はじめに
これは麻雀最強位を目指す妻とそれを応援する夫、2人の麻雀プロによる愛に満ちた麻雀戦術記録である。
先日行われた最強戦2021女流プロ最強新世代予選会で見事勝ち上がった妻・駒田真子(こまだまこ)。
日本プロ麻雀連盟の先輩であり、以前に最強戦全日本プロ大会へと進出した経験もある夫・東谷達矢(ひがしたにたつや)。
来る8月22日の決戦に向け、夏の麻雀強化講座が始まった!
東谷「準決勝は2着以上で勝ち上がり、決勝はトップのみがファイナル進出だったよね。何か作戦は用意している?」
まこ「準決勝は予選会と同じような戦い方でいいかなって思ってる」
東谷「予選会の時はどんなことを意識していたの?」
まこ「これはとある人の受売りなんだけど、配牌をもらった時点で点数をつけるようにしているんだよね。この配牌はまとまりそうだから90点とか、この配牌はバラバラだから30点みたいな」
東谷「なるほど。じゃあその点数によって戦い方を変えるんだ」
まこ「そう。配牌の点数が高い時はできる限り真っ直ぐ進めて、逆に低い点数の時は早いリーチが来た時にも対応できるように安全牌を抱えつつ、後半押し返せるような手牌進行になるように心掛けているんだけど、予選会の時は普段よりも守備よりにしていたかな」
東谷「確かに2着以上勝ち上がりのようなトーナメント形式の場合はリスク管理が大切だよね。決勝はどう戦うの?」
まこ「普段より攻撃的にいく」
東谷「50点の配牌だったら?」
まこ「50点か……、様子見かなあ」
東谷「確かに基本的な考えとしてはまこちゃんの考えは正しいと思う。ただみんなトップしか狙わない環境で1半荘でトップをもぎ取る為にはもっと攻撃的でもいいと思う。だから今回は“後手を踏んだ時の戦い方”をテーマにしようか」
まこ「よろしくお願いします!!!!!」
東谷「さて質問があるんだけど、まこちゃんは攻撃と守備どちらが得意?」
まこ「うーーん。どちらかと言えば攻撃かなあ」
東谷「じゃあここで一つ診断をします。東一局にドラのをポンをした南家のAさんの捨て牌がこんな感じだとします」
まこ「うんうん。なんかぱっと見、かなり煮詰まってそう」
東谷「そうだね。そして親番のまこちゃんの手牌が」
ツモ東谷「これだけの情報で打牌を考えると、まこちゃんならどうする?」
まこ「親番とはいえ二向聴だし、は危険だから降りそう」
東谷「何切って降りる?」
まこ「現物がしかないからかな」
東谷「なるほど。じゃあ少し情報を追加しよう」
Aさんの捨て牌
・ドラをポンして打東
・ツモ切りは7巡目のと8巡目ののみ
・は序盤に3枚切れ(完全安牌)
自分の手牌
ツモ
東谷「この場合はどう?」
まこ「えっ? これでも切るかな」
東谷「まこちゃんは自己分析では攻撃型みたいだけど、実は守備よりかもしれないね」
まこ「そうかなあ。先生はこの手牌で以外の牌を切るってこと?」
東谷「そうだね。トップを狙う為の作戦その1、“押す理由を見つけて押せ”」
まこ「ええええええ? 後手を踏んでいるのになんでもかんでも押してたら放銃マシンになって負けちゃうよ」
東谷「普段ならバランスを取って平均着順を上げる為の打ち方でいいかもしれないね。でも最強戦は1半荘限りの超短期決戦。どれだけバランスのいい打ち方をしたとしても2着で終わったらダメなんだよ」
まこ「そうかもしれないけど……」
東谷「納得してなさそうだけど、無理押ししろって話じゃない。大事なのは押す為の材料をどれだけ集められるか。先程の捨て牌をもう一度見てみようか」
Aさんの捨て牌
・ドラをポンして打
・ツモ切りは7巡目のと8巡目ののみ
・は序盤に3枚切れ(完全安牌)
東谷「実は追加情報を見逃さなければ、この捨て牌には傷があるんだ」
まこ「傷?」
東谷「そう。ツモ切りしたのはとだけ。つまり安全牌のを手牌に残していたってこと。まこちゃんはファン牌のドラをポンした時、どう手を進める?」
まこ「基本的にはまっすぐかなあ」