仲林圭よ
お前はこの嵐を
乗り切るために
海賊船に呼ばれたのだ
文・東川亮【木曜担当ライター】2023年4月27日
第1試合
それが麻雀であるならば。
3456の4連形は後の好形を作るための大切な材料だ。
けれども、それが4位までが勝ち抜ける、朝日新聞Mリーグ2022-23・セミファイナルにおける、3位4位5位6位の対決であるならば。
そこに生まれるのは文字通りの潰し合いである。
ただ、ファンから見れば、それも歓迎すべきことだと言っていいかもしれない。
手に汗握る、心震わせる戦いが、そこにはある。
第2試合
東家:仲林圭(U-NEXT Pirates)
南家:松本吉弘(渋谷ABEMAS)
西家:内川幸太郎(KADOKAWAサクラナイツ)
北家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
こじ開けた航路、その先は順風満帆かに見えた
東1局で先手を取ったのは内川、ストレートに手を進めてドラ中の単騎待ちでリーチ。待ちの悪さは打点でカバー、良形で踏み込んでくる相手を斬って捨てようという構え。
内川の河にはヒントが少ない。親の仲林はホンイツチートイツの1シャンテンだったが、無スジのは1シャンテンからでは押すに見合わず、いったんは現物のを切って迂回。
ただ、直後に切られた内川の現物をポンして安全牌の切り。こう構えれば、はテンパイでの勝負となるし、通っていないまわりを引いてもまだ復活のルートを残せる。
すぐにをポンできて、ホンイツのテンパイで勝負。この局は流局となったが、仲林が巧みな打ち回しでテンパイまでたどり着き、親番の継続に成功する。
この連荘が大きかった。次局、仲林は先制リーチをしっかりとアガりきり、リーチツモタンヤオピンフ裏の満貫を決める。
さらに次局は内川とのリーチ対決を制し、リーチタンヤオピンフ三色、再び満貫の加点。
仲林の持ち点は、東1局にして5万点を超え、他3者に3万点以上の差をつけた。どうしても勝利が欲しいパイレーツにとっては願ってもない展開。これは、仲林がこの親番をうまくつないだからに他ならない。
航路は、順風満帆かに見えた。
しかし、そう簡単に終わらないのが、Mリーグである。
悔しさを内に秘めた若武者の意地
松本吉弘は、この試合がチーム9試合ぶりの出場だった。4月18日の第1試合では、「攻めも守りも中途半端だった」という悔いの残る戦いでラスに沈んでいた。この日はチームメートであり、盟友とも言える白鳥翔のトップを引き継いでの出場。負けるわけにいかない気持ちは、彼とて他の選手と変わらない。
東2局、自身の親番は、仲林からの3900と流局テンパイ2回でつなぎ、3本場まで続いていた。供託も3本溜まっており、アガるだけで3900点のおまけがつく局面だが、松本の手はお世辞にもいいとは言えない。
そんな松本を尻目に、寿人がポン、チーと軽快に仕掛けてテンパイ。とのシャンポン待ちは現状では決してよくはないが、そのままアガれるし、好形変化も期待できる形だ。
続いて仲林もテンパイ。一気通貫と三色の両天秤からの役なしカン待ちは不服も不服だが、寿人が既に2つ仕掛けてテンパイ気配ということで、ここはひょっこりアガれることを重視し、テンパイ外しはせず。
2人に遅れを取っていた松本だったが、1シャンテンまでは来ていた。そこに引いてきたは全員に通っていない牌であるとともに、自分で使うことも可能。一方で、は自身から3枚見え、4枚見えで、限りなく安全牌と言える。
松本は目いっぱいに構えた。既に仲林の背中は遠いが、ここでみすみす親番を失えば、その背中はさらに霞んでしまう。
このを残したからこそ、重ねたドラのを残したときの自由度が増す。カンという不自由なターツを解消し、ピンズのという連続形を生かせる形に。
をポンしてテンパイ。待ちはタンヤオのつくでしかアガれない形だが、アガればタンヤオドラドラ赤の満貫。そして山にはが1枚残っていた。
ツモる前に、松本は間を置き、一つうなずいた。そして伸ばした右手の先に、
最後のがあった。4000は4300オール。
試合はまだ東2局、仲林の楽勝ムードは完全に消えた。このチャンスは、松本自身の攻める気持ちが手繰り寄せたと言ってもいいだろう。悔しさを晴らすために、ここまできたら是が非でも勝利が欲しい。