「チーム崩壊の危機を乗り越えて」Mリーグ2020優勝! EX風林火山・藤沢晴信監督、優勝インタビュー【前編】
Mリーグ2020にて劇的な逆転優勝を飾ったEX風林火山。
興奮冷めやらぬ5月19日、EX風林火山の藤沢晴信監督に竹書房までご足労をいただき、優勝監督としてのインタビューに応じていただいた。
今明かされる、EX風林火山の優勝秘話。
インタビュー:キンマWeb編集部・東川亮
■開幕前:「覚悟・背水の陣」に込められた思い
-Mリーグ2020優勝、おめでとうございます。
藤沢 ありがとうございます。
-今シーズンは開幕前に、選手入れ替えに関する独自のレギュレーションを発表されました。まずは、今回の決めに至るまでから教えてください。
藤沢 大前提として、昨シーズンのEX風林火山はレギュラーシーズンで敗退し、3月上旬でオフになってしまいました。コロナの影響もあって考える時間だけはたくさんあり、チームの今後について考えていくなかで、いくら人気者の3人であっても連続で最下位になるようならファンも離れていくし、ビジネスとしても2年連続賞金なしはダメだと思ったんです。その状況を打破するには、起爆剤を作るしかないと。それが入れ替えのレギュレーションと「覚悟・背水の陣」に至った発想の原点です。今シーズンのMリーグでは「2シーズン連続で4位以内に入れなかったチームは、その翌シーズンにおいて最低1名の入れ替え、または追加によってチーム編成を変更」というレギュレーションが加わりましたが、それを1年前倒しした形です。
選手の皆さんにこのことを提案したところ、全員が即答で了承してくださいました。ただ、今思い返せば最下位だったわけですから、チーム責任者の私にそう言われたら即答するしかなかったのでしょう。内心は、相当嫌だったとは思います。
オンラインサロンSS会員の方々には公に発表する前にお伝えしました。みなさん驚かれ、涙を流す方までいたのですが、勝又さんは「大丈夫、勝つから」と言っていましたね。
-今回の入れ替えに伴い、負けた際に監督の責任を問う声もあったと思います。
藤沢 もちろん、退く考えはありました。当たり前ですよね?結果を出すためにやった作戦が失敗したわけですから。もっと言えば、もし辞めることになった際、監督の肩書だった方がしっかり責任を取れると考え、監督になったわけです。
それくらいの覚悟は私にもありましたが、図らずもレギュラーシーズン終了後に入れ替えレギュレーションについて改めて告知をしたところ、私の辞任を求める声が多く見受けられました。「結果を選手に押しつけて、自分はのうのうと居座るのか?」という意見ですね。そこで私は、「ああ、これは辞めるのをやめよう」と思いました。辞めることを決めるのは自分でないと意味がありませんから。ネットの意見に左右されない責任のとり方をずっと考えていたのですが、答えが出ないまま優勝して、丸く収まっちゃいました(笑)。
■セミファイナル:4/27 チーム崩壊の危機
-今シーズンの開幕後は、途中まで調子が良かったものの年明けから不調になるという、負けた昨シーズンと同じような感じでしたね。
藤沢 一応、敗退圏内には一度も入らなかったはずですけど、昨年の悪夢があったので常に不安でした。そしてセミファイナルに進んだ後は短期決戦ということで、順番ではなく調子のいい選手を積極的に使っていくようにしました。実は、そこで初めて選手との衝突があったのです。
-何があったのでしょうか。
4/15のことです。この日は勝又さんが初戦に出場し、3着でした。実は初戦の後、勝又さんは「ツイていない」とこぼしていて、もやっとしたものはあったのですが、2戦目も出場してもらいました。そうしたら、覚えている方もいると思いますが、山に9枚ある待ちのリーチをツモれなくてラスになってしまったのです。
私は初戦後の勝又さんの様子を見たときに、監督として強い意志で他の選手を起用しなければいけませんでした。だけど、どこかふわっとした気持ちで連闘を決めてしまった。これは私の責任です。その場にいた上司は「自分が止めなければいけなかった」と言い、二人で「4/15を忘れないようにしよう」と誓い合いました。流されてはいけない、勝つための采配をしようと。
勝又さんには少し間をとってもらって、4/26に起用した後、次は4/27の第2回戦に起用することをお伝えしていました。ですが、この日は滝沢さんが初戦でトップを獲得。最初の「調子のいい人を使う」というところに照らし合わせるなら滝沢さんに連闘してもらうのですが、勝又さんは一週間以上間が空いていたこともあり、私は勝又さんをそのまま2戦目に起用しようとしました。そうしたら、先ほどの上司がものすごく怒ったんです。「お前の好き勝手やっている仕事じゃない、情に流されるな」と。普段温厚の方があれほど怒ったことに驚いたと共に、会社がちゃんと見てくれていることへの責任を改めて感じ、心を鬼にして方針を変え、滝沢さんに連闘をお願いしました。
勝又さんとしては、来るはずの出番がなくなったわけですから面白くないのは当たり前ですよね。「なんでなんだ」と私に抗議し、そのあとはずっと黙っていました。一応説明はしたのですが明らかに納得はいっておらず、控え室の空気がどんどん重くなって、亜樹さんはあまりの空気の重さに耐えかねて控え室を出たり入ったりしていたくらいです。滝沢さんが2戦目も勝ってくれたものの、あの日の控え室の雰囲気は最悪に近いものでした。
後編に続く
「全ての鬱憤を晴らした勝又健志」Mリーグ2020優勝! EX風林火山・藤沢晴信監督、優勝インタビュー【後編】
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。