オーラス、
たった一つのずれた歯車。
そして堀慎吾に向けられた
大介の牙
文・渡邉浩史郎【木曜担当ライター】2024年12月19日
第1試合
東家:鈴木大介(BEAST X)
南家:滝沢和典(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
西家:堀慎吾(KADOKAWAサクラナイツ)
北家:浅井堂岐(セガサミーフェニックス)
本日一戦目、舞台はオーラスを迎えていた。
ここまで17局のロングゲーム。南1局の時点で50000点を超えていた堂岐の点棒は気が付けばじわじわと削られていき、
南3局、堀のこの親番で裏4が炸裂。8000オールで40000点近くあった点差を捲られてしまっていた。
おまけにオーラスの点棒状況も悪い。それぞれに着順上昇の可能性が薄いため、これ以上傷を広げないように安手でも和了る、いわゆる早い展開になりがちだ。
というわけで堀は自身が重ねて役を作る+相手が重ねてから切りたいのツープラトンで役牌を貯めて形を固定していく。
早速放出した第一の役牌が大介にヒット。
その大介がホンイツと見るや、続けざまにもう一つの役牌も切りだしていく。
やはりここで大事なのは堂岐の親を落とすこと。ネックとなり得る字牌を鳴かせることができれば上家の堂岐に打牌を制限させることができるうえ、堂岐のツモ番を飛ばして滝沢のツモ番を増やすことにもつながる。
これもヒットで大介の副露は二つ目の三元役が晒される。堀からすれば仮に大三元を自模られてもトップの上、という強烈な打牌制限が掛かる牌が場に生まれたのもうれしいところ。
堀のうれしさはまだ続く。大介が切ったに滝沢が声を掛けたのだ。
このポンで滝沢も和了りに向かっていることが伺えるし、場全体の安全牌を消費していることからかなり和了りに向かえそうな形をしていそうだ。
滝沢という打ち手ということを考えても、が浮いているイーシャンテンみたいな和了れなさそうな手牌が出てくることはまずないだろう。
ここで滝沢はを切ってカンを選択。大介の現物に照準を合わせたが……
滝沢は試合後のツイートで簡潔にもう一つの選択の可能性を述べてくれた。
そう。それはカンに取ることである。
先ほども述べたように、堀目線でも滝沢の手牌はかなりしっかりした形であることが伺える。
そうなると堀は滝沢が今聴牌していてもおかしくないと考え、差し込みに向かってくるだろう。
しかし肝心の堀がを持っていないとその差し込みは成立しない。
今回堀の第一打は。これはを持っているパターンが少なくなり、ケースが限られる河だ。
反面は所持率がアップしているため、そこに掛けてもよかったのではないか、というのが滝沢のポストの趣旨だろう。
実際に堀はこの形。を持っており、は持っていない。
これは仮の話だが、滝沢が打としていたら堀はかなり高い確率でを切っていただろう。
堀からすればこの局面で怖いのは、聴牌していないのに滝沢が必要なところを切ってしまって、ようやく滝沢が聴牌したころには差せる牌が無いというパターンである。
その点は自身の手に2枚あるため、一枚切ってももう一枚を持っておくことが可能だ。大介に通りそう、堂岐に両無筋、滝沢の切りにカンは普通に出てくるなどの要素から、差し込み成功となっていた可能性が高い。
もちろんは山にいそうなことはまちがいない。堀が持っていたら打ってくれるし、引いても真っ先に打ってくれる牌だろう。
ほんのわずかだが、ずれた歯車。それで運命が大きく変わるのが麻雀である。
堂岐がや危険牌を掴むことなく5800を大介から和了り切る。
これで目を輝かせたのは当然堂岐だが、その裏で隠していた牙を光らせた男がいた。
放銃した鈴木大介その人である。
【南4局1本場】、これまで苦しかった大介に、あっさりとWドラ赤の聴牌が入る。
これを大介が和了って素点回復で終了、が良くある展開である。
しかし対局舞台裏ではとんでもない大介の牙が暴かれた。