大胆と慎重のはざまで ダブルリ―チに身を委ねない内間祐海の判断 麻雀最強戦2022【女流チャンピオン決戦】観戦記【A卓】担当記者:藤原哲史

大胆と慎重のはざまで
ダブルリーチに身を委ねない
内間祐海の判断

【A卓】担当記者:藤原哲史 2022年5月1日(日)

麻雀最強戦2022女流チャンピオン決戦。主要な麻雀プロ団体の女流王者である4名が一堂に会した。

魚谷侑未(日本プロ麻雀連盟所属 女流桜花)

ご存知Mリーガーであり、女流桜花をはじめ数々の華々しいタイトルを持つ。事前のファン投票で実に76.8%の優勝予想を得ており、名実共に文句の無い優勝候補である。

逢川恵夢(日本プロ麻雀協会 女流雀王)

ご存知ガオー雀士。いや、ガオー雀士が何なのかは分からないが、第17,18,20期と4年中3年間女流雀王に輝いており、「女流雀王決定戦にこの人あり」と謳われたその実力は、もはや疑いようがない。

内間祐海(最高位戦日本プロ麻雀協会 女流最高位)

「リーグ戦は、上がるよりも落ちないことの方が難しい。内間祐海が凄いのは、一度も女流Aリーグから陥落していないことだ」内間を知る人間はみな、口を揃える。入会直後にAリーグへ昇級して以来11年間、一度も降級したことのない内間は、昨年悲願の女流最高位に輝いたばかりである。

藤川まゆ(麻将連合 将妃)

藤川は、”良い意味“で異色の経歴を持つ。2010年から3年間日本プロ麻雀連盟に所属したのちに、アイドル、アミューズメントカジノ経営と幅広く活動してきた。2019年麻将連合に入会、2020年に将妃を獲得。高IQ集団「MENSA」の会員資格まで持っている彼女は、その知的なセンスを、麻雀の舞台でも遺憾なく発揮する。

各団体の女流チャンピオンが集まり、団体の看板も背負う形となる今回の対局。
対局開始を告げるドラの音が、卓上に落ちた深呼吸を霧散させた。

逢川の繊細な仕掛け

東2局
開局は、役役ホンイツテンパイの魚谷から藤川が2600を和了。
東2局、逢川が【中】を仕掛けた後、【2ソウ】をチーした。

【6ピン】か、打【5ソウ】か。どちらも受け入れは変わらないが、逢川は打【5ソウ】とした。

続けて【9ピン】もツモ切り。

安全度で言えば【6ピン】より【9ピン】の方が勝るのだが、逢川が【6ピン】を意図的に残した理由は2つある。
ひとつは、ピンズ下の欲しい牌を他家に特定させないことである。早めに打【6ピン】としてしまうと、ピンズの下に最低1ブロック有りそうな逢川の捨牌は、如何にも【2ピン】【5ピン】が欲しそうな河に見えてしまう。ギリギリまで【6ピン】を引っ張ることで、逢川が欲しいピンズを【2ピン】【7ピン】で特定させずに、鳴ける可能性をギリギリまで高めたのだ。

もうひとつの理由は、2巡目の打【8ピン】、離して手出し【6ピン】とすることで、【2ピン】【5ピン】待ちをややぼかせることである。もしも打【6ピン】の時点で【3ピン】【4ピン】の形が残っているのであれば、【4ピン】【6ピン】【3ピン】を引いたこととなるが、とすると2巡目の【8ピン】【4ピン】【6ピン】【8ピン】から打ったことになり違和感があるからだ。(例外はあるが)

狙い通りに【2ピン】が鳴けた逢川。

魚谷のメンピンドラリーチをはじめ、この局は全員にテンパイが入ったが、全てを打ち砕く、逢川の価値ある1000点が炸裂する。

ガオー雀士(?)にも関わらず繊細な理の積み重ねが、逢川の仕掛けを鋭いものにしている。

東3局
開局から2局連続で勝負手を潰された形の魚谷。親番3巡目ドラは【4ソウ】、何を切る?

萬子の4連形に手は掛けないとして、【1ソウ】【2ソウ】のペンチャンを払う人、或いはシンプルに【5ソウ】を切る人もいるだろう。しかし魚谷は、ゆっくりと【8ピン】を離した。

【7ピン】の受け入れを犠牲にする代わりに、下の三色、一通、ドラの受け入れ、全ての高打点ルートを残すことができる。「高打点ルートは無理に狙うものではなく、自然に残すもの」という、お手本のような手順である。

その後、カン【3ピン】を引入れてリーチ宣言をした魚谷。

しかし、押し返した内間の返り討ちに遭ってしまった。

内間の手は5枚見えの現物【6マン】【9マン】待ちであり、拾いにいくことも考えられるが、短期決戦で入った高目タンピンドラ1は勝負手であると、ぶつけることを選んだ。

中~高打点の両面テンパイが入るも、どうしても他家に競り負けてしまう魚谷。他団体のチャンピオンたちが、現役Mリーガーに楽をさせない。

藤川の知的なビタ止め

東4局
藤川の入れたホンイツ仕掛けに対して、逢川のリーチが襲い掛かった。なんと山に6枚生きの【6ピン】【9ピン】待ちである。

藤川が一発目に引かされた【6ピン】は、逢川のアタリ牌。

【1ソウ】を引いた藤川にテンパイが入り、流石にダメか…と見ている側も肩を落とした。

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