魚谷侑未、執念の見逃し!
生き残りを懸けた
超積極策で衝撃の2着奪取
文・山﨑和也【月曜担当ライター】2021年2月8日
Mリーガー佐々木寿人が「初」の鳳凰位を獲得した。鳳凰位とは日本プロ麻雀連盟が主催する1年間かけて行われるリーグ戦だ。悲願の初優勝に麻雀界は感動と祝福に包まれた。おめでとうございます。筆者の麻雀観戦歴が浅いのもあるかもしれないが、初優勝は意外であった。ちなみに2位沢崎誠、3位藤崎智、4位勝又健志も皆Mリーガーである。
将棋界でも悲願の「初」が生まれた。山崎隆之八段が23年を経て順位戦A級初昇級を決めたのである。40歳を目前にしての成就に将棋界は沸いた。筆者も同じ名字なので勝手に親近感を覚えている。地球上で最も将棋が強い山崎さんとしてA級での戦いぶりに注目したい。
Mリーグレギュラーシーズンも各チームあと20試合となった。このままいくと、Mリーグでも「初」の優勝が見えてきそうなチームがいる。2位以下は大混戦で、どのチームも敗退の恐れがあるので目が離せない。
2月8日 第1試合
東家 岡田紗佳(KADOKAWAサクラナイツ)
南家 小林剛(U-NEXTパイレーツ)
西家 魚谷侑未(セガサミーフェニックス)
今回は1試合目をお送りする。選手の顔触れはこちら。岡田は1月22日以来の出場で久しぶりの戦いとなる。対照的にフル稼働なのが小林だ。神様、仏様、小林様とか、小林、小林、雨、小林と昔の野球界の流行語が浮かぶ。
東4局から見ていく。微差での点数移動が続き、平穏な立ち上がりとなった。トップは小林の28000点。
小場に滅法強い小林。が対子になり、打とする。
ポンから発進。役牌バックが狙いだ。
門前で手が進められそうだったのは岡田。とのくっつきのイーシャンテンだ。567の三色にはなりにくいが、リーチをかけられそうな手格好。
小林の手順が面白かった。まずはここで打。これならを引いても打でテンパイになる。
を引いた。よっしゃ両面になったとを切りたくなるが。
を切った。これは最終手出しをにしてしまうと、その周辺が危ないと見られて、が出づらくなるということだろうか。
を引いて打とし、クルクルと手の内の牌を入れ替えていく。こうすることで周りに読みづらくさせている効果もあるようだ。そうすると待ちがぼやけてくる。
岡田もテンパイ間近。このに、もし小林がを残していたらチーしてテンパイだったが、それも受け入れてのことだろう。正否は難しかった。
するといつの間にか配牌の悪かった魚谷にテンパイが入った。打とし、待ちのリーチをかける。
親の瀬戸熊もタンヤオドラ2のイーシャンテンだったので、勝負する気満々だった。全員がぶつかりそうな一触即発の事態に。
岡田はを引いた。ここでを切ればテンパイ。だがは魚谷の当たり牌だ。危険と見るなら現物でイーシャンテン維持の打も考えられる。しかし形が悪い。
悩ましげに見える岡田の表情。その選択は。
をツモ切り。これが好判断だった。が自分から見てワンチャンスで切りやすく、形を崩さずに反撃できる態勢を残している。解説の多井隆晴プロも「素晴らしいですね」。ドラそばでもし当たったらという不安もあっただろうが、強気に押していった。
瀬戸熊がリーチの魚谷から出たを両面でチーし、とのテンパイで追いつく。両面というのがポイント。あの雷電に所属する選手が安い仕掛けであることは考えづらい。
岡田はイーシャンテンを維持したまま、当たり牌のにがくっついて両面形のテンパイ。
これなら戦えると、悩みのなくなった表情で打とし、追っかけリーチをかけた。
岡田のリーチを受けた直後、小林にも難しい牌がきた。を切ればテンパイ。岡田には通っているが、魚谷には通っておらず当たり牌だ。とはいえ一方に通るなら押したくもなる。
涼しげに見える小林の表情。その選択は。
を切ってテンパイ取らず。ちょっと意地悪な書き方になったが、先ほど両面で鳴いた瀬戸熊にもは通っていないため、危ないと見た。多井プロは「多分ね、瀬戸熊のことをMリーガーは全員テンパってると思っていますよ」と話すほど、危険なサインでもあるのだ。たとえ2つ鳴いても崩れないのが小林の強み。