
勝てるギャンブルと
勝てないギャンブル
私はこう割り切っているハズなんですが、実際には負けるしかないギャンブルにも手を出します。
学生時代フランスのスキーリゾートのシャモニのカジノに行きました。
もちろんスキーが主な目的ですが、ついでにカジノも楽しもうと。
初心者でも楽しめそうなルーレットに挑戦したんですが、負けたのはしょうがないとしても、あまり楽しめませんでした。
私はフランス語はもちろん英語もまったくできなかったので、
「このチップをあそこに張ってください」
が言えなくて近場に張るだけ。
良く平気で地球の裏側まで行く気になったもんです。
で、語学ができたら勝ったかと言うとそんなことはない。
ルーレットは絶対に勝てないギャンブルの一つだからです。
アメリカ式0と00があるルーレットで数字だけに賭ける簡単な思考実験をしましょう。
レイアウトのチップを張る数字は0から36と00の38通り。
全部に同時に1枚ずつチップを張ると合計38枚で必ず一つ当たりますが、配当は36枚。
これが全てです。
他にも多彩な賭け方がありますが、これに収束されるだけ。
「ノーモアベットの直前に球の落下地点を予測する」
「賭けが偏った時には球を投げるディーラーが外しに来るのでその裏をかく」
「ディーラーと組めば勝てるのではないか」
という考えも根強いですが無理。
客が予測できないように作ってあるし、たとえディーラーでも狙えない。
もし狙えたら不正に繋がりますからね。
だいぶ前に外国でコンピュータの映像解析で当たりを予測したグループが逮捕されたというニュースがありましたが、私は懐疑的です。
ノーモアベット以前の動画で予測できるとはとても思えない。
レイアウトの数字の配置は123と並んでても、回転盤の数字は巧みに分散されてますからね。
例外的に縦1列の数字12個賭けのゾーンはけっこう偏ってますが、その当時のコンピュータで予測できたとは思えない。
勝手な推測ですが、
「このシステムを買えば儲かりますよ」
の詐欺だったんじゃないですかね。
次に私たちの身近のパチンコ。
これは一時むちゃくちゃ儲かりました。
元銀玉親方の私が証言します。
私は学生時代に高田馬場のパチンコチェーンで正社員として働いていたので、ギャンブルのハウスがわの思考と行動はある程度学習しました。
その経験から地元高田馬場の白夜書房の「パチンコ必勝ガイド」創刊から記事を書いてました。
もっとも創刊号は必勝法でも攻略法でもなく、地元の知り合いのパチプロの話でしたけど。
パチンコ必勝法は期待値打法がすべて。
これの最初の提唱者は石橋達也プロ。期待値という用語は使ってなかったと思うんですが、千円で何回デジタルが回ると勝てるかの「ボーダーライン理論」として、その後のパチンコ情報誌の基礎を作った功績は大きい。
私が必勝法として提唱したのは、ちょっと違ってて、自力開店プロの奨め。パチンコ店で働いている時には内部情報で
「明日は隣町で新装開店があるから行ってみるか」
勝てる日に勝てる店の勝てる台を打て、腕は不要。
時間に余裕のある大学生などがこれで大きく稼ぎました。
これは熱心なパチンコファンの通常営業での立ち回りにも役立った。
新装開店では命クギを大きく開けて翌日から少しずつ閉めていくパターンが多く、クギ読みの学習が稼ぎながらできるんです。
通常営業でのクギの動きは小さいので分かりにくく初心者には勉強にならないんです。機械相手のギャンブルは期待値計算でほぼ決まる。ただしクギや設定などを調整するのは人間なので対人ゲームの側面もある。
たとえば、新装開店初日に出なかった台は翌日クギを閉めないとか。
初日のデータを見ながら調整する責任者がほとんどですが、データの自然のバラツキへの理解がかつては不足してたんです。閉め残し台を狙えと。
「親方の記事のおかげでパチプロになって人生狂いました」
という方に会いました。
「攻略法で稼げなくなってゴト師に転向。プログラミングを学んで今はゲーム会社をやっています」
すみません、おめでとうございます。この方には麻雀たぬのゲームを作って貰いました。
テラ銭と金利を
払ったら破産する
当時の必勝ガイドの攻略法の開発のメインスタッフは、東工大の学生だった熊ちゃん先生。
編集長の末井昭さんが実機を調達。
熊ちゃんはそれをリバースエンジニアリング的に分解しROM解析するのが仕事です。
「山崎さん、新しいデジパチの攻略法のメドがたちました。メーカーは違いますがROMは同じZ80で下請けは同じ会社なので、例の連チャン機と同じ方法で行けそうです」
こうして推理と実験、演繹と帰納を繰り返し開発するんです。
それ以前にも攻略法販売会社はありましたが、数十万円するシロモノ。
それがコンビニで買えるんだから、発売日に深夜お客さんが押し寄せたのは当然。
私は当時ほっかほっか亭も経営してて、弁当を買いに来た印刷屋さんから良く聞かれました。
「親方、印刷中のこの記事もっと詳しく教えて。発売前に仕事を休んで打ちに行くから」
漫画家の西原理恵子さんは、借金のある友だちに攻略法を教えて完済させたそうです。
この情報格差が大事。
古い話なので間違いがあるかもとやや心配。私のメモリは揮発性なので。
さて肝心の麻雀ですが、勝てるギャンブルの側面もありますが、今は楽しむ対人ゲームとして捉えてる人が多くなりました。
またTVなどで見るゲームとしても大人気です。
たぬに打ちに来るMリーグファンの1人は、イチ押しプロのようにカッコ良く勝ちたいと。
カッコ良くにウェイトがありそうです。
最後にギャンブルに戻ってアドバイス。
パチンコの攻略法で月収の期待値が二百万円とすごいのがありました。
週刊プレイボーイの連載でこんな予告。
「来週までに借金してでも数万円用意してください。絶対勝てる攻略法を伝授します」
これはごく特殊な状況の時に言えた話。
ギャンブルライターなのに勝てる話はめったにしません。
ギャンブルで勝てるのはハウスとゴト師くらい。
ハウスにコミッションを取られて、借金の金利を払ったら生き残れるワケがないんです。
(文:山崎一夫/イラスト:西原理恵子■初出「近代麻雀」2022年8月号)
●西原理恵子公式HP「鳥頭の城」⇒ http://www.toriatama.net/
●山崎一夫のブログ・twitter・Facebook・HPは「麻雀たぬ」共通です。⇒ http://mj-tanu.com/
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