茶師八段・川上直也が用意した、最強戦で勝つための戦略 #麻雀最強戦2024【全日本プロ選手権】観戦記【決勝卓】文 #東川亮

茶師八段・川上直也が用意した、

最強戦で勝つための戦略

【決勝卓】担当記者:東川亮 2024年10月13日(日)

トップ取りの一発勝負。

麻雀最強戦は、麻雀プロの打つ「競技麻雀」の世界において、異質とも言えるレギュレーションとなっている。もちろん練習することは可能だが、実際の本番、重圧の懸かる場面を経験している人は、最強戦経験者でもない限り、そうはいない。

それは、招待制ではなく勝ち上がり方式となっている麻雀最強戦「全日本プロ選手権」ではなおさらのことだ。

 

■大塚翼が示した指針

だが、今回の戦いには、その経験を持っている者が一人いた。

大塚翼。

2年前の本大会優勝者で、昨年も麻雀最強戦に出場している若手のホープ。

今回は予選、決勝共にマスクを着用しての入場。このあたりも、場慣れしている印象を受ける。

その大塚が、東1局3巡目に【白】をポンして、

ドラもスッとツモ切っていく。

1回勝負、しかもトップ取りとなれば、リードはいくらあっても足りない。フラットな序盤から勝負を優位に運ぶためにも、相手の親番はさっさと終わらせ、自分の親番で大きく加点するのは、いわばセオリーの一つとも言える。そして大塚は情報だけではなく、経験としてそれを理解している。

今回の対局において、アガリの出た局はほとんどが中盤までに決着した。比較的テンパイが早かったこともあるが、後から振り返ると、東1局に大塚がアガった300-500はそんな展開を予兆していたと言えるかもしれない。

 

■折山貴裕の逡巡

折山貴裕は、その判断をどう受け止めているのだろうか。

東2局、親の大塚が先制、関本が追っかけのリーチをしてきた場面。

直後に折山もテンパイした。変則ではあるが3メンチャン、ここで勝負に行く手もある。

しかし、折山はいったん受けに回った。【4マン】がかなり危険な牌で、ここで放銃してしまえば4番手に後退し、親番もないので戦況は苦しくなる。もちろん、そうした判断も決して悪いとは言えない。

次巡に引いたのは、【5ピン】だった。【4マン】を通してリーチをしていれば一発ツモ、満貫からのアガリだったことになる。

数巡後に関本から【4マン】が打たれ、1300のアガリを拾った。供託2本も加え、結果だけを見れば悪くはない。

ただ、やはりトップを獲る上では、どこかで攻め抜く姿勢は必要に思える。そのアガリは折山の心に、どこかしこりを残したかもしれない。結果的に、折山のアガリはこの1回だけに終わってしまった。

 

■茶師八段・川上直也の戦略とは

川上直也はこの一戦に臨むにあたり、「とにかく先手を取る」という意識を持っていたという。

東3局1本場、川上はカン【2マン】待ちテンパイを即リーチと打って出た。【2マン】は2枚切れで決してよくはないが、それでも親のリーチであり、特に接戦であれば押し返しもしにくい。そうした心理面も考慮した作戦である。

関本はアガれそうな手ではあったが、【5マン】が切りきれずに撤退。もちろん反撃を受けて手痛い目に合うこともあるだろうが、それでも決意を持った即リーチは非常に有効な戦術に見えた。一人テンパイで加点できる3000点も、この接戦なら決してバカにはならない。

もちろん、早々のリーチ判断が裏目に出ることもある。南1局には1シャンテン目いっぱいの形から5巡目に【1ピン】【6ソウ】待ちでリーチをかけた。ドラドラで打点もついてくる手だが、結果は流局。一方、どこかで手をほぐしていくことで、ピンフの好形を作ってアガりきる未来もあり得た。この辺りは良しあしだが、そうした芯を持った打ち方をする相手は、やはり相手としてもやりづらいだろう。

川上は南3局の親番でカン【5マン】待ちを即リーチ。変化もありそうな手だが、ここもテンパイ即リーチと真っすぐに攻め、ツモって裏1の2000オールで少しリードを広げると、

南3局2本場では【2マン】【5マン】待ちリーチをオリられない折山から捉えて12000は12600、かなりの大差をつけることができた。

 

■関本幸樹、疾きことイナズマの如く

今回の対局において、個人的に最も印象に残ったのは、関本幸樹だった。

この男、とにかく早い。打牌速度そのものだけでなく、少考がほとんどなく、判断が非常にスムーズ。決して一本道の手ばかりではなく、終盤ともなれば条件クリアのために迷うところもありそうなものだが、打ちながら常に考え、あらゆるケースで答えを決めているのだろう、よどみなく打つ様は非常に気持ち良く感じた。

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