王道・滝沢和典が魅せた
後の先の極意
文・越野智紀【金曜担当ライター】2022年1月28日
【第1試合】

東家:多井隆晴(渋谷ABEMAS)
南家:二階堂亜樹(EX風林火山)
西家:近藤誠一(セガサミーフェニックス)
北家:滝沢和典(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
今シーズンの滝沢和典は燃えています。
昨シーズン優勝したEX風林火山から自主的に離脱という麻雀バガボンド(放浪者)の通り名に違わぬ選択で周囲を驚かせると、その後のドラフトでKONAMI麻雀格闘倶楽部からの指名を受けMリーグ史上初の移籍選手として新しいスタートを切りました。
どんなチーム競技でも移籍選手の成績は注目されやすく、そのチームの優勝までに足りなかったポイントを求められがちです。
結果が悪ければ「滝沢が勝っていたら…」と敗因にされることもありますが、活躍出来れば「滝沢のおかげで…」となります。
優勝ともなれば昨シーズン優勝チームからの移籍ということもあり優勝請負人と言われそうです。
新年を首位で迎えていたKONAMI麻雀格闘倶楽部は、直近18戦ノートップで現在は7位まで転落。
滝沢にチームの危機を救う見せ場が訪れました。

東2局4巡目、親の亜樹からダブ暗刻で高目三色のリーチが入ると
「これは親の亜樹が圧倒的有利に見えます。追いつけそうな人もいないですものね」
実況の一級フラグ建築士・松嶋桃が発した言葉を分岐点に滝沢の手が整っていきます。

と引いて無筋の
を押した後、
引き。
この手はを切るのが一番受け入れ枚数の多いイーシャンテンになりますが

滝沢の選択はツモ切り。
亜樹のリーチはがトイツ落としでチートイツの可能性がかなり低く、
トイツ落とし前に
が場に1枚見えているので
から
を切っていったような
のシャンポン残りのケースもほぼありません。
と使いやすい牌もリーチ前に切られているので愚形率は低そうです。
良形なら辺りが危険で、
は手の変化次第では使える牌なので残すと

狙いの一つだった引きで現物の
を切りながらタンヤオに変化。
これで鳴いても役有りテンパイが取れる形となりました。

「からは鳴くつもりでした」
と、終わった後にインタビューで応えていた滝沢は上家近藤からが続けて打たれるも鳴かず。

涼しい顔をしています。
この時、は山に2枚残り。
良形想定の亜樹のリーチに山に少なそうな待ちでは分が悪いと判断していました。
前回の試合で鳴くべき牌を鳴かなかったことを反省するも「そのミスを引きずらないように焦らずに打つ」と負の連鎖を生まないように気をつけていた滝沢。

亜樹のロン牌を吸収して
切り。
攻守のバランスを取りながら手を進め、納得のイーシャンテンに辿り着くと

をポンしてのテンパイ。

亜樹の手と山に残っている有効牌の枚数を推測し、完璧な手順で満貫のアガリとなりました。
相手の動きに合わせて討ち取る滝沢得意の『後の先』の麻雀で一本取ると、さらに南1局

亜樹のカンと
チーを受け

トップ目の滝沢はダマテンを選択。
亜樹へのロン牌だけは打たないつもりでいました。

亜樹の手が役牌暗刻なら本命と思われるを掴むも平然と切る滝沢。
亜樹の手役は三色・一通だと手順が不自然で、滝沢の目から亜樹に残っていた役牌はのみ。
唯一警戒が必要な暗刻
トイツの場合は
と
の切り順が逆になっていると読め、滝沢には亜樹の手が
のシャンポンと見えていました。

亜樹がアガれないほうのを引いてフリテンになるや

で放銃する心配が無くなった滝沢は満を持してのツモ切りリーチ。
