信念を貫いた
手組みと押し
二階堂瑠美は
「型破り」
な麻雀で勝つ
文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2021年10月25日
二階堂瑠美のMリーグデビュー戦後、ネット上には瑠美の麻雀に対するさまざまな意見が飛び交っていた。大敗を喫したことはともかく、その過程における選択を否定的に断じる声が大きかったように感じている。
筆者も、瑠美の試合をしっかりと見るのは今回のMリーグがほぼ初めてだったし、試合を見ていて疑問に思う部分がなかったわけではなかった。ただ一方で、瑠美の麻雀を古くから知る何人かの方に話を聞く機会があったのだが、みなさんが一様に同じようなことを言っていたのが、強く印象に残っている。
「瑠美ちゃんは昔からああいう麻雀だったよ」
瑠美は20年に及ぶプロキャリアの中で、数々の実績を残してきている打ち手だ。そして先日も強豪女性プロが集うタイトル戦「プロクイーン」で2度目の優勝という、新たな実績を積み上げた。
新たな勲章をひっさげ、二階堂瑠美がMリーグ2戦目の卓に向かう。
第1試合
東家:二階堂瑠美(EX風林火山)
南家:朝倉康心(U-NEXT Pirates)
西家:鈴木たろう(赤坂ドリブンズ)
北家:白鳥翔(渋谷ABEMAS)
東3局、ここまで瑠美は2度のリャンメンリーチがいずれも不発に終わっているが、この局はトイツの暗刻で仕掛けが使えそうな形。
3巡目にはカン受けのターツを払い、ホンイツへ寄せていく進行。
5巡目に、さらに6巡目には引きと、意志を持って残した字牌を立て続けに重ねた。だが、ここで一気に染める切りではなく切り。場に高いマンズを先に処理して一人に現物・一人に片スジでやや切りやすいを残したところ、マンズのくっつきがあるなら上、そして自身の一色手への煙幕を張るなど、さまざまなことを考えての選択だったという。
その後はオタ風のから仕掛け、自力でを暗刻にしてたろうのを捉え、12000。局の序盤から高打点を見た構想にツモが応え、大きなアガリを手にした。
東4局はこの形からを引いて切り、ソーズの中張牌を厚く持つよりもを引っ張って一気通貫を見る進行。すでに4メンツ1雀頭の候補は足りている、ということもあっただろう。
結果的にピンフドラ赤のリーチとなり、すぐにツモって裏1の3000-6000。2局連続の高打点で一気に他者を突き放す。
南1局、先制テンパイはたろう。4枚あるは暗刻とシュンツで2メンツを構成する形で、現状は単騎待ちだがタンヤオ赤赤で出アガリOK、ピンズを引いての待ち変えはもちろん、マンズやソーズを引いての多メンチャンリーチも狙える形だ。
そこに、親の瑠美からリーチがかかる。一発目で引いた牌は。を切れば待ちのテンパイだが、放銃となれば高打点は覚悟しなければならない。が中スジで自身にが4枚あることからカンチャン待ちもないためいったん切り、あるいは攻めの姿勢でカンから周りのくっつきを求める選択も考えられた。
まだ通っているスジも少ない。そうしたこともあり、たろうは1スジ勝負となる切りで勝負のリーチをかけた。
だが、通らなかった。瑠美の待ちに捕まり、リーチ一発ピンフ赤になんと裏裏までついて18000。たろうにとってあまりに痛すぎる失点となった、
3局連続のハネ満はあまりに華々しく、インパクト抜群。ただ、個人的にはその後の瑠美の麻雀が印象的だった。
南2局では5巡目の引きで手役をチートイツに決める。アガリの道は残しつつ、端牌から切り出している2番手の親番・朝倉に対して早々に受け駒を残す進行に入った。
朝倉のチーが入ってからはトイツ落としでチートイツを見切り、以降は朝倉の現物と端牌以外は1牌たりとも切らない、徹底した打牌選択を行う。
一方で朝倉の親番が落ちた南3局では、一転して自身のアガリへ真っすぐ向かう。朝倉がを鳴いており、二人で親を落としていこうという考えだろう。
そして、興味深かったのが南3局1本場。この局は瑠美が待ちのピンフテンパイでたろうの親を蹴ろうとしていたのだが、そこにたろうからリーチが入る。現状トップで、親リーチに振り込んで連荘などされたら目も当てられない。1枚切れのが雀頭でオリられる材料もあり、少しでも危険度の高い牌を引いたらすぐにオリるかと思われた。
だが、のダブルワンチャンスとはいえ、通っていないをプッシュ。リャンメンで当たるときは赤か絡むため、ちょっと打ちにくい牌だ。
引きで、を切れば待ちがに増え、高目が一気通貫になる形に。ただしは全くの無スジだ。穏やかに行くなら現物を切っての役なしテンパイ続行だろう。
瑠美はを打ち抜いた。リーチ前に1枚もマンズを切っていない親に、無スジのマンズを押したのだ。
瑠美はその後も無スジの、ダブルワンチャンスのと押し、テンパイを取りきった。は、たろうの入り目だった。