魂は叫ぶものじゃない 多井隆晴の選択に 静かに宿っていたもの #麻雀最強戦2022 【 #男子プロ魂の一打 】観戦記【A卓】担当記者 #後藤哲冶

条件は満貫出アガリだけじゃない。3900直撃だってある。
鳴いたら3900の直撃に打ってしまう可能性が上がるだけ。そのリスクよりも、多井は守備に回ることを選んだのだ。

内川が作り切った。
内川にだって意地がある。魂の一打という意味で、全く引けを取っていない。

残された時間はあと5巡。
ツモって裏が1枚乗れば内川の勝ちだ。

これが怖い。地球人打ち手代表の私は、これに震えてしまう。
内川が一回一回ツモ動作に入る度に、怯えてしまう。

けれど多井は一切表情を変えることは無い。
ツモれるものならツモってみろ。そう言っているかのようだ。

誰よりも強いと言われる多井は、誰よりも麻雀に向き合ってきた。
だから知っている。麻雀の面白さも、そして同時に併せ持つ、残酷さも。

全ての対局が、劇的な逆転で終わるわけではない。
ほとんどの対局は、残酷なまでに現実的で、あくまで確率の中で決着する。

魅せることだけが、泥臭くアガリにむかうことだけが、プロの仕事じゃない。

これは最速最強多井が魅せた、いわば魂のスルーなのだ。
以上の結果から、決勝卓進出は

堀慎吾
多井隆晴

の2名になった。

対局前インタビューで、三浦は言っていた。
「自分だって命賭けて麻雀を打っているんだ」と。

ただ、それでも届かなかった。

決勝へ進出した2人の背中から、こんな声が聞こえてくるようだ。

「そんなの俺らだって、何年も前から賭けてんだよ」と。

──だからこそ、麻雀を愛する多くの人は、彼らの闘牌を見たいと心から願うのだろう。

 

 

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