熱論!21人のMリーガー
白鳥翔・渋谷ABEMAS
〜そして白鳥翔は魔法少女になった〜
文・花崎圭司【渋谷ABEMAS担当ライター】
昔、漫画原作をやりたくて、とある出版社の編集者さんに2年以上漫画原作を見てもらったことがある。
何本も書いたがなかなか作品化にならず、思考が袋小路になっているのが自分でもわかった。
そこで私はあるものを見せた。その当時、私は車の試乗が好きで、自動車ディーラーに行き、いろんな車に乗っていた。車の乗り心地や運転のしやすさ、楽しさ、店の雰囲気・対応などを★5段階で評価して、趣味でエクセルで一覧にまとめていた。軽自動車から高級車までなんでも乗り、気づいたことなどコメントも書いていた。そして乗った車の合計金額が1億円を超えた。
編集者さんにそれを見せた。いつもお世話になっているので、話のネタになると思って見せた。それが「これ、面白いですね」となり、1ヶ月後には車のコラムの連載を持っていた。不思議なものである。
そういうこともあり、「オススメの車はなに?」「どの車乗ったらいいと思う?」と聞かれることがある。
私はまず「好きな車に乗ったらいい」と答える。「でもオススメの車とかない?」とさらに聞かれる。
私は「ヴィッツ」と答える。
相手は、(そういうことじゃないんだよなあ)という苦笑いとはまた違った、微妙な笑顔を浮かべる。
そういう反応になるのが分かっているから「好きな車に乗ればいい」と最初にいったのに、と心の中で思う。。
ヴィッツは日本が誇るコンパクトカーだ。女の子を送迎する、ちょっと特殊なドライバーさんにインタビューをしたことがあるが、都内だとヴィッツが最速だという。首都高でイキったフェラーリをぶち抜いたこともあるという。レーシングドライバーに話を聞いたことがあるが、答えは同じ。日本のコンパクトカーが一番速くて便利だという。
私だけ思っているわけではなかった。送迎のプロも走るプロもヴィッツが一番だと言った。
じゃあ、なぜみんなヴィッツを乗らないのか?
答えは、「無個性」だからだ。
そして「無個性」は格好悪い。
その気持ちはわかる。ヴィッツ同様、街中でよく見かけるプリウスなら、ハイブリッドでエコという「付加価値」があるから無個性でなくなり、プリウスを選択する。
前段が長くなってしまった。
名前から“高級車”である。
あなたのまわりで、これ以上“2次元”の名前の人はいますか? 少女漫画の主人公のような名前はいますか?
女の子がときめくドラマ系の主人公の名前だ。逆に今だと「あまりにもそれっぽすぎる」とボツになるぐらいだろう。
でも私は思う。
白鳥翔は「無個性」だ。
車でいうならば、さきほど挙げた
「ヴィッツ」だ。
彼には“麻雀ハイブリッド”というキャッチフレーズあるが、プリウスではなく、ヴィッツなのだと思う。
彼が持つ他のキャッチフレーズに「供託泥棒」があるが、
現代麻雀で「供託を取りに行く」というのは戦略としてスタンダードになっている。他のMリーガーもやっている。つまり基本、麻雀の打ち筋もスタンダードなのだと思う。
つまり
ヴィッツだ。
彼のRTDリーグのデータを見ると、高い連対率を誇る。誇るのだが、1位ではなく2位の回数が多い。その分ラスも引かない。
また鳴く確率、副露率が高いが、放銃率は低い。これも現代麻雀のスタンダード。
ヴィッツだ。
さらに白鳥は「そこを鳴くのか」ということもないし、「子側の初手ダブ切り」といった新定跡を作ったわけでもない。何度もいうがスタンダードなのだ。
放銃率が低いということは、無理筋を押さないということ。
「無筋を突っ張った! これは強い!」
と麻雀実況で叫ばれることはない。
だから、印象に残らない。街中に溶け込みすぎる車。「無個性」。
でもきちんと結果は残している。
彼が所属する日本プロ麻雀連盟では史上最年少Aリーガーとなり、「麻雀マスターズ」というプロアマオープン戦を連覇している。
彼は強いのだ。でも、それに見合った評価はされていない。
これほど真摯に麻雀に取り組み、結果を出しているのに、注目度が低い。
オラオラのヤンキーの方が発言力が高く、大人になったら真面目に働き始めたら「立派になったね」といわれる。
こっちはヤンキーに虐げられ、真面目に生きてきたのに、なんの関心も持たれない。
ふざけるな、と思う。