トイトイのイーシャンテンながら、既にとを晒している松嶋に対して強烈すぎる生牌の切り。
145㎝という小柄な見た目からは想像つかないその姿は正にハイエナそのもの。虎視眈々と狙い澄ました獲物を狙っているではないか。
ここまで来ると、場は加速する所まで突き進む。
松嶋が相川から場に放り投げられたをポンして満貫テンパイと一歩前に立った。
いざ蓋を開けてみると無法地帯となった舞台の開演。
だがしかし、そんな無秩序な状態に終止符を打つ者が存在したのであった。
それは、三人のやり合う姿を見守るように眺めていた仲田加南である。
“麻雀ラリアット”の通り名からは真逆とも言えるヤミテン・ピンフツモ。
決勝戦ならリーチの選択肢もあったと思う人が出てくるかもしれないが、仲田は違う。
状況や相手をじっくりも見極めながら、いつも通りの400・700。
“リーチを打たない強さ”
それは
“弱気と我慢は紙一重”という表裏一体を垣間見る瞬間でもあった。
シンデレラに襲いかかった落とし穴
プロ歴わずか2年というキャリアでタイトルを獲得した新榮有理プロ。
麻雀打ちだけには留まらず、所属する団体の実況者としても活躍の場を広げている。
目標の一人とする大先輩の松嶋プロとの対戦は少なからず心にグッとくる所があっただろう。
そして、いきなり訪れた大舞台にも臆する事なく戦っていた。
特に解説の浅井を唸らせた局があったので紹介しよう。
東2局
親の仲田がを仕掛けてテンパイ待ち。それも早めに逃した6巡目のが良いスパイスとなっている。
それに対して新榮の手格好は次のようになっていた。
現状はドラのが浮いているが、ツモ次第では三色変化を含みハネマン級も見込める価値ある手牌である。
実況・日吉
「これは流石にだ。」
解説・浅井
「これは止まらないですね。」
前順に自身でという危険牌を通しており、それに比べたら比較的安全な。
誰しもが放銃を予想した。
しかし、新榮の手が止まる。
6巡目の仲田の手出しに対して疑いの目を向けると、その後に通ったという通った筋のカウントに入る。
そして、冷静な思考を巡らせると、このの危険度がより上がっていると判断して
見事な失点回避となった。
そうなるとファインプレーの後にチャンスあり。
東2局1本場
リーチ・ツモ・ピンフ・一盃口・ドラ
2,000・4,000(+300)
彼女も予選が終わった後のインタビューにおいて
「自分らしくない放銃が続いてしまったので、決勝戦は自分らしい麻雀が打てたらと思います。」
と力強く語った。
“これが自分の麻雀”
そう語るように、このアガリで1枚しかないシンデレラストーリー行きの切符を半歩引き寄せながら後半戦へと突入した。
ところが、思いがけない所で経験した事のない落とし穴が待ち受けている事に。
それは南1局での出来事であった。
親番を迎えた新榮の配牌。
お世辞にも良い配牌とは言えない。
と言うより、悪い部類とも言える。
しかし、悪すぎると逆に良くなる配牌のパラドックスが存在していた。