予測不能のマルチエンディング・ゲーム そこに潜んだ魚谷侑未の最悪のシナリオ【須田良規のMリーグ2021セレクト11】

しかし、ここで【9マン】切りが選べると。

【1マン】【2マン】【3マン】【4マン】【4マン】【赤5マン】【6マン】【6マン】【6マン】【7マン】【7マン】【7マン】【8マン】
【5マン】【8マン】待ち。
なんと、どちらでアガってもピンフイーペーコー赤ドラドラで三倍満になる。

これで、魚谷から三倍満の直撃だ!

──まあ。

現実的に考えて、そうはならないだろう。

ここまで派手な切り飛ばしをしては、さすがに魚谷も、マンズは切らない。
だいたい園田にもマンズは通っていないし、メンチンなら素点がもったいな過ぎる。

ドリブンズの20pを削るために、ハネマン倍満クラスを差す必要はない。

しかし、私はちょっと意地悪な未来も期待してしまう。

あれだけ差し込みにナイーブで、最悪の結果になることを絶対避けたいと考えている魚谷。

この半荘は最高の内容だった。
素晴らしい攻撃センスで、高々と点棒を積み上げて、最後に臨んだオーラスだった。

そこでふっとアシスト気味に下ろした牌で、
もし三倍満の直撃を食らったら──。

魚谷が実際に持っていた【5マン】【8マン】で、
手負いと言ってもいい土壇場の雷電に、
喉笛を噛みちぎられるような一撃を食らったら──。

それはもう本当に立ち直れないんじゃないか。

こんなことを思って魚谷には申し訳ないし、彼女を苦しめたいわけでもないが、

私はそんな、強者の魂を削られるような困難を見たい、人でなしなのである。

結末は、おそらくだいたいが雷電の2着だったと思う。

そこに至るルートは幾つもあれど、
多少の蛇行は、結局魚谷が修正しにかかったであろう。

しかし、かすかに引かれた悪魔の道筋が。

魚谷のことを口を開けてひっそりと待ち構えていたことは、
このドラマのあってはならない結末として、
心に留めておこうと思う。

麻雀は、本当に予想もつかない結末の可能性を、常に秘めた恐ろしいゲームなのかもしれない。

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