「緊急事態宣言」後…コロナ渦中の雀荘メンバー

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、4月7日に「緊急事態宣言」が出された。5月下旬に解除されるまでのあいだ、巷の麻雀店は休業を余儀なくされ、閉店した店もいくつかある。その一方で営業を続けて大繁盛だった店もある。2店の雀荘を掛け持ちしていて、その明暗を目の当たりにした雀荘メンバー・細川淳さん(21)にお話を聞いた。

文・赤松薫

もともと赤字だった店はコロナ休業に耐えられなかった

細川さんが上京したのは約2年前。地元の高校を出てぶらぶらしていたが、「東京で麻雀をして生きていきたい」と一念発起。東京でアパートを借りる時には母親も一緒に来て、生活の基盤を整えるために援助してくれた。その後、テンゴの雀荘勤務を経て、ピンの雀荘で働くようになった。

「緊急事態宣言」が出た時点で、細川淳さんが掛け持ちしていた雀荘は、「ノイズ」(仮名)と「孔雀」(仮名)の2つ。「ノイズ」はピンの東南戦、「孔雀」はピンの東風戦の店で、どちらも都内にある。

「もともとは 『ノイズ』のメンバーだったんですけど、月に10日くらいしか入れなくて、もうちょっと働きたかったので今年に入ってから『孔雀』のウラメンを週に1~2回やるようになりました」

ウラメンとは、「裏メンバー」のこと。雀荘の店員は「メンバー」と呼ばれ、来店した客にお茶やおしぼりを出したり卓に案内したりという仕事をするが、ウラメンはそういった接客は一切しない。
客と同じように店に入り、フリーの卓が立つときは店員の中で最初に卓に入って麻雀を打ち、他の客が来て自分が打たなくても卓が回るようになったら抜けるという仕事だ。収入は日払いの店が多く、仕事を終えたときにその日に払ったゲーム代が戻ってくる。
どのくらい戻ってくるかは店によって違う。

 「ウラメンをしている孔雀で働き始めておいてよかったですね。朝10時から夜10時までの12時間、他のことはしないで麻雀さえ打っていればいいので楽ですし」

この「孔雀」は、近隣の麻雀店が営業を休んでいる間もずっと店を開けていた。
「新規の客がたくさん来ましたよ。他の店が休んでいるから、打ちたい客が流れてきたんだと思います」
もう一つの店の「ノイズ」は、緊急事態宣言を受けてしばらく休業していたが、ほどなくつぶれた。

「店を閉めます、というLINEが来ました。家賃が払えなかったんでしょうね。ずっと赤字でいつやめようかと考えていたところにコロナがあって、やめるきっかけになったんだと思います」

休業店の客がどんどん流れてきて満卓

ウラメンをしている「孔雀」は、コロナの渦中にあってもずっと営業を続けていた。
「オーナーが『よそは休んでるけど、どうしよう? 休もうか続けようか』と迷っているうちに、休んでいる店の常連客がどんどん流れてきて店が繁盛してしまったから、『こんなに儲かるなら開けておこうか』みたいな感じでズルズルやってました。店員も客も『世間はこんなに自粛してるのに続けるなんて、頭おかしいの?』と言いながら来てました。
店員の中には『このご時世に麻雀なんかやってられないから、落ち着くまで仕事は休みます』と言って来なくなった人もいますし、常連客で来なくなった人もいますが、それよりも『ここでしか麻雀打てないんだからここに来るしかない』『ここならやってると思ったよ。最後の砦だね』とか言いながら通う人が多かったですね。セットも常時立っていました。風俗店の男性店員たちが、明らかに、今まで使ってた店がコロナ休業だから流れてきた、って感じでした」
細川さんはウラメンなので、フリーが満卓だろうが、セットが何組入ろうが、ただ麻雀をするだけだ。

「店は24時間ずっと開けていました。6卓の店で、店員はウラメンを含めて3人で回します。朝の10時に出勤して、夜番のメンバーが本走に入っていたら交代します。卓が割れてたことはなくて、行ったらすぐに打つ感じですね。この店は昼と夜に1回ずつ「三勝戦」をやっていて、『今からヨーイドン』で一番早く三勝を達成した人に賞金が出るので、その時間帯にはフリー客が増えるんです。昼の三勝戦のときにだいたい卓を抜けられるので休憩を取ります。そしてまた必要に応じて卓に入り、22時まで打って、その日の日当とバックされるゲーム代を持って帰ります」

休日もセットで麻雀三昧

「孔雀」のウラメンの仕事が休みの日は何をしていたのだろうか?
「休みの日は、別の店でお医者さんたちとセットをしていました。まあ、今もやってるんですけど。
お医者さんも、内科とかのコロナに関連しているところはすごく大変なんでしょうけど、整形外科とか耳鼻科とかだと完全予約診療になってて、きっちり定時に終わって時間があるみたいですね。週に3~4回、15時か16時集合で、終わったら近くのもつ鍋の店でみんなで飲み食いしていました。自粛期間中はそこしか開いてないから、毎回同じ店でした。そのもつ鍋の店も盛況で、夜遅くまでアルコールを出して繁盛していました。飲食店も雀荘も自粛で閉めなかった店の一人勝ち。ハイリスク・ハイリターンってやつでしょうか。
実家の親からは『あまり出歩かないように』と言われてましたけど、出歩くと言っても同じところをぐるぐる回っていただけですしね。住んでいるところと、職場の孔雀と、セットする雀荘とその横のもつ鍋屋。それ以外のところはほとんど行ってないです」

行き場を失った人たちが通う最後のとりでだった

細川さん自身、コロナに感染することを恐れていないのだろうか?
「コロナは怖いですよ。でも僕はまだ若いから、もしもかかっても大したことはないんじゃないかと思っています。もしかしたら、もうとっくにかかっていて、治って免疫があるんじゃないかと思ってます。そんなふうに思っている人は多いみたいですね。
コロナの影響で世間が自粛していても、店がつぶれても、僕自身の生活はほとんど影響を受けていないと思います。でも、世の中の人の生活はかなり影響を受けているんだなということが、雀荘にいてもわかります。孔雀は、僕が働き始めたころは、昼間のフリーなんて1~2卓だったのに、最近は新規客が増えて1日中、卓が回っているのも驚きます。サラリーマンの人たちが、テレワークとか在宅勤務とかで会社に行かなくていいのに、『定期があるから奥さんには今日は出勤日だと言ってこっちに来たよ』なんて人もいます。

「オーナーからは『マスクをするように』と言われてましたけど、昼間はみんなほとんどマスクをしてないです。電車に乗るときや道を歩くときはマスクをしてますけど、店内ではだいたいの人が外してました。ドリンク飲んだり、タバコ吸ったりするのに邪魔ですしね。夜はオーナーが出勤してくるので、夜番の人はつけてたみたいです、一応ね。
僕が打ちながらマスクをしてたのは、タバコの煙が嫌だったときだけですね。手の消毒は一応してましたけど、ほとんどが自己管理だと思います。
みんな、本当に麻雀が好きなんですよ。

『こんな時に店を開けてるなんてオーナーはバカだね』

『家にいりゃいいのに麻雀しに来て金を減らして俺たちはバカだね』

『こんなに儲かるのに休業しているあっちの店こそバカじゃないかね』

……そんなことをお互いに言いながらも、みんなちゃんと体調には気を付けてる気がしますね。孔雀にはコロナを持ち込んじゃいけないっていう気があったんだと思います。だって、孔雀を閉めてしまったら他に行く場所がないんですから。

コロナバブルのピークは過ぎたが……

緊急事態宣言が解除になり、休業中の雀荘が営業を再開したが、「孔雀」の見通しは?
「まあ、もともと行きつけの店があったフリー客は、また前の店に戻って行ったみたいです。セット客も減りましたね。孔雀の『コロナバブル』は終わりました。でも、完全にみんなが去ってしまったわけではないです。コロナをきっかけに、フリー打ちに行く店が1つ増えたとか、たまにはあっちでセットしようかって感じで気軽に来てくれたらいいと思います。

もっと詳しくは近代麻雀7月1日発売号で

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