私の中に存在する小さな私
【決勝卓】担当記者:小林正和 2024年9月15日(日)
バースデー・イブの夜空には数え切れない星々たちが瞬いている。そして日付が変わると同時に彼女達の未来もまた、この戦い次第で煌めきを増すかもしれない。
しかし、その栄光を受けられるのは一人だけである。
勝利─────
それこそが自身へ贈る最高のプレゼント。
その祝宴の招待状を手にするため今宵、美しさと気品が織りなす新たな饗宴(きょうえん)が開かれた。
新世代の幕開け─動と静の攻防─
まず何を言っても目を見張ったのが、今シリーズの予選卓で惜しくも敗れ去った者の顔ぶれだろう。
A卓からは圧倒的勝ち上がり予想数を叩き出した魚谷侑未や、結婚・出産と公私ともに充実した現プロクイーンの蒼木翔子。
B卓からは高宮まり・二階堂瑠美の両Mリーガーが揃って涙を呑む展開と、誰がここまで予想出来ただろうか。
それに代わって決勝卓のステージに舞い上がってきた対局者を紹介すると
A卓からは第23期女流最高位を戴冠したプロ歴7年目の相川まりえ、2年目ながらシンデレラファイト2023優勝と早くも輝きを放ち始めている新榮有理の新星2人。
B卓からは圧倒的タイトル数を誇るプロ20年目の仲田加南や、競技者としてはもちろんMリーグ公式実況と今流行りの二刀流としての顔を合わせ持つ14年目・松嶋桃という組み合わせとなった。
もちろん経験・実績と申し分ないのだが、ある意味で本命不在という構成となった頂上決戦。
そして、その華やかな雰囲気からは想像し難い程の熾烈な戦いが開局から交錯する。
東1局
まず先手を打ったのは松嶋桃であった。
こちらの手牌。
ドラのがポツリと孤立して佇む中、序盤に放たれたを1枚目から積極的に仕掛けていく。
松嶋
「肉食獣とか言いながら、誰よりもピヨピヨしてましたね。」
予選での戦いをそう振り返った彼女は、対局後に本日の解説を務めた新Mリーガーで自団体の同期でもある浅井堂岐から
「良さが全く出ていない。」
という激励ある言葉を受け、このトップ獲りの一戦では期待されているエキサイティングな麻雀を魅せる事を決意。
その思いを表現するかのように心のギアも一段階上げていく。
しかし、その熱くなったエンジンに真っ向勝負を挑んだ者がいた。
その名は
相川まりえ。
松嶋の仕掛けを見るや否やドラのをリリース。
まだ孤立牌のなどが浮いている事を考慮すると、これが意味する事はただ一つ。
“宣戦布告”
に他ならない。
まさかの早すぎるライバル出現にとまどいを隠していたかどうかは分からないが、一呼吸を入れる松嶋。
そっちがそう出るならと
が重なったタイミングで打点をドラではなくマンズのホンイツに求める手組みへシフトチェンジ。
今度はピンズの両面ターツ払いで、被せるように相川に問いかけた。
これに対して、売られた喧嘩は買ってあげるわと言わんばかりに
ターツ選択で強気のマンズ払い切りを選ぶ相川。
そのをポンする松嶋も
この表情である。
見た目は静寂な卓上も、しっかりと目を凝らすその様子はインファイトそのもの。
そして、更にその殴り合いに割って参戦する者が現れた。
新鋭の新榮有理である。