ずっとトップ目を走っていて、有利な状況なのに、息苦しい。そんな感覚。
もうやめてくれ…必死に現物を打ち続けた13巡目のことだった。
2人の安全牌が尽きた。
いや、1人にも通る牌すらない。
岡田は力なくトイツのに手をかける。
現実は残酷だった。
近藤「12000」
アベマがすかさず顔を抜く。
「…はい」
最後の力を振り絞るように返事をする。
親ハネ貯金と共に、岡田が守り続けた何かが崩れ去る音がした。
もし、国士にいっていれば安全牌は尽きなかったかも…
もし、前の局、素直にアガリにいっていれば…
もし、…
その後、何があったか覚えていないかもしれない。
気がついたら
こんなことになっていた。
松嶋「なんですか?これは」
瀬戸熊「ノーコメントでお願いします」
近藤(クッ…何してくれんだこのおっさん…笑ったら尻を叩かれるんじゃないだろうな)
岡田(堪えろ私…!あんなまくられ方をしたあとにこんな拷問が待っていようとは…)
勝又(前原さんとは何年の付き合いだと思っているんですか。動かざること山の如しですよ)
煽りにあたる、などと、否定的な意見も多かった。
しかし、前原としては何とかMリーグを盛り上げよう、と思っての行動だろう。
若干、感覚のズレを感じるが(笑)挨拶のあとだし、ぼーっと仏頂面で待っているよりかは面白くて良いと思う。
しかし全くの照れもなく、都合1分間この姿勢をキープしていたのはさすがというか、プロフェッショナルを感じた。
さて、ずっと岡田視点で追っかけていたため、とてもしんどくて辛い気持ちになった1戦だったが、ある意味、まくられてよかったとも思う。
岡田が今日戦った3人のタイトル数を数えたら、10や20じゃきかない。
そんな猛者たちとの牌を通したやりとりは、何よりの経験になったはずだ。
負けて悔しい思いをし、勝って泣き、また負けて泣く…
今日のまくられに限らず、Mリーグでの全ての戦いから吸収し、成長していくことだろう。
Mリーグに足りないのは、「若さ」だ。
昨季まで、27歳の松本が最年少だった。
将棋界で言う、藤井聡太のような若くて天才的なヒーローが出てくると、ますます麻雀界も盛り上がるはずだ。
研究熱心でプロ意識の高い岡田は、今日の映像を見返し、また研究して出直してくる。
濃い時間を過ごした岡田がこの1年で急成長することは間違いない。
そのときには、若手の1番手としてMリーグを引っ張っていく存在になっているのかもしれない。
私はその成長を楽しみに、ずっと岡田の姿を追い続けるつもりだ。
麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で戦術特集記事を連載中。note「ZEROが麻雀人生をかけて取り組む定期マガジン」、YouTubeチャンネル「ZERO麻雀ch」