チームの生命線をつなぐ
松本吉弘決死のカテナチオ
【須田良規のMリーグ2021-22セレクト・セミファイナル4月7日】文・須田良規
セミファイナルが終了し、それぞれのチーム、選手が織り成した悲喜交々のドラマに、
心を打たれた視聴者の方々も多いだろう。
個人の人生を大きく左右したかもしれない、という視点では、
U-NEXT Pirates・朝倉康心の痛恨のオリ打ち、
そして同チーム・石橋伸洋の、ラス前でのドラツモ切りで、魂を抉られるようなダマハネ放銃があった。
そうした数々の打牌の中でも、私は一つ。目立たないかもしれないが、
この究極のチーム戦の中で、印象的な選手の選択があったので取り上げてみたい。
それは4月7日(木)の第2試合、渋谷ABEMAS・松本吉弘の南3局1本場のシーンである。
点棒状況は東家から、
セガサミーフェニックス・近藤誠一 21300
KADOKAWAサクラナイツ・内川幸太郎 17200
渋谷ABEMAS・松本吉弘 29000
U-NEXT Pirates・小林剛 32500
となっている。
このとき東家の近藤から待ちリーチ。
そして、安全牌に詰まった西家・松本の手牌である。
切りはイーシャンテンであり、
ここをアガればトップはかなり見えてくる。
近藤への危険スジをカウントすれば、
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と、めちゃくちゃにある。
どうだろう?
この状況、ふわっとを切ってしまう人も、多いのではないだろうか。
何と言っても安全牌は皆無、は無数の当たり牌候補の一つに過ぎない端牌である。
しかし松本が選んだのは──、手に3枚ある尖牌のだった。
素晴らしいと、思わないだろうか。
まず、ここまでのチームポイントはこうなっていて、
渋谷ABEMASはトップが必須という状況ではない。
ただ避けられるラスは、絶対に避けたい。
ここでたとえが通ったとしても、次巡以降に何か引いて手が進んで出ていく牌は、やはり危険牌になる。
形も、なかなか満足いく格好にはならなそうである。
リーチの河にはが早々に打たれていて、は持っているかもしれない。
もリーチ前に2枚切られているので、
が待ちとして絡むケースは少ないと見えたのだろう。
実際、リーチに対してアンコの牌が危険だというのは古い幻想だと言われてきている。
仕掛けに対しては、想定できるメンツが絞られるので、もちろんその限りではないが、
対リーチには3巡凌げるアンコ落としは非常に有用になる。
とは言え、よく見るとしても多くは端牌のアンコ落としであって、
はなかなか選ばれるシーンはないだろう。
通した松本もこの苦しい表情である。