元々待ちは、あの待ち変えをした瞬間もそうだが、かなり弱いと思っていたわけだ。
つい手拍子で人はカンチャンの形をさばきたくなってしまうものだが、
ターツそのものがカンチャンのような弱さであるならば、それをで解消すれば良かったのだ。
そうすれば、白鳥は次巡のツモで
チーになっていた。
この巡目の全体の捨て牌はこう。
手牌は
チー
として。
切りの待ちはかなり弱そうなので、切りの待ちにするだろう。
そしてこの瞬間。
萩原の2枚目のが間に合って、ハネマンを討ち取れていた格好になる。
このときより白鳥は、自分の鳴き方についての後悔があったわけだ。
しかし、その自分だけが気づいていた、観戦者が思いも寄らなかったミスを取り返すために、
親リーチを受けても闇雲に押すわけではなく、思考を止めず立ち向かったのである。
ミスはもちろん、どんな人間にだってある。
しかしそれを悔やむあまり、まだ勝負の途中で周りが見えなくなってしまうことはないだろうか。
ミスをしてしまったその状況でも、事態を好転させる最善の一手があるかもしれない。
白鳥の果敢な放銃は結果自身の4着を生んでしまったが、
失敗の多い凡庸な私たちに、そこで恥じたり諦めたりしない、強い心の在り方を教えてくれたような気がするのである。
※「週刊Мリーグセレクト」は次回以降、不定期掲載になります。
日本プロ麻雀協会1期生。雀王戦A1リーグ所属。
麻雀コラムニスト。麻雀漫画原作者。「東大を出たけれど」など著書多数。
東大を出たけれどovertime (1) 電子・書籍ともに好評発売中
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