【 #神域リーグ 第7節観戦記】第21試合 苦境でも笑顔 魔法の言葉が、天まで届く 千羽黒乃は麻雀が大好きだから【文 #後藤哲冶 】

そしてツモ。
あまりにも鮮やか。裏が1枚乗っての4000オールは、一気にトップまで見える大きなツモ。
不振にあえぐヘラクレスを救うのは、やはり百戦錬磨の烏天狗なのか。

ヘラクレスの楽屋も大喜び。
松本監督も納得のこの表情だ。

楽屋で選手たちが応援している所が見れるのも、この神域リーグの見どころ。
是非色々な視点で楽しんでもらいたい。

南3局1本場、しかしこれで終わらないのが麻雀の恐ろしい所。

白雪のリーチを受けて、天開が【4マン】を切ってきた。
この5枚見えている【4マン】【7マン】は千羽からすれば急所で、鳴いて【4ソウ】【7ソウ】待ちのテンパイなら十分勝負になる。
何よりヘラクレスはトップが欲しい。ここで親番を繋いでトップを目指したい――。

しかしこの【2ピン】が天開の役牌ドラ3に突き刺さる。
千羽にとって、ヘラクレスにとって、あまりにも痛い一撃。
ファンであれば思わず目をぎゅっと瞑りたくなるような、そんなシーン。

タイミングが悪すぎる。
なんでそんなタイミングで天開にテンパイが入ってしまうんだ。
そんなヘラクレスファンの声が聞こえてきそうだったが――。

――魔法の言葉が耳に届いた。

「お見事なアガリなのじゃ!」

そうだった。千羽黒乃は、そういう打ち手なのだ。
痛くないはずがない。それでも彼女は前を向く、相手を褒める。

その姿勢に、心意気に。多くの人が惹かれて、笑顔になる。

まだ終わっちゃいない。

さあ、オーラスだ。

点差がこのようになった。熾烈な2位争い。
郡道以外は誰がラスになって誰が2位になってもおかしくない状況。

当然場に緊張が走る。
それはリアルの麻雀卓であっても、こうしてネットを通じた卓であっても同じ。

そんなオーラス、まず仕掛けたのは千羽。
なんとここからオタ風東のポン。
役牌を重ねるか、ピンズのホンイツか、はたまたトイトイか。
とにかくメンゼンでは厳しすぎると判断して、前に出る。

怖いはずだ。一応自分は現状2着目で、手牌を短くして放銃に回れば、ラスなんてこともありうる。

けれど千羽は前に出た。
チーム状況を鑑みるとなんとしても2位は欲しい。
チームのため、皆に愛される烏天狗が遥かな天空を目指す。

これを黙って見ているわけにいかないのはもちろん白雪。
現状ラス目で、手牌には役牌の南。
速度を合わせに行く【4マン】のポン。

南4局は2巡にして急速に場が沸騰していた。

先制テンパイは白雪。
郡道から出た【南】を鳴いて【南】トイトイのテンパイ。
トイトイまでつけれたのはかなり大きな意味を持つ。
白雪は立場上1回アガったとしても次がある。

あまり点差をつけられないと、誰かがツモった際の親被りで捲られかねない。
だがトイトイまでついたこの高目7700のテンパイはアガれば大きな意味を持つ。

これを天開から捉えた!
5800は大きな加点。
2着目に躍り出て、更にはトップまで見ることができる。
アトラスが、またも他チームを引き離すのか。

――ここまでは、そんな展開に見えた。

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