渋川難波は
本当に人読みを
重視しないのか?
文・越野智紀【火曜担当ライター】2022年 10月 4日
第2試合
東家:渋川難波(KADOKAWAサクラナイツ)
南家:二階堂亜樹(EX風林火山)
西家:鈴木たろう(赤坂ドリブンズ)
北家:日向藍子(渋谷ABEMAS)
人読みとは、相手の持つ特徴から見えない部分を推測することです。
例えばジャンケンでグーを出した直後はチョキを出さないといった特徴を持った人と対戦した場合、こちらがグーを出すことで
相手がグー→あいこ。次回パーを出せば負け無し。
相手がチョキ→勝ち。
相手がパー→負け。
と、勝率を6割ぐらいに上げることが出来ます。
これが人読みを利用した戦い方です。
この試合の注目ポイントは昨シーズンまで公式解説員として活躍していた渋川難波選手。
今シーズンから桜の騎士団に入団した渋川選手のMリーグデビュー戦はチームの2試合目にやってきました。
開幕前のアンケートで人読みをあまり使わないと回答しているのを見て驚いたのですが、解説として全Mリーガーの麻雀を見てきた渋川選手が人読みを重視しないなんてことが本当にあるのでしょうか?
国士に対して2枚切れの字牌で受け始めた某ベテランプロが「国士だったの? 安全パイ残してただけだカラ」と惚けて答えていたという話しを聞いたこともあるので、若くして老獪な打ち手の渋川選手も情報戦を意識して惚けている可能性があるのではないか?
その謎を解明するため、我々調査員は渋川選手のデビュー戦の観戦へと向かいました。
東1局。
渋川選手の最初のアクションは親番でをポンして切り。
チートイツのリャンシャンテンよりも、と比較的鳴きやすそうなトイツたちを活かして「トイトイになったら嬉しいな」的な仕掛けで攻めに出ました。
を残してギリギリまで高打点への変化を期待していましたが、と鳴けてしまったことで不本意なのみのテンパイ。
安いながらもMリーグ初アガリが見えてきましたが
この仕掛けに対抗したたろう選手に阻止されてしまい、最初の親番は不発に終わります。
続く東2局。
そこそこまとまった手が入った渋川選手の動きが止まります。
親番の亜樹選手が全て手出しで強烈な捨て牌。
の手出しだけなら遠くて高い手の可能性もまだあるのかもしれませんが、その前のダブ切りで遠い手の可能性が激減していました。
東場の親にとって一度重ねてポンが出来れば二翻になるダブは価値が高い牌なので、それが第1打から切られていたら要警戒です。
さらにたろう選手からもが切られていて、だいぶ後手を踏みそうな状況。
ここでをカンした直後に親からリーチが来た日には地獄絵図です。
今まで解説で見てきた亜樹選手の打ち筋を考慮して人読みを入れれば、ここから対応に回る案も有力な選択に見えました。
ただ浮いてる牌の何かがトイツになれば暗カンして充分勝負出来る形でピンズの伸び次第では一気通貫やホンイツもあり、を1枚外すにはあまりにも惜しい手。
相手が誰かは気にせず自分の手を評価して真っ直ぐ切ったを見て、人読みを重視しない話しは本当なんだと理解しました。
すぐに亜樹選手からリーチがきて「あぁ先に切っておけば良かった」と後悔しながら降りることになりましたが、手詰まる前に亜樹選手がツモアガリ。
その後、デビュー戦のプレッシャーか点棒が減っていったためか徐々に渋川選手の表情が曇っていきます。
早めにトップを取ってリラックスしたいと語っていた渋川選手を尻目に、この試合でトップを奪ったのは日向選手でした。
東2局2本場。
を切るとのイーシャンテンで現状では一番受けの広い形になりますが、日向選手はを残して切りを選択。
これはやを引いた時により受け入れの広いイーシャンテンに変化することや、そこからテンパイした時にはやといったリャンメン待ちが残ることが強みです。
こういった良形を目指した打ち方は日向選手の特徴の一つかもしれません。
またを早めに切ることで相手の読みを狂わす効果も少し期待できます。