朝倉康心、復活の1戦! 俺たちの天鳳位が帰ってきた!【Mリーグ2021レギュラーシーズンメモリアル】文・第18代天鳳位ヨーテル

聴牌宣言!

オーラスは続行。朝倉には変わらず跳満ツモ条件が残された。一か八かのリーチに出ず、冷静な判断でつかんだ蜘蛛の糸。後は登りきることができるか。

 

南4局2本場、ドラ【5ピン】

朝倉の手は6巡目にしてこの形。跳満ツモを満たすために最善の選択を探る。

ここは打【6マン】。場を見るとソーズの場況が非常に良い。

そして【8ソウ】ツモでリーチ。【6ソウ】をツモって一発か裏。だがこの時点で【6ソウ】は山に1枚。

奇跡を起こせるか…


朝倉、【6ソウ】一発ツモ!

まさかの一発ツモに、観戦していたこちらもつい声が出たのを覚えている。

裏はなくともリーチ一発ツモタンヤオピンフイーペーコー、3200-6200のアガりで、朝倉がトップを逆転した。

白鳥がノーテンで利確していたら存在しなかった一局。この一局をやるために、朝倉は白鳥をテンパイ宣言へと誘導したのだ。


まさかの跳満ツモでまくられた白鳥。やっちまったという感情が画面越しにも伝わってくる。


しかし、インタビューでは悔しさを滲ませながらも「捲られてしまったが、これが最善だろう」と口にした。

私から見ても、この捲られは仕方がないように見える。むしろ勇敢な連荘だ。人間というのは大きな利益を手にするとどうしてもそれを確定したくなる心理が働く。

白鳥は、そんな人間の本能を断ち、ただひたすらに自分の得を追い求めた。

連荘したところで捲られる可能性自体、どんなに高く見積もっても10%はいかないだろう。

しかし、この選択に関して、後日チームメイトの多井は自身の配信で「翔ちゃんが大きいトップを取ってくれることも嬉しいけど、確実にトップを取ってもらえると2戦目の選手が楽に戦える。ということを白鳥に話した」と語った。

なるほど、そういう考え方もあるのか。

確かに、2戦目の選手にとっては負けてもプラマイ0と、負けたらマイナスとではプレッシャーのかかり方が違う。これもチーム戦の面白さか。


そして朝倉。オフシーズン中に完璧に仕上げた麻雀で、トップという結果まで付いてきた。

この後、朝倉は10万点超えのトップを取るなど活躍を見せ、チームに高い貢献をしている。

朝倉の復活を待ち望んでいたPiratesファンにとっては歓喜のレギュラーシーズンになったであろう。

そしてそのきっかけとなったのが、この半荘のドラ【2マン】ツモ切り、そしてオーラスのテンパイからの逆転トップにあったのだと思う。

誰もが思いつかない打牌、それを肯定できる自信。そしてトップという結果。朝倉の復活に必要なものがこの半荘には全て詰まっていた。

朝倉康心、ネット麻雀が生んだ新しい形のプロ雀士である。

ネット麻雀の星としてMリーグ入りを果たした朝倉は私にとっては憧れの存在であり、朝倉の勝利こそが私のようなネット麻雀出身の雀士の評価に影響を及ぼすといっても過言ではない。

勝ってくれなければ困る──とは個人的で無責任な願望だが、それは必ず勝てるはずだという確信めいた期待の裏返しでもある。

そしてそれはチームとしても同じであろう。
今シーズンは瑞原の活躍が光っているが、その陰で堂々と麻雀を打ち続け、着実にプラスを持ち帰る朝倉の姿を、チームメイトはとても頼もしく思っているのではないだろうか。

 

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