Mリーグいくさ物語 マムシの沢崎【Mリーグ2021観戦記1/24】担当記者:東川亮

Mリーグいくさ物語
マムシの沢崎

文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2022年1月24日

大和証券Mリーグでは、32名の実に多彩な打ち手たちが日々しのぎを削っております。いずれ劣らぬ才の持ち主ではありますが、中でも今シーズン、実に見事な麻雀で結果を残しているのが御年67歳の最年長Mリーガー、「マムシ」こと沢崎誠。業界によっては「ご隠居」などと呼ばれてもおかしくない年齢ながら、沢崎はこの時点で個人成績首位の大暴れ。まさに、今が全盛期と言わんばかりでございます。麻雀は年齢・性別などを問わず、いつまでも誰とでも楽しめる素晴らしいゲームですが、それを体現していると言ってもいい存在かもしれません。

今回は、2時間を越える長い戦いとなった1月24日第1試合から、「マムシの沢崎」の戦いを振り返って参りたいと思います。

第1試合
東家:白鳥翔(渋谷ABEMAS)
南家:沢崎誠KADOKAWAサクラナイツ
西家:村上淳赤坂ドリブンズ
北家:伊達朱里紗KONAMI麻雀格闘倶楽部

東1局は、達人の小技がキラリと光った。
流局間際、沢崎は伊達の切った【3ピン】をポン。ハッキリ言ってこの手はアガリどころかテンパイすらできない。しかしもちろん、達人のやることには理由がございます。この鳴きでツモ番を飛ばされたのが親番の白鳥。残りツモ牌は2牌、つまり白鳥は、この鳴きで最後のツモ番を消されてしまったわけだ。白鳥が最後にアガったりテンパイしたりするのを防ぐ鳴き。沢崎は伊達の対面ですから、この鳴きは事前に準備しておかなくては、なかなかできるものではございません。

ツモ番を飛ばされた白鳥の手がこの形。

沢崎の鳴きで村上にズレた次の牌は、なんと白鳥がテンパイできる【5マン】。こうした仕掛けがうまくいくのはどちらかというと珍しいことではありますが、細かいこともサボらず徹底するのが達人というもの。もし白鳥がテンパイを入れて連荘していたら、後の展開は大きく変わっていたことでございましょう。

沢崎は迎えた親番を自身のアガリで連荘。そして次局は、ホンイツの見える形から3巡目に【1ソウ】を切った。ここで先に1枚ソーズを離しておくことが、後からホンイツ仕掛けをしたときの迷彩、煙幕になるのでございます。序盤に忍ばせた、マムシの毒。

沢崎は道中で【白】を重ね、【西】ポンに続いて白鳥の切った【北】をポン。試合後、白鳥はこの【北】切りについて「連荘させた責任を感じていた」と語っております。ただ、もし沢崎の【1ソウ】が後から切られ、露骨なホンイツ仕掛けに見えるようであれば、もしかしたらこの【北】も止まったやもしれません。

最後は自らツモって、2600は2800オール。実に見事なアガリだ。

このままではマムシにいいようにやられてしまう。そこへ待ったをかけたのが、1月2戦2勝の白鳥翔東2局3本場、2巡目リーチならさすがのマムシも防御不能のはず、後はツモか出アガリか、いずれにしても沢崎の親番は蹴れそうだ。

話は変わりますが、沢崎がなぜ「マムシ」と呼ばれているかをご存じでしょうか。静かに潜んで大きなアガリを決めること、そして逆境でも粘り強く戦い相手に食らいつくしつこさが、この異名の由来なのだとか。ここでも、リーチ宣言牌の【7マン】【7マン横向き】【赤5マン】【6マン】でチーして一発を消しつつ前に出る。

無スジ【5マン】をバシッと押し、なんとテンパイ。しかし出ていく【4ソウ】【7ソウ】はどちらも白鳥のロン牌だ。

さすがのマムシもここまでか・・・

と思いきや、テンパイ取らずの打【5ピン】。愚形テンパイ2900では、沢崎のお眼鏡にはかなわない。

【3ピン】引きでの【2マン】【3ピン】シャンポン待ちも拒否。

そして【6ソウ】をチー。何と、白鳥のアガリ牌【4ソウ】【7ソウ】を使い切ってテンパイしてしまった。これだけでも称賛に値するところではあるのですが・・・

決着は白鳥から【5ソウ】を出アガリ。厳しい牌を押しながら、急所だけはしっかりと止める。これぞ常人にはまねのできない、達人の間合いでございます。

マムシのペースで試合は進み、南2局。ここでは白鳥が面白い選択。5巡目に【5ソウ】を切ってカン【2ソウ】待ちの布石を打っているなか、【3ソウ】が3枚になった。これをツモ切っておけば【2ソウ】待ちがかなり強くなりそうではあったのですが・・・

この男もなかなかのくせ者、少々考え手を左に。

なんとここで【1ソウ】切り。白鳥曰く、見た目の枚数で受けを変えたとのこと。

実際に、山には【7ソウ】の方が1枚多く残って、【7ソウ】引きテンパイならピンフもついて待ちも広く、ドラなので打点も高くなる。白鳥、自身の策に溺れず柔軟な方針転換で、会心のリーチを放った!

そこへ追い付いたのが伊達。14巡目ペン【3ソウ】待ち【西】赤ドラでテンパイ、ダマテンでもいいが、ここは打点がほしい。間髪置かず気合一閃、右手がリーチとうなりを上げる!

親番沢崎もテンパイ!しかし親番とは言え、沢崎は他の3人を2万点以上離したトップ目。特に行く理由はないように見えた。現物の【9ピン】はあるし、【發】の暗刻落としでも何とかなりそうだ。

それでも行くのがマムシの粘り。打点は【發】ドラ赤の7700から、見返りもあるならと、ビシッとワンチャンスの【7ピン】を押していく!

しかししかし、次に引いたのがなんと【7ピン】。押したのが【3マン】なら4000オールのツモだった。さすがにこれを捉えるのは厳しい。

これには沢崎、何事かをつぶやき首をかしげて苦笑い。脳裏をよぎるはアガリを捉え損ねた後悔か、はたまた麻雀の奥深さへの感心か。さすがのマムシを持ってしても、麻雀の深淵を探るにはまだ遠い、ということでございましょうか。

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