現物はない。
永井は、
スジの
を場に放った。
「ロン」
何ということだろう。
「18000」
悪夢だ。
いや、夢ならばどれほどよかったことか。
これは紛れもない現実。
手の形としても、ここで切る牌は
しかない。
強いて言うなら、リーチがかかる1巡前に、
暗刻絡みの手役を見て、ここからトイツの
ではなくリャンメンを落とす手はあったかもしれない。
とはいえ、この時点で下石との点差は41700。大差だ。
フラットな点数状況と同じようにリャンメン2つの構えにして、このまま大怪我がないように終わらせよう、という選択を否定することは出来ないだろう。
次の局は、
滝沢が堂岐に5200は5500を放銃し、ゲームセット。
永井は、
-36100点のスコアで、この半荘を終えた。
トップは堂岐なので、最多トップ賞はまだ横並びの状態ではある。
しかし、永井と最高スコア賞を争っている下石が2着となったため、
下石と永井で100ポイントほどの差がつくこととなった。
インタビューでは、
「ここ一ヶ月くらいプレッシャー凄かったので… ちょっときてますね。すみません。」
と、時折声を震わせながら話した永井。
少なくとも昨日、世界の麻雀打ちの中で一番大きなプレッシャーを感じていたのは貴方だろう。
結果は思うようにいかなかったかもしれないが、極度の緊張の中で戦った自分を、まずは褒めてあげてもいいのではないだろうか。
この記事でも見てきたように、大きなミスはなかったように思う。
ここまではプラスの方に出てきた賽の目が、今日はマイナスに転んだ格好だろう。
なんせ、Mリーグ初年度で、これだけの重圧を感じながら麻雀を打った自分を、
「よく頑張ったな」
とねぎらうのがいいと感じる。
また、この経験は長い麻雀人生の中で絶対に活きてくる。
先ほど「世界の麻雀打ちの中で一番大きなプレッシャー」と書いたが、同じ卓についてタイトルを争っていた、下石や滝沢も重圧を感じていないわけがない。
ただ彼らは歴戦の猛者だ。彼らのようにプレッシャーを上手く自分の力に変換出来るようになるには、経験が必要だ。
話は少し逸れるが、下石も永井と同じく今年がMリーグ初年度となる。タイトル戦の経験や、自団体のAリーグで戦ってきている強みはあるだろうが、堂々たる戦いっぷりは見事というほかない。
話を永井に戻すと、今は辛い思いもあるだろうが、永井にとってその心の痛みは必ずや糧となるだろう。
「メンタルにきている」
とも、永井はインタビューで話していた。
確かにポイントをはじめ、色々なものを失った感覚があるかもしれない。
だからこそ、ここで改めて、
Mリーガーになってから過ごしてきた時間を振り返ってほしい。
デビューしたときの緊張。
その後の怒涛の活躍。
ミスをしたときのチームメイトの激励。
一緒に練習をしているプロ仲間の応援。
そして、笑顔で迎えてくれるファンとの交流。
永井孝典が歩いてきた道のりには、たくさんの「温かい感情」が生まれてきた。
そして、それは今なお皆の胸に残っているではないか。













