データから見るMVP:伊達朱里紗の特異性 そして乗り越えるべきジンクス【Mリーグ2022-23 インターバルコラム】文・渡邉浩史郎

データから見るMVP:
伊達朱里紗の特異性
そして乗り越えるべきジンクス

文・渡邉浩史郎

昨年、彼女のデビュー戦は

様々な色眼鏡を覆す、衝撃の絞りから幕を開けた。

声優と麻雀プロ、二足の草鞋を履く伊達のMリーグ入りはドラフト当初こそ揶揄される声も上がっただろう。しかし、彼女はその実力で黙らせた。

瞬く間に人々は伊達朱里紗に魅了されていった。

スーパールーキーと呼ばれた彼女は圧倒的な内容・結果で、Mリーグ初年度を駆け抜けた。

そして迎えた二年目。

開幕から全力疾走を決める四暗刻。こと実力に関して、もはや彼女のことを疑う人間は誰一人いない。

そして追いすがる松ヶ瀬・本田・瑞原の3者を退けて、長く続くであろうMリーグMVPの栄光に、新たに伊達朱里紗の名前を刻みつけた。

思えばMVP争い、今年は少し毛色が違っていた。

歴代のMVP達を見てもかなりのロースコアでの戴冠である。

2022MVP 伊達:320.2pt 24試合

2018MVP 多井:476.3pt 27試合
2019MVP 魚谷:451.4pt 27試合
2020MVP 寿人:494.1pt 30試合
2021MVP 瑞原:440.6pt 21試合

このロースコアが前代未聞の

「6人がMVP圏内にいる」

という珍事を生み出したといえよう。

どうしてこうなったのか。歴代のMVP獲得時のデータと比較して見てみよう。

まずは和了率と放銃率。

多井:和了率25.87% 放銃率9.30%
魚谷:和了率19.44% 放銃率8.46%
寿人:和了率24.81% 放銃率10.03%
瑞原:和了率27.00% 放銃率5.49% ←!?

「MVPになれるのはその年一番ツイていた人」というのはあながち間違いではない。

リーグ平均の和了率が19%前後・放銃率が10%前後の中で、彼らは明らかに突出した数値を誇っている。

一方で今年の伊達のスタッツは、

伊達:和了率20.14% 放銃率10.07%

突出しているわけではない。リーグ平均とほぼ同じ水準である。

では今年の伊達は何が優れていたのか?

データを見ると、目立っているのは流局時聴牌率。

その数値は51.56%でリーグ2位。聴牌料収支は25000点でリーグ1位である。

しかしこれはそこまでMVPに直結する数字ではない。リーチ成功率が42%でリーグ24位と下位にいることが原因だろう。

実は今回の伊達のMVPには、過去前例にない特徴がある。

それは「順位点+オカの合計がリーグ1位でない」というところだ。

Mリーグは順位点が大きいというように、過去のMVPはみな順位点でリーグトップを記録している。

しかし今年の順位点+オカランキングを見ると伊達は200ptの2位。

1位の本田は280ptと、ここだけで80pt差がついている。

その一方で圧倒的なのは素点。120.2ptは影も踏ませぬ1位である。

この素点を築くに至ったのは平均打点の高さであろう。

リーグ4位の7486.21pt。さらに詳しく内訳をみていこう。

・親の副露時打点が12000.0点のリーグ1位。
・子のリーチ時打点が四暗刻でのブーストも相まって9561.9点の1位。
・子のダマテン時打点が7950.0点の2位。
・子の副露打点が3227.7点のリーグ最下位。

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