語弊を恐れずにいえば「麻雀オタク」の喋り方ではなく、「野球少年」の喋り方なのだ。大谷翔平が三振を奪い、ホームランを打つ姿を見て「すっげぇ!」と目をキラキラさせながら野球クラブの友達と話す。そういうところが垣間見える。
だから、彼の解説は、無邪気な可愛さと、爽やかさが兼ね備わっている。
もちろん麻雀の解説も、麻雀が下手な私にもとても分かりやすい。
松本吉弘は、身長が高く、眼鏡が似合っていて、声がいい。
そして彼は青山学院大学出身だ。
青学は昔から人気があり、偏差値も高いが、ここ最近さらに人気が高い。
人気があるのは、卒業生である桑田佳祐のような芸術性、最近の箱根駅伝に象徴されるスポーツ性、「青山」の名の通り、東京のど真ん中にあるファッション性などがある。
ただ青学に足りなかったパーツがひとつあった。それは「経済性」だ。青学といえば、チャラい、というイメージがどうしてもあった。でもひとりの卒業生がそのイメージを変えた。
サイバーエージェント代表取締役であり、
Mリーグのチェアマンであり、松本が所属する
「渋谷ABEMAS」の監督、藤田晋だ。
たったひとりの人間の生き様が、その人間が所属していたところの価値を変える。藤田は、青学の価値を変えた。
松本はMリーグ最年少の26歳だ。
彼のこれからの生き様が、Mリーグの価値を上げていく。
これは、当たり前といえば当たり前だ。彼は、社会人でいうと4年目にして何千人もいる会社の中のトップ21人にいるのと同じ、出世頭のエリートなのだ。彼が活躍すれば、Mリーグも発展する。
彼はそういう責任がある立場に、実はいるのだ。Mリーグの前半の戦いをみて、その責任をはたせるのか、それはまだ分からない。でもその仕事をまっとうする姿勢、責任感は感じる。腹を括っている。だから頼りがいがある。
彼がMリーグを背負って立つ。立たなければならない。
だからこそ渋谷ABEMAS・藤田監督は彼をドラフト指名し、大切な渋谷ABEMAS開幕初戦をドラフト1位であり絶対的エースの多井隆晴ではなく彼に任せたのだろう。
松本吉弘は、身長が高く、眼鏡が似合っていて、声が良くて、頭も良くて、エリートで、頼れる男だ。
落語の「寿限無」ではないが、
「松本吉弘」という名前の中には、
そんないろんな【意味】がつまっている。
ここまでくると女性ではなく、男性も彼のことを好きになる。ナイスガイなのだ。
私はこの3ヶ月でそのことがわかった。
2019年1月から始まるMリーグ後半戦。
ここからは1戦1戦が優勝につながる大切なものとなってくる。
そんなヒリヒリした状況こそ、彼の力が発揮できるところだ。こういうときの体育会系は強い。麻雀は頭脳ゲームと思われがちだが、頭脳を支えるのは、肉体だからだ。Mリーガーで1万メートル走をしたから、おそらく彼が1位だろう。これは、本当に大きな魅力だ。
Mリーグをまだ個人個人を見たことがない人。
まだ遅くはない。これからの彼の戦いを見れば、彼の魅力がわかるはずだ。
3ヶ月前まで彼のことをろくすっぽ知らなかった私が、今や彼の出番を待っているのだから。
「卓上のヒットマン」という名を持つ彼。
撃ち抜かれるのは同卓してる雀士だけではなく、それを見ている私達の心もターゲットになっている。
花崎圭司(はなさきけいじ)
放送作家・小説家・シナリオライター。映画化になった二階堂亜樹の半生を描いた漫画「aki」(竹書房刊)の脚本を担当。