筆者は、個人的には押したい方だという自覚がある。ただ、実際に瑠美の牌譜を追って自分ならどうするかを考えてみたが、こそ押したかもしれないものの、引きのところで現物を打っていただろうし、で完全にギブアップだった。
ドラと赤がかなり見えていて、で打つ分にはそれほど高打点にはならなさそうだという考えもあっての押しだったかもしれないが、それにしたって親に打つのは損だ。
理屈で考えればかなり見合っていないように思えるし、この押しにかなりのリスクがあることは、本人も分かっているはず。しかし「それでもアガリを取りにいくべき」という判断が本人の感覚・勝負勘なのだとしたら、いずれ裏目を引くことがあるかもしれないにせよ、面白いし魅力的だと個人的には思った。少なくとも、ワクワクした。まねできるとは思えないが。
南3局2本場は瑠美がたろうのリーチ宣言牌を捉えて勝負あり。瑠美がMリーグ初勝利を挙げたことによって、新Mリーガー5名は10月にして全員がトップを獲得したことになった。
「型破り」と「形無し」という言葉がある。伝統芸能の世界では、独自の型を持った上でそれを破る人間を「型破り」、型、すなわち基本も身につけずに新しいことに手を出そうとする者を「形無し」と言うそうだ。
その言葉を借りて表現すると、二階堂瑠美は決して「形無し」などではなく、麻雀という対人要素や運の影響が大きいゲームの中で、型を身につけつつも時にそこから逸脱することで強者に勝つ「型破り」な麻雀で勝ってきた打ち手だと、筆者は推察している。理を突き詰めて勝つ打ち手はもちろん素晴らしいが、そこから外れたやり方で結果を出せるならばそれも等しく称賛されるべきだと思うし、そうした打ち手が勝てることも、麻雀の魅力の一つといっていいのではないだろうか。
二階堂瑠美が信念を持って貫く麻雀。それがどんな結果を生むのか、すごく楽しみになった。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。