「魚谷さんと高宮さんと黒沢さんを足して3で割ったような顔だね!」
とよく言われるけれど、憧れの女流プロ3人のような強いハートは、私には無い。ちなみに、名前は小林桃っていうんだけど…。
なんせ、すぐにあきらめてしまう自分をふがいなく思ったことは数えきれない。
でも、白鳥さんは私と違ってあきらめずに粘り強く戦って、不死鳥のごとく何度もよみがえってきた。南場に強い白鳥さん。今日もここからが勝負処。
いつのまにか頼りなく曲がっていた背筋を伸ばして、私は椅子に座りなおした。
【南1局】
この局、違和感が私を襲う。西家の白鳥さんの4巡目の手牌、
を引いて、一気に引き締まった。
とは1枚切れ、はション牌。
ん?白鳥さんはを切った。同じ1枚切れなら、当たった時の打点と他の人の役牌を潰しておくことを考えてを切った方がいい。
次巡、
を引いて、切り。これもを切った方がいい。
を引いたこの形、点棒がないことを考えると、ドラのか456の三色が狙える、打点的にどちらかは使いたい。が重なって仕掛けての1000点はアガる価値がほとんど無いし、門前でいくにしろが重なるとタンヤオもピンフも消えてしまう。
つまり、が重なっても全く嬉しくない手なのだ。
さらに、
は6巡目に1枚切れ。ここでも白鳥は、
を切ってを残す。このようにをあとに引っ張れば引っ張るほど、他の人に鳴かれる可能性は上がってしまう。途中で重ねられることが多くなるのと、序盤にバラバラだと役牌は鳴きにくいが巡目が経って手が整ってくると鳴きやすくなるのが理由だ。
繰り返すが、この手で役牌の重なりは不要だ。どうせ切り出すのなら、先に役牌を処理した方がいい。
結局8巡目にを切って無事に通過したけれど、字牌の切り順には違和感を覚えた。
その次の巡目に、
やった!ドラが重なった!
一気に勝負手になった。胸が高鳴る。。
…でも。なにかが違う。
次巡、
を持ってきた白鳥さん。
一度つかんで、
また離して、
結局ツモ切った。
一体、どうしちゃったのだろう。
確かにこの巡目にが4枚切れになった。でも、状況の変化はほぼそれだけ。マンズの下目(数字の小さい方)は他家が3者とも切っていて、良さそうなことに変わりはない。
しかもを切ったのは下家の村上さん。白鳥さんが思考を整理する時間はあったはず。普段の白鳥さんなら、を引いた時にどうするかというシミュレーションは、すでに終えているだろう。
そのうえは待ちに絡む可能性のある部分、迷いがキズになってしまうことも大いににある。
自信の無さが、迷いにつながっているのか…私にはそう見えてしまった。
そして、
親の滝沢さんから先制リーチがかかる。
白鳥さんは、