挑戦者・瀬戸熊直樹【Mリーグ2022-23 インターバルコラム】文・江崎しんのすけ

挑戦者・瀬戸熊直樹

文・江崎しんのすけ

TEAM雷電は昨2021シーズン、記録的な大敗を喫した。

メンバー全員が不調に苦しみ、マイナスポイントは-1,200ptと聞いたことが無い数字まで膨れ上がり、その中でも瀬戸熊は、個人成績最下位という不名誉な結果に終わった。

昨シーズン、瀬戸熊の最終登板となった2022年3月8日(火)第1試合

東3局1本場を2着目で迎えた瀬戸熊は、ピンズのホンイツ七対子をテンパイしたが、茅森の親リーチへの放銃を避ける【4ピン】単騎を選択。

この選択には辛い結末が待っていた。逆にチンイツテンパイを入れていた滝沢へ跳満を放銃し、瀬戸熊はラスを引いた。

「あの【4ピン】残しはセトちゃん(瀬戸熊)らしくなかったかもしれないね」

試合後の裏インタビューで、解説だった藤崎プロが瀬戸熊に話した。

同団体の先輩・後輩で、Mリーグができるはるか前から切磋琢磨し合ってきた間柄だからこそ、瀬戸熊が不調に苦しむ姿に思うところがあったのかもしれない。

「瀬戸熊らしい麻雀」と言われて思い浮かべるイメージは、ファン1人1人違うほど様々だと思う。

ある時は圧倒的な攻撃を見せ、ある時は繊細な守備を見せる。その根本を支えているのは勝負所を見失わない胆力。

それはこれまで数々の名場面を残してきた瀬戸熊だからこそだろう。

今年のレギュラーシーズンが開幕する前、瀬戸熊はインタビューでこんな話をしていた。

「本当にいろんな意味で守りに入っていて、昔はタイトルを取るしか男子プロが生き残る道はなかったのに、こういう時代になっていて『この場所にいたい』とか『このリードを守りたい』とか、それがやっぱり自分の弱さにつながっていました」

(引用:「闘神、復活!瀬戸熊直樹、プロ人生最大の屈辱で見えたもの「実績はゼロと思ってやる」)

数々のタイトルを取り、これまで実績を積み上げてきた瀬戸熊。
しかしそれが逆に、足枷となって選択肢を狭めていた場面があったのかもしれない。

インタビューの最後に「もう一回、何もなかったところを思い出してやりたい」と語ってた。

そして迎えたレギュラーシーズン2022。
歴戦の王者ではなく一人の挑戦者としてレギュラーシーズンを戦った瀬戸熊は、昨シーズン以上に貪欲にアガりを求めた。

その姿勢は数値としても現れている。
今シーズンの瀬戸熊の和了率は20.67%と過去で一番高く、逆に平均打点は6,437点と過去一低くリーグ平均すら下回っている。


※和了率リーグ平均:19.67% 平均打点リーグ平均:6,692点

数値だけ見ると、勝負どころで高打点を決める瀬戸熊のイメージとはだいぶかけ離れている。

私が個人的に昨年から変わったと感じたのは仕掛けのタイミングだ。

1月2日第1試合東1局の親番。

初っ端からチャンスが訪れる。カン【5ピン】の愚形はあるものの、うまくいけば6,000オールも狙える手材料。

ドラの【北】をリリースして、現状リャンシャンテンだが早めに処理することでスピード感を演出し、他家にプレッシャー圧をかけていく。

すると2巡後、西家の園田が【2マン】をチーして打【3マン】とする。

発バックの1,000点仕掛けで打点力こそないものの、他家からリーチが入れば【發】を切って迂回できる守備力が確保された仕掛け。【3マン】【3マン】【4マン】から【2マン】をチーすることで他家からはテンパイ、もしくは好形のイーシャンテンに見えるため、手がたちが整っていない他家はオリてくれる可能性もある。
相手が自分の動きをどう読むのかを逆手にとった、非常に園田らしい仕掛けだ。

2シャンテンだった魚谷はターツ落としの最中だったが、手に残った2sが園田に当たる可能性があるため守備的に構える。

仕掛けた園田と親の瀬戸熊に通る【1マン】を抱え、【3マン】が切られた今比較的通りやすい打【6マン】を選択した。

この魚谷から放たれた【6マン】を、瀬戸熊はチー。

打点に定評のある瀬戸熊は、しばしばそのイメージを逆手にとって他家にプレッシャーをかけ牽制することがあった。

ただ今回はドラが北なのでチーが入って満貫になるケースはかなり限られる。
(タンヤオ赤3やタンヤオ・三色赤赤など)
そのため赤ドラを持っている他家からは高打点が否定されやすく、他家への圧は期待できない。

この鳴きは、シンプルにアガリに向かった鳴きだと考えられる。
仕掛けが入った園田へ速度感を合わせるためにも、カンチャンが残るがお構いなしにリャンメンからチーから入っている。

シーズンの序盤は中々ツモとかみ合わず苦戦していたが、後半はアガリを追う姿勢に牌が噛み合い始めており、この局も鳴き判断が功を奏した。実際に瀬戸熊が6mをチーした後、ドラの北を暗刻にしている瑠美からリーチが入り

魚谷から打たれた現物の【2ソウ】をチーしてテンパイ。

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