降り注ぐ雷の中で…不死鳥と海賊船と格闘俱楽部がつかみ取ろうとした『傷だらけの2着』【Mリーグ2020観戦記３／４】担当記者：ゆうせー

「ロン」

これが仕掛けていた朝倉に放銃。赤2000点のアガリ。寿人は勝負手を潰されてしまう結果となった。

だが、これくらいのことでうつむく寿人ではない。

次の南2局もたたみかけるようにリーチを放つ。待ちは。

追い詰められたのは近藤だ。

リーチがかかった時点でリャンシャンテン。赤が2枚と役牌があっていい手だったが、が出ないまま攻撃を受けてしまった。

次巡、

上家の寿人がを切り、近藤の動きが止まる。

手牌を見やって、近藤は声を絞り出した。

『ポン』

を切って向かって行く。この親を落とせば近藤の、そしてフェニックスの浮上はない。

キリキリとした痛みが胸を差す。

見ている我々でもこんなにも心が痛いのに、打っている選手の心持ちはどうなっているのだろうか。知ってみたいような、怖くて知りたくないような、そんな複雑な心境だ。

次の近藤のツモは、

だ！追いついた！！

このめくり合いに勝てるかどうかが、フェニックスにとってとてつもなく大きい。

格闘俱楽部もここをアガり切れば、近藤の親が落ちて4着を免れられる可能性が高い。

たった一牌の行方が、セミファイナル進出の行方を、チームの運命を大きく左右する。

なかなか決着がつかない。

寿人が3巡後にツモった牌は、

だ！近藤は！？大明カンするのか！？？？

「カン」

勝負に出た近藤。

“ガシッ”

という音を立てながら、が近藤の手牌の左横に現れた。

リンリャンカイホウ赤赤。劇的な4000オール。

起死回生、まさに不死鳥のアガリだ。

これで2着争いは横一線に。

南2局1本場、

今度は朝倉からリーチがかかる。リーチタンヤオドラ、なら出アガリでも三暗刻。

次の近藤の手番、

をつかんで打。近藤は前巡に、先切りしたをかぶっていたが、そのテンパイ逃しのおかげででの放銃を免れることとなった。

麻雀はつくづく数奇なゲームだ。だからこそ、こんなに人を魅了するのだろう。

その後近藤は、

さらに当たり牌のもつかんでしまう。はフリテンだ。

近藤は、

を切った！

この男の嗅覚は、勝負勘は、一体何なのだろうか。

とも通っていないが、とも通っていないのである。

くぐってきた修羅場の数がそうさせるのか。近藤の心の中にいる大魔神の影が後押しをするのか。

右脳の閃きというだけでは説明しきれない未知の魅力が、近藤の紡ぎ出す麻雀にはある。

そして、

予定調和のようにを引いて追いつく近藤。

は山に無く、また朝倉のアガリ牌である残り1枚のも姿を見せずにこの局は流局となったが、放銃を回避して連荘に持ち込んだ近藤の手順は見る者の心を震わせた。