まさかの大反響!
女流プロ雀士・田渕百恵に
コラムを書かせてみたら
とんでもないことに…‼︎
【百恵ちゃんのクズコラム】
VOL.2
我々クズカルテットの朝は遅い。
唯一父は自衛官なので気合いで起きてはいた。
ただし低血圧なためフラフラで壁に顔面をぶつけて怪我をしてしまうことが多々あった。
「明日はどうしても早く起きなければならない」
と言って迷彩服のまま車で寝た時があり、幼いながらにこの父をここまでさせるとは日本の自衛隊とは凄いなと思ったものである。
母は9時開店の美容室を営みながらも9時に開店できたことは片手で数えられるくらいだった。なぜ9時開店にしたかは未だに謎である。お弁当持参の行事があっても朝に間に合うことはまずないのでお昼ギリギリに会場まで届けてくれることが常だった。なお百恵ちゃんは荷物が軽くなる為このシステムに不満はなかった。
問題は姉である。
『死んだか?』
と疑うくらいに起きてこなかった。何度も何度も両親に生存確認をさせられに行っていた。そして寝起きが悪い為、容赦なく殴ってくる。力が弱い為痛くはなかったが殴られる度に
『ロックバンドでも組めばいいのに』
と思っていた。 スキー授業の日に寝坊し、電車で一時間かけて富良野まで行くもスキーを持っていくのを忘れてしまい、校長先生と二人でバターとパンを作らされて帰ってきたこともあった。 地元で1番の進学校(のちに中退する)に通っていたのだが学校のある日でも昼過ぎまで起きてこなかった為、母が長い木の棒を手に入れてきて姉の部屋の真下の部屋から天井を突くという技を会得し継続して行っていたが全く効果はなかった。 今でも朝が弱いため人生で一度たりとも定職に就くことはなくのらりくらりと生きている。
美人はずるい、と百恵ちゃんは本当に思う。
飼い犬であるエリーすら寝起きが悪かった。“眠っている犬”とはそれはそれはかわいいはずだ。しかしエリーに関しては違った。起こされようものなら誰かれ構わず噛みつき、暴れていた。急所に狙いを定め、首や顔に噛み付いてくるのだ。小型犬だったが寝起きのエリーは本当に怖いため誰も近付かなかった。
父を除いては。
父は酔うとエリーの寝起きの悪さを忘れてしまうのかよく起こしては噛み付かれていた。顔や首に傷を作りながら仕事に行く父。職場では
「昨日、ちょっとね…」
とごまかしていたらしい が頻繁に顔面傷だらけで出勤してくる上司なんて絶対に嫌だっただろう。
そして例に漏れず百恵ちゃんも朝が弱かった。
中学生の頃になると登校中に力尽きて公園の土管の中で寝てしまうことが多かった。更に授業を聞くつもりは毛頭なく鞄の中に入っているのは給食の献立表と割り箸、そして小さな毛布だけだった。 置き勉が酷く筆箱さえも学校に置きっぱなしだった為、担任から親に
「百恵さんの置き勉が酷すぎます。常識の範囲を越えていますので親御さんからも注意してください」
と電話を受けたこともあった。が、両親は鼻で笑っただけで一切注意はしてこなかった。田渕家はめんどくさいことが嫌いなのだ。 最終形態は中学3年生の頃で給食前になると非常口から現れ、給食を食べ終わり昼休みになると窓から帰っていた。なぜそんな手順を踏んでいたかというと職員室が生徒玄関の隣にあるため、出入りすると先生が飛んできて追いかけっこのレースがはじまるからだ。そんな理解不能な宇宙人を相手に2年も担任していた先生の心労は計り知れない。その頃から絶対になりたくない職業は“教師”だった。 百恵ちゃんだってモンスターの相手はごめんだからだ。
ただひとつフォローさせて頂きたいことがある。学校には真面目に通っていなかったが、誰かとケンカをしたりもしなかったし学校へ行けばお友達もたくさんいた。同級生からも
“不良じゃないけど行動や服 装が一風変わってる明るい変な人”
という認識だったらしい。百恵ちゃんは断じてヤンキーではなかったのだ。
そんなイカれた中学校生活を送っていたわけだが修学旅行の季節がやってきた…
次回へ続く……!!!
【田渕家登場人物紹介】
・父 コージ:元陸上自衛隊幹部高卒ながら佐官まで登り詰めるも「髪型が奇抜すぎる」という理由で100年に1度あるかどうかの異動の内示取り消しをされた経験がある。現在は三度目の暖かな家庭を築いている。
・母 イクコ:美容師。美容室を自宅で開業するもパチンコにハマり開店休業状態を約20年続けた猛者。おそろしいほど料理が下手。ツーブロックにしたことがある。近況を知らせる連絡では年下のペンキ屋さんとお見合いをしたらしい。
・姉 タエ:無職。1度も定職に就いたことがなく家賃を滞納してはクビが回らなくなりお父さんに払ってもらいに帰ってく るお調子者。過去に大きな交通事故に遭いウン百万円もの保険金を手にするが全てホストクラブに費やした経験がある。
・エリー:田渕家の飼い犬。詐病のプロ。足をひきずったり弱ったふりをしては人間に甘やかしてもらう。動物病院で『至って健康』という診断をされるとそれまでの弱りっぷりを忘れ、凛々しい顔で帰ってくる。趣味は父の顔に噛みつくこと。オスだが思いつきでエリーと名付けられた。
北海道出身。最高位戦日本プロ麻雀協会40期。座右の銘は「ビールは一日3リットルまで」。『近代麻雀』でも同コラムを連載中!