「全ての鬱憤を晴らした勝又健志」Mリーグ2020優勝! EX風林火山・藤沢晴信監督、優勝インタビュー【後編】
選手起用を巡って大きく揺れ動いたというEX風林火山。そして運命のセミファイナル最終日を迎える。
■セミファイナル:4/30 信頼が生んだ逆転突破
-結果として滝沢さんが連勝しましたが、その裏ではチーム崩壊の危機があったのですね。勝つか負けるかで、何もかもが変わっていたと感じます。
藤沢 その後、4/30のセミファイナル最終戦はラスさえ引かなければいいという楽な立場で、これも勝又さんのプライドを傷つけるような方針だったのですが、初戦に出る滝沢さんが勝ったら勝又さんを使う、3着4着なら滝沢さんに連闘してもらい、責任を取ってもらうと決めていました。しかし滝沢さんが初戦でラスを引き、しかも内容があまりよくなかった。それを見て滝沢さんの起用を急遽取りやめ、勝又さんを起用することにしたのです。最後の最後で、再度勝又さんを信頼したわけです。
内心は分かりませんが、勝又さんは嫌な顔一つせず、「分かりました」と言って試合に向かってくれました。そして絶対に2着以上が必要な試合で、紙一重の差で2着をもぎ取るという大仕事をしてくれました。本当に、勝又さんを信頼して良かったと思います。
-あそこは滝沢さんが出るとばかり思っていました。滝沢さんでダメならしょうがないな、と。
藤沢 EX風林火山の3選手で一番ハートが強く、厳しい状況を任せられるのが勝又さんだと思っていて、そこについては上司とも考えが一致しました。ただ、南場の最後の親番でダブルリーチを受けたときはさすがに敗退を覚悟しましたね。無意識のうちに、「応援ありがとうございました」のリリース文を考え始めていました(笑)。
■ファイナル:全ての鬱憤を晴らした勝又健志
-ファイナルは初日で連勝、次の日に連ラスという序盤戦になりました。
藤沢 勝又さんはこれまでずっと我慢していたので、ファイナルで頑張ってもらおうと思い、初戦の先発をお願いしました。そうしたら勝又さん滝沢さんで連勝したのですが、翌日は亜樹さん勝又さんでラスラス。その後盛り返したものの、金曜日の2戦目でラスを引いたのはかなり痛かったですね。
-正直、あれで風林火山の優勝は厳しいと思いました。終盤戦は勝又選手が連闘しましたが、選手起用についてはいかがでしたか。
藤沢 5/17の月曜は初戦のオーダーを決める時点で、亜樹さんが濃厚接触者ではないということが確定にならず、滝沢さんは金曜にラスだったので起用は考えていませんでした。そうなると先発は勝又さん以外にあり得ません。その後、亜樹さんが濃厚接触者ではないことが確定したので、2試合目は勝又さんの成績がよくなければ亜樹さんにスイッチ、トップなら勝又さんが決めることにしていました。戻ってきて「どうしますか?」と聞くと、「やります!」と力強い答えが。結果はご存じの通りです!
そして5/18のファイナル最終日です。もともと最終戦は勝又さんにお願いするつもりだったのですが、初戦の起用は悩みました。とてつもなくしびれる状況で、亜樹さんや滝沢さんですら普段と少し違うと、私は感じていました。でも、勝又さんだけは普段とあまり変わらない様子だったのです。これは彼しかいないと思って、初戦も勝又さんに行ってもらいました。
最後の数戦に関してはもう、全く隙がなかったですね。今まであれだけ乗らなかった裏ドラが乗って、一発でもツモれる。我慢に我慢を重ねていた、これまでの鬱憤を全部晴らしてくれました。たぶん、勝又さんのなかに何かが降りてきていたのでしょう。
試合後、勝又さんがしみじみと言っていました。「あれだけ苦労したがツモれましたよ」って。9山のはツモれませんでしたし、裏ドラもレギュラーシーズンで3枚しか乗っていなかったのですが、その反動が一気にきたような気がしています。
-そして、見事優勝されました。優勝したときの気持ちを教えてください。
藤沢 まだ実感はわきません。「疲れた」「ホッとした」という気持ちの方が強いです。やっと終わったと。ウチはMリーグの8チームのなかでも、選手全員を「エース」と胸を張って言えるチームだと思います。その3人をそろえて負けたのでは納得できないですし、その意味でも、今回は勝てて本当に良かったと思います。
-無粋な話ですが、賞金はどのように使われますか。
藤沢 選手にはもともと取り決めをしていた額をお渡ししますが、それ以外は決めていません。ただ、3選手がそれぞれ活躍して勝ち取った優勝ですので、選手に対して何か報いる形を作りたいと思っています。
よく聞く話だと思いますが、Mリーグは優勝しないとチームとしては赤字です。今回は3シーズン目でようやく優勝できたので、会社では褒められました。今までは好きなことをやっているおっさんだったのが、やっと会社に利益という形で貢献できたわけです(笑)。
そして大事なのは今後です。EX風林火山は来シーズンに臨むにあたって4人目の選手を獲得しますので、それも踏まえた上で、賞金の使い道はこれから考えていきたいと思います。
EX風林火山は今シーズンオフ、「ドラフト会議指名選手オーディション」を実施する。総勢169名に及ぶプロ雀士のなかから勝ち抜いたたった1名に対し、ドラフト指名を確約するというものだ。今回はオーディションについてもお話を伺った。
Mリーグ「ドラフト会議指名選手オーディション」とは EX風林火山・藤沢晴信監督インタビュー
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。