Mリーグ「ドラフト会議指名選手オーディション」とは EX風林火山・藤沢晴信監督インタビュー
Mリーグ2020を制したEX風林火山は、5/20より2ヵ月以上にわたる「ドラフト会議指名選手オーディション」を実施する。
優勝者には今シーズンのドラフトでの指名、つまりMリーガーの地位を確約するというもので、参加するプロ雀士の数は169名に及んだ。
今回の選手獲得・オーディション開催に至る経緯、レギュレーション、そしてオーディション参加者へのメッセージに至るまで、EX風林火山の藤沢晴信監督に語っていただいた。
インタビュー:キンマWeb編集部・東川亮
■話題を作って盛り上げたかった
-まず、4人目を取ることを決めた経緯と、それをオーディション形式で行うことを決めた理由から教えてください。
藤沢 今のMリーグのレギュレーションでは、3人チームの場合は誰か一人が新型コロナの陽性判定を受けてしまった時点で試合が延期になってしまいます。そのリスクを回避したかったのが理由の一つとしてありました。
そして最大の理由は、やはり盛り上がること。オフシーズンに話題を提供することはMリーグの熱を持続させることにもつながりますし、それを通じて我々を応援してくれる方も増えるのではないかと思っています。
また、EX風林火山は日本プロ麻雀連盟の選手で構成されているチームですが、新しく選手を取る以上は団体の垣根を越えて、広く考えたいと思いました。そして考えた結果、大会形式がいいなと思いつきました。
実際に募集を始めたところ多くのエントリーがあり、総勢169名で予選リーグを実施することになりました。各団体のタイトルホルダーをはじめ、歴戦の猛者が想像以上に多く参戦してきてくれたのはうれしかったです。
■SNSフォロワー数を優遇するレギュレーション
-今回は、以下のようなレギュレーションで、スタート時に差がつくようになっています。特に、SNSフォロワー数の優遇についてはいろいろな意見が出ていますが、どのようなお考えがあったのでしょうか。
・予選のレギュレーション
各個人 4回戦4節/計16半荘 ポイント優遇制度あり
上位6名が準決勝進出
◯団体推薦者・・・ 50pt
◯タイトル保持者・・・ タイトル保持者(2015年~)賞金÷100,000=pt
現タイトルは2倍、応募時の申告数字を基とする。
◯SNSフォロワー数 ・・・ 10,000人につき10pt(ポイント上限200pt)
10,000人未満未カウント。小数点2位を四捨五入、応募時の申告数字を基とする。
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藤沢 Mリーガーの中には、萩原聖人選手(TEAM雷電)、岡田紗佳選手(KADOKAWAサクラナイツ)など、他のジャンルでめざましい活躍をされている方がいらっしゃいます。Mリーグにはそういう華のある打ち手もいるべきだと思いますし、もともと20万を超えるSNSのフォロワーがいるほど影響力のある方に対しては、相応の評価をしないと失礼だと考えました。また、過去のタイトルホルダーや団体推薦の方についても、こちらの基準で評価させていただいています。
参加されている方の大半はポイントがないところからのスタートですが、もしMリーガーになりたい、169人のなかから勝ち抜きたいのであれば、そういう差も覆してほしいと思います。ちまたでは「テレビ朝日が中田花奈さん(日本プロ麻雀連盟)を指名したいからこのようなレギュレーションにした」という声もあるようですが、そうではありません。そしてもちろん、中田花奈さんがこのオーディションを勝ち抜くのであれば、Mリーガーになる資格は十分あると思います。
-今回のレギュレーションだと、予選の後半戦になったら可能性がないと諦め、辞退するような方も出てくることが懸念されます。
藤沢 169人の中で準決勝に進めるのは上位6人。そうなると、大半が目なしになるのは当たり前です。でも私は、みなさんがそれを承知で、エントリーフィーを払ってチャレンジしてくださっていると思います。こちらはMリーグに近い場を提供しているつもりですし、そこで戦った経験は、たとえ負けたとしても絶対に今後に生きてくるはずです。
それと実際には、完全な目なしというのは今回の大会にはありません。この後お話しする「Wildcard」があるからです。
■「Wildcard」の決め方
-準決勝は「予選大会上位 6名 + Wildcard 2名」で戦うとあります。「Wildcard」はどのように決めるのでしょうか。
藤沢 「今大会の予選で上位6名に入れなかったけれども、実力があると認められた方」を、選手3人の意見を元にチームで選定します。予選に参加していない方が選ばれることはありません。
-そうなると、たとえば中田花奈プロや長澤茉里奈プロ(日本プロ麻雀協会)のような、タレントとして影響力のある方を選ぶこともできると思います。
藤沢 それはありません。あくまでも麻雀の実力のみで評価します。もちろん、中田さんや長澤さんがそれにふさわしい実力を示したなら話は別ですが。
-それが先ほどの「目なしがない」ことにつながるわけですね。スコアが届かなくても、麻雀の実力をしっかりと見せられれば可能性はなくならない、と。
藤沢 その通りです。ただ、たとえば4半荘で役満を4回アガったとか、そういうインパクトだけでは評価はされないはずです。
■指名選手は育成枠ではなく即戦力
-今回SNSのフォロワー数を評価対象にしたのは、加入が決定した方には情報発信なども期待されていることの表れなのでしょうか。
藤沢 その辺りは、加入された方のやり方にお任せします。ただ、チームとしては何らかの形で表には出していくつもりです。たとえばMリーグ開幕までに、多井隆晴選手(渋谷ABEMAS)小林剛選手(U-NEXT Pirates)佐々木寿人選手(KONAMI麻雀格闘倶楽部)黒沢咲選手(TEAM雷電)などの有力選手のところに挑戦しに行くとか。もちろん受けてくれるかどうかは分かりませんし、これは単なるアイデアの一つですが、いずれにしても顔見せの企画はやりたいと考えています。今回のドラフトで選ばれた方は、絶対にスターになるはずです。
-今回のオーディションは、麻雀プロにとってはまたとないビッグチャンスだと思います。
藤沢 実際、今回のオーディションには各団体のプロの方が多数参戦するわけですから、選手獲得を考えているチームであれば必ず注目するはずです。そして場合によっては、そこで指名選手を決めることだってあるかもしれません。万が一我々のオーディションを勝ち抜いた選手への指名が他のチームと競合し、獲得されてしまった場合には、必然的に2位・3位の方が繰り上がることになります。チャンスは大きいと思いますよ。
-最後に、オーディションに参加される麻雀プロに向けてのメッセージをお願いします。
藤沢 今回のオーディションで求めているのは、育成枠ではなく即戦力です。まぐれで勝つのは不可能でしょうし、169人のなかから勝ち抜いた方は既にMリーガーと同等の力を持っているはずなので、もちろん成績次第ではありますが、基本的にチームは即戦力として既存の選手と同等に扱います。
この企画を立ちあげてからよく「どういう人に勝ち上がってほしいか」を聞かれますが、どんな方でも構いません。強豪・有名選手はもちろん、たとえ今は無名な選手であっても、有力選手やポイントのハンデを乗り越えて這い上がる強さを持っているならば大歓迎です。ぜひ、このチャンスをつかみ取ってください。そして我々と一緒に、Mリーグ連覇を目指しましょう!
※キンマwebでは「ドラフト会議指名選手オーディション」の結果・進捗を配信していく他、有力選手へのインタビューなど、本企画を全面的にサポートしていきます。ぜひ、キンマwebでオーディションの様子をチェックしてください。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。