メンピンドラドラの超勝負手となって先手を取るとは!
Pirates、優勝に王手をかける、執念の先制リーチ!
このリーチに手が止まったのが多井。
広いイーシャンテンだが、いかんせん打点が安い。
右端に浮いている牌を打てるだろうか。
王者・多井は思考を巡らせる。
(小林は、配牌の時に時間をかなり使った。そしてあの捨て牌を見るに、8種9牌のような、かなり悪い配牌だったのだろう。小林だし、愚形待ちも十分考えられる。だからこの牌は…
押せる!
後ろから見ていて知っているからではない。多井は100%それくらいのことは見ている。
しかし、私の胸を打ったのは次の選択だった。
多井は
くっついてのテンパイ。
リーチのみの愚形だが、待ちとしては悪くない。そして小林の待ちは愚形の可能性も高い。
もうここで勝負をかけるしかないのでは?
場を見つめる多井。
「絶対勝って、バカみたいに俺を信じきっているあいつらに優勝を届けてやるんだ」
そう言い残し最終戦に登板してきたスーパースター。
そんな多井の選択は
オリだった。
魚谷が押してきているのも引いた理由かもしれない。
そして次に
小林の当たり牌をツモって完全に撤退した。
私なら痛恨の12000を放銃していたかもしれない。
多井は、この一局を諦めることが、この半荘を諦めないことに、繋がると。
そしてこの一局を諦めることが優勝を諦めないことに繋がる…そう感じたのだ。
多井の粘りもあって、この局は流局。
東4局1本場
耐えた多井に起死回生のリーチが入る!
ドラが3枚あり跳満・倍満の見える勝負手だ!
すぐに下家の魚谷の手にカメラが移る。
多井の当たり牌が浮いている…!大ピンチだ!
いや、たしかに三色の見えるチャンス手だが、魚谷がこのイーシャンテンからライバルのリーチに突っ込んでいくだろうか。
時間を使う魚谷。かなり精神的に疲弊しているように見える。
やばい…フェニックスファンは思ったに違いない。
50秒の時間を使い、魚谷は静かに
多井の安全牌を置いた。
50秒の半分は、自分を取り戻すための時間。
このリーチには小林も押しづらいはず。それならば私がリスクを背負うのは得策ではない。
たしかに…たしかに、自分も魅力的な手牌だが、押していくにはギリギリ足りない。
そう判断を下したのだと思う。
このリーチが流局し、多井にとっては痛恨の空振り。
その手牌をみて魚谷は何を思ったか。
多井の大剣が、魚谷の鼻先をかすめたものの、ギリギリで踏みとどまった。
そんなワンシーンだった。
南1局
「ポン」
一打一打が苦しく、そして重苦しい中、振り絞るかのように魚谷が声を出した。