熱論!Mリーグ【Fri】
エースは負けてなお強し!
愚直に最善手を積み重ねる
多井隆晴の凄味
文・masasio【金曜担当ライター】2019年10月25日
Mリーグ2019が開幕して1か月が経った。
11月に入っての初戦。
この日、渋谷ABEMASはここまで5戦ノートップの松本吉弘が志願しての先発出場。
頭一つ抜けて迎えたオーラス。
親番でこの手牌。
松本はをツモってきて1秒も迷うことなくを切った。
2着目の朝倉に逆転を許す条件は、朝倉のハネマンツモか、朝倉へのマンガン放銃。
松本は親なので、オリて流局でもトップだ。
それは分かる。分かるのだが―
まだ5巡目。
普通は、安全牌を確保しつつイザという時(朝倉からリーチが来た時など)にアガれることを考えて手を進めるのではないだろうか。
流局すればノーテンで伏せればよい。
しかしそうしなかったのはトップを逆転されることへの恐怖心だった。
朝倉に「リーチ」と言われるんじゃないか。
こんなしょうもない手から万が一にも放銃して逆転されることは許されない。
1巡でも、1牌でも多く、より安全な牌を持っていたい。
ハネマンをツモられて逆転されたならそれはもうあきらめよう。
そう思って、松本は1巡1巡丁寧に牌を選び続けた。
そして・・・
高宮が3着から2着に上がるツモアガリ。
松本は狙い通り初トップを獲ることができた。
たかが1回のトップだが、打っている本人からすれば待ち望んだ1勝。
ここまで苦労してきただけに喜びもひとしおだろう。
喜び溢れるインタビューで、松本はこう語った。
「このトップは自分にとってはもちろん、ABEMASにとっても大きなトップになると思います」
そう、ABEMASはこの松本のトップでチーム順位を3位まで上げてきた。
次戦トップなら首位まで見えてくる。
ようやく勝ち取った松本のトップ。絶対に無駄にはしたくない。
大事な大事なバトンを受け取ったのは・・・
ABEMASの絶対的エース、多井隆晴だ。
いつも通り不敵な笑みを浮かべての登場。
くしくも今日はパブリックビューイング開催日。
前回のパブリックビューイング開催試合では3着に終わり、涙したことは記憶に新しい。
いつもは、チームメイトからの絶対的な信頼と期待を背負って試合に臨んでいるが、今日はパブリックビューイングに来ている大勢のファンの分の期待も背負って、起家の席に着いた。
マンガンツモられ、2000点放銃などで点棒を減らして迎えた東3局
多井はここからを切った。
一番手広くいくなら当然切りだが、自分の手もそこまで大したことないので、安全牌として持っておきたい。
ドラがでにくっつけてメンツを作りたいところ。先に危険な切りもあったと思うが、ツモツモでタンヤオになるなら採用しようということだ。
安全牌を確保しながらも打点の種は逃さないように打っていく。
親の瑞原が待ちで先制リーチ。
リーチを受けた多井。
をツモってテンパイ。
を残したのが見事正解。を勝負してリーチに踏み切るかと思われたが、25秒の長考の末現物のを切り出した。
見た目はタンキで非常にアガりづらそうだが、を引けば一気に勝負手にランクアップする。
親リーチに対してど真ん中のを勝負して、リーチタンヤオの2600点では分が悪いと見たのだろう。
安全に進めつつ打点が伴えば勝負する、多井らしい選択だ。