「世界一おもしろい
麻雀というゲームに感謝」
耳にこびりついて離れない
渋谷ABEMAS藤田監督の
ファイナルメッセージ
文・沖中祐也【金曜担当ライター】2023年5月19日
なんということだ。
ラスト1試合を残し、ABEMASが天に届くかのような牙城を築いている。
2位の格闘倶楽部の逆転条件はトップラスを決めた上で102200点以上の素点差をつける必要がある。
他の見どころといえば、3位争いになるか。
完全団子状態で始まったファイナルステージ、均衡が崩れたのは3日目だった。
白鳥・松本のデイリーダブルを決めたABEMASが一歩抜け出し、その後も白鳥・松本の活躍でリードを広げ、この最終半荘を迎える。
ここまでポイント差がついたのは、セミファイナルが存在しなかった初年度のドリブンズ以来である。
(初年度の最終戦直前のスコア)
現実的な条件が最終日まで残らなかったのは、12から16に試合数を増やした影響が少なからずある。長ければ長いほど、差は広がりやすいからだ。
さらに興行的な面で言うと、ファイナルステージは当然8日間とも同じ組み合わせで行われる上、同じようなメンツになりやすく(中盤すぎからは特に)若干の冗長を感じた。
ファイナルに限り、従来通りの12試合で良いのでは?
と思ったが、短いと短いで「その一瞬ツイていたチームが勝つ」「じゃんけんじゃん」「レギュラーシーズンの死闘は一体」という声が出てくる。
16試合でも接戦になることは結構あるだろうし、今回のように差が広がればそれはそれで強さを実感できて負けた方も納得感が生まれる。一長一短なのだ。
同じメンツになりやすいのは、最低試合数(3試合以上)もしくは最大試合数(6試合以下)をルールに加えることで解消できるし、チーム戦感も増すと思うがどうだろうか。
そう、ABEMASは強かった。
それは、ファイナルシーズンに限った話ではない。
それは、今シーズンに限った話ではない。
5年間、ずっと安定した強さを見せつけてきた。
ただ、展開の妙で頂点には縁がなかっただけ。
ずっと夢見てきた栄光まで、あと1試合。
第2試合
南家:黒沢咲
チーム雷電
優勝の行方、という意味では勝負は一瞬だった。
勝又が2600オールをツモった後の東1局1本場。
5年連続の最終戦となる、多井に一気通貫確定のテンパイが入った。
通常ならリーチを打つ場面だが、102200点以上のトップラスを決められなければOKという条件ならば話は変わってくる。
ましてや堅牢堅固、守備力に定評のある多井だ。
私はダマテンに構えるだろうと確信していた。
ところが多井はリーチを打った。
「これは、武士の情けですね」
と解説の土田は語る。
3人にテンパイを教えてあげたと。これが多井の美学だと。
私は断じて違うと思う。
仲間、スポンサー、ABEMASファン、多くのものを背負い、5年目の悲願を達成なるかという場面で、0.01%とて優勝確率の下がる行動は起こさない。
それが酸いも甘いも知り尽くした、多井という男ならなおさらだ。
というわけであらためて考えてみよう。
仮にダマテンに構えたとして、ドラ筋のは出やすい牌じゃない。
それで誰かから先制リーチを受けたらオリるのか?
オリてツモられて…を繰り返していたら、自分がラス目になってしまう。
ラス目になったらあとはKONAMIの寿人はツモリまくるだけ。よもやの結果が生まれる可能性が高くなる。