西原理恵子 & 山崎一夫 金は使えば使うほど、使う者のところに集まってくる!?




小島武夫プロ 初の自叙伝

ミスター麻雀こと、小島武夫プロの初の自叙伝「ろくでなし」(徳間書店)が好評発売中です。

麻雀プロ第一号にして、今も現役で打ち続ける小島プロが、自分の貧しかった生い立ちから、若いころのギャンブル生活、中年時代の金銭トラブルから女性問題、今年2月で75歳を迎える現在の心境まで、洗いざらい語っております。

「空けたボトルは数知れず」
「泣かした女は星の数」
「借りた金は億単位」
「でも義理は通してきた」

自叙伝らしく、麻雀以外の体験談や人生哲学がたくさん述べられており、とてもおもしろい本に仕上がっております。
20年以上前、

「ツキや流れは幻想」
「待ち牌読みは当たらない」
「棒テン・即リー・全ツッパ」

ぼくが箕もフタも無い実利的な戦術を書き始めたころのこと。

「山ちゃん、こんどいっしょに麻雀の対局物の連載企画をやってくれないか?」

勝負の流れを重要視し、手役派で雄大な雀風の小島プロの誘いに、ちょっと驚いた記憶があります。
懐が深いと言うか、ぼくの記事を読んでなかったと言うか。

おかげで、その誌上対局でずいぶん小島プロの三色や純チャンやメンホンなどを堪能させてもらいました。
大物手が完成するのは、局の終盤になることが多いんですが、小島プロは、手役完成までの時間がその局にあるかどうかを、的確に予測しているかのようでした。

麻雀プロ第一号の小島プロですが、ご本人よると元もとは遊び人の雀ゴロだったそうです。

「貧乏育ち、ケンカも弱い、中卒のオレのたったひとつの武器が麻雀だった」

雀ゴロというのは麻雀好きのお客さんをカモって生活する雀士のことで、小島プロが若いころはたくさんいました。

当時の麻雀は、現在に比べると相対的にレートが高く、技術格差が大きかったので、稼ぎやすかったんです。

その中でもズバ抜けて強かったのが、作家の阿佐田哲也先生の目にとまり「麻雀新撰組」が結成されることになったのだそうです。

以来半世紀近くもトッププロとして君臨し続けているんだからすごいですよね。

腕と勝ち金額は 比例しない

さて、現在は麻雀を覚えるのも楽しむのも、ネットのウェイトが大きくなっています。
また、プロとは呼ばれてこそいないものの、ネット上のランキング上位者は、絶大の信頼と尊敬を受けています。

ライトユーザーを含むとはいえ、圧倒的な参加者の多さと、各プレイヤーのゲーム数の多さが、成績の信頼性を保証しているから。

「ツイてれば、誰だってあれくらいのランキングは取れる」

とは誰も言いません。

ネトゲ廃人などと揶揄されることもあるようですが、若き日の小島プロなども、今のような成功がなければリアル廃人の可能性もあったんじゃないでしょうか。
折り紙つきの強さを誇るネトゲのスタープレイヤーも、残念ながらゲームで現金を稼ぐことはほとんどできない。

現金獲得には、やはりリアルな稼ぎ場が必要です。
現金に関して大雑把なシビれ具合で言えば、

ネット麻雀<セット麻雀<フリー雀荘<マンション麻雀

でしょうか。

20年ほど前に、東風戦の2の2・6のフリー雀荘が流行し、その後数年間たくさんの雀ゴロが繁殖してました。
ぼくが通っていた雀荘に寝泊まりしていた30代のある雀ゴロは、平均月収四十万円くらい。

内訳は、東風戦1回につき、実力でチップ1枚分の(千円)の浮き。ゲーム代を五百円払って、手取り五百円。
月に五百回打って二十五万円、時給に換算すると千五百円くらい。それに月間レースの優勝賞金を店から貰って合計四十万円といったところ。

1ツモ5円の内職のようなものですが、優勝賞金が取れないと、1ツモ3円になってしまうので、小ワザまで総動員して徹底的に勝率と勝ち金額を増やそうとしてるようでした。

●シャミセンや手ジャミ。
●ブラフの長考。
●敵のリーチは一発消し。
●自分が消せなければ下家が消せる牌を出す。
●リーチ者のハイテイはズラす。

など。気持ちは分かる。

1ガーム20分で五百円の内職だ思えば、1ランクの着順の差はもちろん、チップ1枚の重みまで大きい。
3枚オールを引かれたりすれば、1時間のタダ働きになってしまうのだ。

雀荘で寝泊まりしているのも、月間レースをライバルに横取りされないため。
ライバルが成績を伸ばしてくると、直接対戦で相手をツブそうとする。

本人のストレスも大きかったようで、いつも胃袋の辺りに左手を当てて苦しげでした。
いっしょに打っていると、こちらまで胃の具合が悪くなりそうです。
その店はサシウマを認めていたんですが、彼のサシウマを受ける人はいませんでした。

「ガハハハッ」

一方、小島武夫プロの雀ゴロ時代はどうか。
おそらく、1ツモ5円さんのような全力疾走では打っていません。

持ち前の明るさで旦那衆を高レートでカモり、有名になってからはさらに著名人からも、勝率は相手のレベルに合わせて楽しませながらゆったりと勝っていたのではないでしょうか。
ギャンブルの腕と勝ち金額は必ずしも比例しません。

薄い持ち金でシビれながら打つのも良し、旦那衆のように太っ腹に散財するのも良し。
それぞれ好みはあるでしょうが、個人的にはゆったりと勝てたらと思っています。

「山ちゃんね、金は使えば使うほど、使う者のところに集まって来るんだよ」

結果はどうあれ、見事なギャンブル哲学だと思います。

(文:山崎一夫/イラスト:西原理恵子■初出「近代麻雀」2011年3月1日号)

●西原理恵子公式HP「鳥頭の城」⇒ http://www.toriatama.net/
●山崎一夫のブログ・twitter・Facebook・HPは「麻雀たぬ」共通です。⇒ http://mj-tanu.com/

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