見えない数巡後の
未来に対して
最大限の努力をして
待ち構える
文・越野智紀【金曜担当ライター】2021年11月5日
Mリーグ2021(11/5第1試合)
気分転換で髪型を変える系Mリーガーの白鳥選手が、髪の色を金から濃い青にして登場しました。
その少し黒く見える濃い青色は勝色(かついろ)とも言い、その「勝」の字から縁起色として古くは武士や軍人等に好まれたようです。
勝利のカラーで今期の初トップを目指した白鳥選手は東1局。
2巡目に絶好のカンを引き指先が躍動します。
「今日は俺の日だ」と自信に満ち溢れた雰囲気です。
2枚目のも余裕のスルーでを引くと待ちのテンパイ。
ツモればハネ満からの、待ちも打点も充分過ぎるリーチを打ちます。
これに追いついたのは東城選手。
自身は場に1枚ずつ打たれたとのシャンポン待ちで、打点もリーチをかけて2,600からと待ちも打点もやや不満な手でした。
白鳥選手はドラのを切ってからとを手出し。
もしその手が不十分ならばドラのを先に切らないパターンが多いので、これは少し侮りづらいリーチに見えます。
白鳥選手の1軒リーチなら1枚切れのとが堀・鈴木の両選手からも狙えるかもしれません。
リーチかダマテンか、それともどちらかの字牌を切って受けるか?
3つの選択肢がどれも考えられそうな局面でしたが、東城選手の結論はリーチ。
一発や裏1で5,200なら充分勝負手になるし、自称している「私は運が良い」の言葉を信じて一番強気な選択を取りました。
このリーチ対決に敗れた白鳥選手は2,600の放銃。
マラソンで前を走ってる人に追いつけると思った瞬間に、その人にスパートされて突き放されると追いかけるの諦めて走るのを止めて最後は缶コーヒー飲む現象あるじゃないですか?
イケるかもと思った瞬間に躓くと、人は深刻なダメージを受けるんです。
ここから何かが噛み合わなくなってきた白鳥選手は、劣勢で迎えた南3局の親番で
先制リーチの堀選手に現物のを切らず、の3枚切れを見ての先切りをします。
これにはを引いた時にがリーチ宣言牌になるのと比較して、先にを切っておいたほうが他家からが出やすいという利点があります。
麻雀牌は各種4枚ずつ入っていることはわかっているのですが、絵に描いたような裏目。
を先に切っていれば一発ツモになっていたで悲しみのカンリーチを打ちますが
麻雀の神は許してくれませんでした。
白鳥選手は3週間前の試合後のインタビューで朝倉選手に対し
「ここから逆連対させればどうせメンタル弱って1年通してやられくんじゃないかなと思ったんで、絶対3,4着引かせたかったんですけどちょっと無理でした。」
こんなことを言っていましたが、人を呪わば穴二つ。
その時の呪いが今になって自身に跳ね返ってきたのかもしれません。
白鳥選手の髪の色もよく見ると勝色っていうほどは濃い青じゃなく、青藍色ぐらいの明るさに見えてきました。
この試合トップを獲ったのは誰かを呪うことなく我が道を突き進んだたろう選手。
東2局の親番で
東城選手のリーチと白鳥選手の仕掛けを受けた13巡目にリャンシャンテンから無筋のを切ります。
ドラが場に多く見えていたこともあり、放銃しても高くならなさそうな牌では簡単には止まらない構えです。
その後、で東城選手に1,300を放銃しますが全く意に介さず。
次は東4局1本場。
白鳥のとリャンメンターツを落とした好形に見えるリーチに対しても、淡泊に降りたりはしません。
自身の読みで通りそうな無筋は押しです。
だいたいアガれない手なんですが、数巡したらマンズのターツが安全になってにくっついて引いたりして状況が激変していることもあります。
見えない数巡後の未来に対して最大限の努力をして待ち構えるのがたろう選手の強さの1つです。
こういう一見無駄になりそうな押しには他にも良い効果があって、押してる割合を増やすことで後の勝負手の押しが目立たなくなります。