この世で一番大事な
金と友だちの話
西原理恵子さんの単行本「この世で一番大事なカネの話」(理論社)や、「生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント 」(文春新書)が快調に売れています。
「西原さんて、漫画本だけじゃなくて、活字本も売れてるんだね」
「まじめに作った本よりも、本みたいな物のほうが、今は売れてるみたい」
いやいや、立派な本ですよ。 二十数年前、私が西原理恵子さんと仕事をするようになったのは、竹書房の編集局長のおかげです。
当時から私は近代麻雀でコラムを書いていましたが、西原さんの「まあじゃんほうろうき」の連載が始まった時に衝撃を受けました。
「ギャグ漫画にしても、無茶にもほどがある」
デフォルメを超えたような絵柄と、麻雀にほとんど関係ない内容でした。
過去形で書いてしまいましたが、今も変わってないのかもしれません。
さっそく紹介してもらって、いっしょに麻雀を打ち、パチンコに行きました。
私はお金が増えて、西原さんは減り、そのお金でいっしょに焼き肉を食べました。
「焼き肉なんて、めったに食べられないのをオゴってもらったので、うっかり感謝しちゃったじゃないか。元はあたしのお金なのに」
ルポ漫画と言うか実録漫画の「まあじゃんほうろうき」は大ヒット。
その勢いで、対局モノの「サクサクさーくる」や「デカピンでポン!」、「パチンコにはちょっとひとこといわせてもらいたい 」などの、ギャンブル・ルポ漫画を次々と執筆しました。
「貰える仕事なら、何でもやります」
仕事料と原稿料は増えたものの、ギャンブルの負け金額も激増しました。
「印税逆払い漫画家じゃ」
でも、パチンコだけは末井昭さんから攻略法を教えて貰って、大勝してました。
それを借金のある友だちに教えて、完済させたくらいの攻略法です。
パチンコ・パチスロは情報格差が勝敗を分けますからね。
余談ですが、銀玉親方だった私も「必勝ガイド」を印刷中の印刷会社の職人さんに良く質問を受けました。
「天国モードのまま捨てられてる台は、どうやって見分けるの?」とか。
深夜のコンビニで最新の「必勝ガイド」の到着を待つ人よりも、攻略情報が早く入手できるというワケです。
パチンコではちょっと得をした西原さんでしたが、麻雀などその他の種目は血だるまでした。 特に末井さんとパッポン堂のMさんが参戦するようになってからは、レートがアップして流血下血に歯止めがかかりません。
末井さんは優しいんですが、Mさんは西原さんをいじめて喜んでいるようでした。Mさんと言うよりSさんかよ。
SのMさんいわく。
「西原さんは、ウチでも広告をお願いしてるし、どんどん売れて来てますね。
先のことはあまり考えてないように見えますが、実は意図せずにマーケティングとブランディオングができています」
だそうです。良く分かりませんけど。
日銭を稼ぎながら
将来の稼ぐ能力をアップする
十数年前にベストセラーになった自己啓発書「7つの習慣」(スティーブン・コヴィー)に、西原さんのような仕事のやり方が紹介されてます。
P/PCバランス(目標達成・目標達成能力)と言うがそれで、西原さん風に言うなら、
「ウダウダ言わずに今すぐ働け、働きながらもっと稼ぐ力を身に付けろ」と。
これはいくらでも応用ができるので便利。
ミュージシャンなら
「ライブをしながら、ライブの能力をアップする」
「学習しながら、学習する能力をアップする」
「貧乏しながら、貧乏する能力をアップする」
違うか。
西原さんはギャンブルをしながらギャンブルをする能力が上がったワケでは無さそうですが、人間関係や仕事の遂行能力は、見事に開花しました。
「あの頃は何回幽体離脱したか分からないけど、ルポ漫画のおもしろさやコツを、少し覚えたような気がする。 だって元手がかかってるから、漫画で取り返さなきゃいけないし」
その後は、海外の紛争地区のルポなども敢行し、しっかりと元手を取り返しています。
「西原さんて、右腕一本で吉祥寺に自宅とアトリエを建てたなんて凄いね」
「いや、同じ吉祥寺の福本伸行さんちのほうがデカい。あんな絵なのに負けて悔しい」
ざわざわ。
「家族と仕事が多いにしても、ずいぶん広くて豪邸だよね。まさか現金の大人買い?」
「そんなことあるかい。あたしは借金があったほうが頑張れるタイプだと思うんだよね」
外部からのプレッシャーが無くても、自分で作ってしまうんですね。
(文:山崎一夫/イラスト:西原理恵子■初出「近代麻雀」2012年10月15日号)
●西原理恵子公式HP「鳥頭の城」⇒ http://www.toriatama.net/
●山崎一夫のブログ・twitter・Facebook・HPは「麻雀たぬ」共通です。⇒ http://mj-tanu.com/