Mリーグでは、発足から3シーズン目となる2020シーズンにおいても数々のドラマが生まれ、ファンに感動と興奮と届けてきた。
3シーズンを終えた今、Mリーグはどのような価値を生み、成長を遂げているのか。
藤田晋チェアマンに、Mリーグの現在と未来についてお話を伺った。
インタビュー:キンマWeb編集部・東川亮
視聴数は2018シーズンの3倍、顧客満足度も高い
-3シーズン目のMリーグが終わりましたが、チェアマンとして、課題や手応えなどはどのように感じていらっしゃいますか。
藤田 初年度のようなパブリックビューイングはできていないのですが、それでもじゅうぶんな盛り上がりは作れたと感じています。集まれればもっと盛り上がるのに、とは思いますが。
-視聴数についてはいかがでしょうか。
藤田 今シーズンはものすごく伸びました。コロナ禍で娯楽が少なかったこともあったにせよ、Mリーグがしっかりと浸透してきたのはあると思います。Mリーグが創設された2018年と比べると、ABEMAの麻雀チャンネルの視聴数はおよそ3倍にまで増えています。
-今シーズンのMリーグ中継において、CMが増えたことが大きな変化としてあったと思います。そのなかで、ソニー損保さん・大和証券さんはMリーガーを起用したCMで話題となりました。
藤田 特にソニー損保さんの「大好き」のCMは、視聴者のみなさんがすごく話題にして広めてくれたこともあり、顧客満足度も大変高かったです。
この事例をきっかけに「ウチもやりたい」とチーム個別のスポンサーも含め、スポンサーの数は、だいぶ増えてきています。近年ではいろいろな新リーグが発足していますが、うまくいかなかったようなリーグも過去にはありました。その点Mリーグは年々着実に成長していると言ってもいいと思います。
麻雀のユーザーはロイヤルティが非常に高い
-最近では各チーム、あるいは各選手がYouTubeで配信をするなどの取り組みも増えています。
藤田 2シーズン目から「この熱狂を外へ」というメッセージを掲げていますが、そこをみんなが意識してくれている、ということですよね。Mリーグという舞台ができたのはプロ雀士にとってうれしいことだと思いますし、それをもっと大事に育てていきたいという気持ちが、選手からは感じられます。
その他にも近代麻雀さんなどのメディアを含め、みんなで盛り上げようという空気はあると思います。誰かが言い出したわけではないけど、これをもっと盛り上げて麻雀の世界を広げようと。Mリーグを立ちあげて、今はこれから大きくしていくフェーズだという認識はちゃんと広がっている感じがします。
-ABEMAにはバラエティーやドラマ、スポーツなどいろいろなコンテンツがありますが、そのなかでMリーグはどのくらいの位置づけにあるのでしょうか。
藤田 数だけで言えば、恋愛番組とかK-1の大会とか、もっと大きいものはいくつかあります。でも何より、麻雀のユーザーはロイヤルティ(※コンテンツに対する愛情などを指すビジネス用語)がすごく高いんです。ABEMAのプレミアムプランであるABEMAプレミアムに入る率、入った人が継続してくれる率、毎回放送をきっかり見に来る率とか、いろいろな数字が高い水準となっています。つまり、すごく濃いユーザー、良質なユーザーを確保できているということなんです。オーナーの社長には「もっとMリーグみたいなのができませんか」とか聞かれますよ。そう簡単にはできないです、って返すんですけど(笑)、それくらい麻雀ファンのユーザーはABEMAにとって価値が高い存在だということです。もちろん、今シーズンの最終日には100数十万視聴があったように、母数も大きいと思います。
変えないことが大事になる
-来シーズン以降のMリーグについて伺っていきたいと思います。まず、レギュレーションについての確認なのですが、2020シーズンから選手入れ替えの規定(※)が設けられました。もし2020シーズンに5位以下だったチームが今シーズンオフに新たな選手を獲得し、2021シーズンでも4位以内に入れなかった場合、この規定は適用されるのでしょうか、それとも選手獲得の時点でリセットされるのでしょうか。
※「2020シーズン」から起算して、閉幕時に2シーズン連続で4位以内に入れなかったチームは、その翌シーズンにおいて最低1名の入れ替え、または追加によってチーム編成を変更、自由契約になった選手は、翌シーズンに所属していたチームとの再契約は不可とする。
藤田 選手を新たに獲得した場合は入れ替え規定が適用されたと見なされ、2021シーズンが1シーズン目に該当するようになります。もちろん選手を入れ替えずにシーズンに臨むチームもあるでしょうし、誰が入れ替えになるのかは来シーズンの見どころの一つになると思います。。
-4シーズン目を迎えるにあたり、大きくレギュレーションを変えるお考えなどはありますでしょうか。
藤田 今のMリーグは、視聴が増え、ファンが増え、スポンサーが増えているというポジティブスパイラルで「うまくいっている」という認識です。そういうときは不祥事などに気を付ける方が重要だと思っているので、微修正はあるかもしれないですけど、大きく何かを変えるようなことはたぶんないと思います。
それに、今の時点で入れ替え規定などがありますし、毎年ドラマみたいなものが継続していくわけですから、シーズンを経ていくごとに面白さはどんどん増していくと思います。3シーズン連続でファイナルに行けなかったTEAM雷電は次のシーズンに期するものがあるでしょうし、ファイナルの後に控え室で嗚咽していた多井さん(渋谷ABEMAS・多井隆晴選手)は、絶対にリベンジしたいでしょう。そういったことも含め、あまり簡単に変えないことの方が大事になるのではないでしょうか。
-以前、藤田チェアマンは「チーム数や選手の枠はある程度固定してやった方がいい」とおっしゃっていたと記憶しています。3シーズン目はチーム数も一緒、新しい選手もKADOKAWAサクラナイツの堀慎吾選手一人でしたが、今後チーム数や選手枠を増やすことについて、お考えは以前と変わらずでしょうか。
藤田 はい、今のところは変わりません。正直、チーム数は増やせますし、Mリーガー以外にも実力と人気を兼ね備えた麻雀プロはたくさんいると思います。ただ、安易にチームを増やして失敗したリーグもたくさん見てきているので、プロ野球に参入するのが大変であるように、今のところチーム数は増やさない方針でいます。ただ、最終的には理事会で決めることになります。
-また、移籍やトレードなどが生まれてくると、新しい盛り上がりも生まれると思います。
藤田 それはMリーグ創設当初より想定していました。移籍があれば選手の年俸も上がりますし、個人的には望んでいるところです。ただ実際には変えてほしくないファンの声が多いですし、企業イメージにも関わるので、難しいところです。。でも、麻雀プロのみなさんは個性が強いので、いずれそういうことは出てくるのではないかなと思っています。
-最後に、4年目以降のMリーグに期待することを教えてください。
藤田 今は良い波に乗っているので、このままどんどん認知を広めていければと思っています。また、不祥事などつまらないことで足元をすくわれないよう、気を引き締めていきたいと思っています。
藤田晋が語る仕事と麻雀の共通点は著書にも書かれています↓
Copyright ©Mリーグ All Rights Reserved.
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。