負けられない鳳凰位
白鳥翔は焦らされても
焦らなかった
【A卓】担当記者:うめきち 2026年10月18日(日)
負けられない男は、焦らされても焦らない。
この日の白鳥翔は、それを私に見せてくれた。
看板を背負った4人
麻雀最強戦2026の団体対抗スペシャル合戦に出るのは、各団体のチャンピオン。最高位の牧野伸彦、雀王の西村雄一郎、将王の石原真人、そして鳳凰位の白鳥翔。自分の団体のチャンピオンが一番強いと証明してほしい。応援する人は、みなそう願っているだろう。団体の大将同士が、看板を賭けてぶつかる。勝ち上がれるのは2人だけ。1回で決めてしまうのが惜しいほどの顔ぶれである。
白鳥は鳳凰位を連覇し、連盟の副会長でもある。団体を背負う思いは、人一倍強いはずだ。紹介動画では、他団体の人と打つ機会が増え、負けたくないより負けられないという気持ちが大きくなったと話していた。一方で、最近は気持ちが強くなり、点差がついても全然焦らないそうだ。
その言葉が本物かどうか。この半荘で、それが試されることになる。
二人の麻雀を見ている時間
場を動かしたのは、石原と西村だった。西村が仕掛けて、石原が受けて立つ。白鳥の下家は、その西村である。よく仕掛ける下家に合わせて打たされる時間が続いた。
その代表が、東1局1本場の石原だ。ドラの
を、イーシャンテンから西村に対して押した。
西村はすでに
と
を仕掛け、ピンズの染め手に向かっている。
親番とはいえ、まだ東1局。それでも止まらなかった。試合後、本人はこう話している。
「ドラのあるホンイツか分からなかったが、自分がいらなかったのとタンピン三色のいい手だったので自己都合で行った」
自己都合。いい言葉だ。団体の看板を背負った場でも、石原は自分の手の都合で堂々と押す。
そして石原は、力強く三色タンヤオツモの4100オール。
石原はここから、最後まで先頭を走った。
白鳥も、見ているだけではなかった。東1局2本場は、牧野のリーチを仕掛けて蹴り、タンヤオドラの500・1000は700・1200をツモ。
けれど東3局は、白鳥が親の先制リーチをするも、西村の
ドラの2000に捕まる。
南2局には、安い仕掛けを見せ続けた西村が、牧野からチンイツ8000は8600を決める。
白鳥は3着、18600点で南3局の親番を迎えた。2着の西村とは11300点差。上を目指すなら、この親番は手放せない。
切らなかった
と![]()
石原は白鳥の親を流しにかかり、西村もそれを助けようと必死に鳴かれそうな牌を切る。
だが、石原の欲しい牌はなかなか出ない。西村は後に「何にも鳴いてくれないんだもん」と話した。
石原は、鳴けなくてごめんと思っていたそうだ。息の合った二人のコンビ技である。それでも石原はついに
を鳴き、テンパイが濃厚な気配を漂わせた。
そこで白鳥の手もテンパイした。
ただし、そのままテンパイを維持するなら切るのは
か
だ。さあ、あなたならどうする?
白鳥の読みでは、石原の待ちは![]()
か![]()
。切る牌が、まさにそれになる。しかも、見えていないドラの
が石原の手にあるかもしれない。放銃すれば、オーラスの条件が一気に重くなる。
試合後の言葉はこうだ。
「石原さんの待ちが![]()
か![]()
ぐらいしか残ってなく、流局してもマンツモ条件が残るのでリーチしなかった」
白鳥は切らなかった。親番のテンパイを、自分の手で手放したのである。
焦っていたら、危ない牌を切ってリーチと行ってしまう場面だ。じりじり流されそうな親番で、たった1つの危ない牌を我慢する。それは、ぎりぎりのところで戦っている人にしかできない。
その後、牧野がドラ暗刻の
単騎でリーチをかけた。
白鳥は
を鳴いてテンパイ形にし、牧野に危ない
を押す。
さっき手放したテンパイを、今度は拾いに行ったのだ。親が続けば、もう一度勝負ができる。石原への![]()
の危険度にくらべれば牧野への
の危険度の方が少なく、形式テンパイとの天秤で押したのだろう。西村だけがノーテンで流局し、白鳥は親を守った。
私は思った。我慢とは、押さないことではない。押す場所を選ぶことだ。静かに座る白鳥の背中には、連盟の看板がのっている。重いものを背負った人は、軽々しく動けない。だから動くときは、ちゃんと選ぶのだ。
7枚山と掴んだ![]()
南3局1本場。白鳥はドラ2で先制リーチをかけた。
待望の親の先制リーチである。前局、形式テンパイした甲斐があった。待ちは
と
、山に残るのは7枚。この時点で白鳥のアガリはほぼ確実と誰もが思っただろう。しかしほぼオリていた石原は、白鳥のアガリ牌
を2枚吸収し、ピンフ三色をテンパイ。ヤミテンにする。












