東城りお 今は翼を休めよう 再び頂へ向かい 羽ばたくために【Mリーグ2022-23 インターバルコラム】文・東川亮

東城りお
今は翼を休めよう
再び頂へ向かい
羽ばたくために

文・東川亮

2021年に行われたMリーグドラフトで、セガサミーフェニックスは新戦力として東城りおを獲得した。この指名について当時のネットを調べてみると、賛否両論、さまさまざまな意見が飛び交っていたことが確認できる。

東城は同年の「第15期夕刊フジ杯麻雀女王決定戦」で個人優勝して初タイトルを獲得。
ただ、東城の前に所属していた和久津晶は、東城よりもはるかに多くのタイトルを獲得して実績を残しているだけでなく、自団体の日本プロ麻雀連盟では最上位のA1リーグまで到達した程の打ち手である。いくら成績が振るわなかったとは言え、和久津と契約を満了してまで獲得したのが当時Eリーグの東城とあって、フェニックスのMリーグ優勝への姿勢を疑う声も少なくなかった。

あれから1年半以上が経ったが、今、そのことを鮮明に覚えている人は、そして今も同じように思っている人は、どれくらいいるだろうか。実力を不安視する声もあった東城だったが、Mリーグのレギュラーシーズンでは2シーズン連続でプラスを記録。特に今シーズンはMリーグタイ記録となる個人4 連勝を果たすなど、苦戦を続けるチームにおいて一人、気を吐いていた。

一時はプラスポイントが300を越え、MVPが現実的に見える位置にもつけていた。今シーズンの出場試合数は、24試合。昨シーズンが16試合だったことを考えれば、東城がチーム内において確かな信頼を勝ち得ていたことが、数字からも見えてくるだろう。

東城の麻雀は、基本的にはシンプルだ。守るときはしっかりと守り、攻めるときは攻める。
特にリーチ判断は強烈で、昨シーズンには確定三倍満をリーチして視聴者を驚愕させたシーンがあったが、今シーズンもそこまではないにせよ、ダマテンでも十分高い手を躊躇なくリーチして、さらなる高打点に仕上げていた。

一方で、相手のリーチに対して巧みに立ち回って逆にアガリをもぎ取るシーンもあった。そんな彼女の麻雀に、爽快さと共に頼もしさを覚えたフェニックスファンは少なくなかったはずだ。

3月6日
残り試合数が10試合を切り、いよいよ後がなくなってきた状況。
控え室には近藤誠一茅森早香といった経験豊富な選手がいた。
にも関わらず、フェニックスはこの日の2戦に、いずれも東城を送り出したのだ。本人にとってはMリーグで初めてとなる連闘である。

MVPを狙ってほしいという期待もあっての起用だったという。しかしそれ以上に、チームは東城に浮沈を託した。2シーズンで、彼女はそれだけのものを自らの手で積み上げてきたのだ。

だが、期待に必ず応えられるほど、麻雀は簡単ではない。
この日、東城は初戦の3着に続き、2戦目では自身初となる箱下の4着に沈んだ。初の連闘は、東城の中で苦い一日として記憶されることとなった。そしてフェニックスは浮上することなくレギュラーシーズンを8位で終え、敗退が決まった。

東城の最終成績は+163.0、個人9位。十分に活躍したと言っていい数字だ。しかし、チームが最下位に沈んだとあらば、悔しくないはずがない。おそらく本人にとっても、少なからず後悔することがあったシーズンだったのかもしれない。

ただ、彼女の活躍がチームを支え、彼女の存在がチームの希望となったのも、また事実である。そして何より、彼女はいつでも天真爛漫だった。勝っても負けても同じように朗らかに振る舞う姿は、周囲の雰囲気を明るくさせていた。

フェニックスが現体制のまま翌シーズンを迎えるのであれば、入れ替え規定という残酷なルールとも戦う、試練の1年となる。
しかし、チームが目指すのはあくまでも頂点、悲願であるMリーグ優勝。
そのためには間違いなく、東城の力が必要となる。

今は、傷ついた翼を休めよう。
再び、頂点を目指して羽ばたくために。

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