「自分の判断を信じる才能…!」
「揺れない心——」
ソノダ
〜Mリーグに降り立った天才〜
文・渡邉浩史郎【金曜担当ライター】2021年11月5日
Mリーグ2021(11/5第2試合)
麻雀というゲームの本質とは一体何であろうか。
ありとあらゆるデータ・経験則・読みから目の前の手牌にある選択肢に傾斜をつけていくことで、自分が思う「最善の一打」を選択していく。正解・不正解が不明瞭な比較のゲームであるというのが昨今の認識に近いと思われる。
「最善の一打」が「必勝の一打」ではないのが麻雀の難しいところであり、ここまで多くの人を引き付けるに至った理由といっても過言ではないだろう。「最善」に「結果」が伴わないその様は、人生にまで例えられてきた。
なればその本質は、自分の判断にいかに純粋に殉ずることができるかのメンタルゲームというところにあるのではないだろうか。
どんなに苦しい時でも自分の判断が揺るがず、常に同じ打法でまっすぐ進む。そんな男を皆様も一人知っているだろう。
園田が麻雀賢者と呼ばれる所以。そのすべてを詰めた一局を見ていこう。
【東1局】
配牌、この手から唯一の頭を壊す打。123の三色を強く見つつの進行かと思われた。
次巡。この重なりを捉えられる人間はそう多くはないだろう。打でいよいよ123の三色が濃厚。
いきなり上家の沢崎からネックのを対子落としされてしまうが……
ここはスルー。スピードも安全度も打点もないこの手、いくら躱せたら大きいとはいえ。
・上家沢崎は対子落とし
・下家親の日向は2巡目W切り
・対面近藤は役牌二種からの切り出し
重厚な麻雀を打つ他家三人がこの切り出し。
から鳴いては手役もばれやすく、せいぜいドラの切り出しを躊躇させるくらいしか足止め効果もなさそう。不安定な10枚でアガリに向かうのは厳しいという判断だ。
さらにネックのが沢崎から対子落としされる。一枚目はスルーしており、これも当然スルーかと思われたが……
チーとした!
切るのはもちろん、手役に関係ない余分なターツの中で一番使いにくいか……
!? この手唯一の純粋な両面を壊していった!
この園田の切り出し、狙いは役を絞らせないことだろう。を切り出せばいずれ切り出されるも併せて、下の三色やチャンタが本線といえる河になってしまい、の二鳴きも合わせて高くないことが周りにばれてしまう。自身のスピードがないだけに、真っ直ぐ来られるのはあまり得策ではない場面だ。
一方で打としておけばホンイツ・チンイツ移行などといった高い手が匂い、字牌やマンズといった特定の牌に対する明確な抑止に成り得る。場に高いピンズを処理でき、安全牌の字牌を自然と抱え込みやすいのもメリットの一つだろう。
いわゆるブラフ仕掛けに近く、賛否の分かれるところである。一方で、
「この手をもらった時点でこの局の収支はマイナスである。だったら少しでも他家の読みをずらさせてアガリ逃しやリーチ判断といったところでミスを誘えたら、最小限のマイナスでこの局を消化できるのではないか。」
という園田の「最善」の判断が伺える一局となったのは確かであろう。
そんな園田の判断がどうなったか……