんながマスターしてるというワケじゃない。
特にギャンブルとしての麻雀の現場では、体験から学ぶという基本は、あまり変わってないのかもしれません。

「棒テン・即リー・全ツッパ」

30年ほど前にぼくが提唱した打法です。
棒テン・即リーは現在でもだいたい通用しますが、全ツッパのほうは、完オリ戦術に取って代わられています。

理論上もオンライン麻雀の大量のデータからも。その有効性が証明されています。

「棒テン・即リー・全ツッパ」

に追加して、

「出るポン見るチー、バックに形テン、方アガリ」

というすこぶる下品かつ実用的な打法も紹介しましたが、どちらも評判が良くありませんでした。
当時は人気雀士による華麗な打法が人気で

「最高形への手変わりを待つ」
「相手からの攻撃は回し打ちでしのぐ」
「一鳴きは男の恥」
「当たり牌一点読みの技術」

などが主流だったんです。
かく言うぼくも、学生時代にスポーツ紙に連載していた麻雀記事は、これらのほぼ受け売りでした。
しかし、不特定多数の打ち手を相手にする賭け麻雀の現場では、華麗な手スジでは、ほとんど間に合わないことを学びました。

麻雀の序盤の打ち方として一般的かつ効率がいいとされているのは、孤立したオタ風から捨てる打ち方です。
ただし、これだと字牌を使うホンイツはできにくくなる。

逆に序盤から字牌を大事にする打ち方だと、ホンイツができやすくなり、特にメンホン・チートイツに威力を発揮する。
犠牲になるのはイッツーですが、元もと有利な役ではありません。

字牌を大事にする打法に慣れてる打ち手は、メンホン・チートイツをテンパイした時に、迷わず即リーが打てる。
待ち牌をあらかじめ想定しており、オタ風から切る打ち手とは、経験の量が違うからです。

チートイツでなくても、メンホンの経験が少ないと、

「確実にアガリたい」

と思ってダマテンにしがちです。
多彩な学習がモノを言うんです。

実戦から学ぶことはたくさんありますが、逆に学ばない方がいいケースもあります。
たとえば、リーチは最強の攻撃手段ですが、時には空振りが続くこともある。

「さっきのリーチは失敗だったかも。今回は確実にアガろう」

ダマテンにしたくなります。
で、首尾よくがアガれたりすると、さらに損な学習をする。

「やっぱりダマが得なんだ」

と。

経験による学習はもちろんたいせつです。
特に固定メンツで打つ麻雀は、相手の打ちスジや性格やフトコロ具合などをどれだけ把握してるかが、大きく実入りに影響するんです。
気をつけて欲しいのは

「特殊な例を一般化しない」

こと。
冒頭のこんにゃくゼリーもその例です。

(文:山崎一夫/イラスト:西原理恵子■初出「近代麻雀」2011年2月15日号)

●西原理恵子公式HP「鳥頭の城」⇒ http://www.toriatama.net/
●山崎一夫のブログ・twitter・Facebook・HPは「麻雀たぬ」共通です。⇒ http://mj-tanu.com/

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