指名してくれたサクラナイツのため、ファンのため… そして、ここまで努力を重ねてきた自分のために、俺はトップを持ち帰るんだ!
仲林のリーチ宣言牌を見て、渋川は考え込む。
ドラ3のイーシャンテン。このまま門前進行で頑張るか… いや!
チーした方がアガリ確率は高い!
瞬間はかをツモっての456の三色しかないが、をツモもしくはチーすればタンヤオになる。リーチ者の捨て牌にがあるのでが鳴ける可能性は高い。
をツモって切り。を切ってテンパイにとっても役がない。
そして
をチーしてを勝負。
フリテンだが、まごうことなきマンガンテンパイである。
そのフリテンである…
を打たれたが当然出アガリはできない。
しかし、渋川の手が止まっている。
を打たれた時点でが薄くなったからか。
僕はMリーガーになることを目標としていたが、決してMリーガーがゴールではない。
勝つことがゴールなのだ。
をチーして打! 少しでも山にいそうな待ちに切り替える。
フリテンからフリテンへの待ち変え。Mリーグが始まって5年、果たしてこれまでにこんな鳴きがあっただろうか?
(カンで鳴いてを切るという手もある。その場合フリテンは解消されるがカン待ちになる。)
物語はここで終わりではなかった。
4度、渋川の手が止まった。
安全にテンパイを取った上にフリテン解消のドラポン。
仲林さんよぉ。
ぼくたちはずっとトップの大きい協会ルールで、ずっと切磋琢磨してきたよね。
とんでもない高め狙いや見逃し、そしてこんな食い散らかしも日常茶飯事。
それを、こんな大きな舞台で披露できることが…
何よりも幸せでたまらないよ。
渾身のタンヤオドラ3赤1、12000点!
(こっちは不幸せだよ!)
仲林はさらに渋川の足を蹴った。
そして頂へ
続く南1局2本場、渋川は大きく息を呑む。
234の三色のイーシャンテンというチャンス手だが、魚谷(下家)からリーチが入っているのだ。
魚谷は→と切ってのリーチであり、少なくともカンよりは良い待ち… つまりは好形の可能性が高い。
その中でドラ表示牌のとという危険な2牌が出ていくこの手牌は親とはいえ押すに見合う価値があるのだろうか。
渋川は1つ息をついた。
見合う。
好形の可能性が高いとはいえ、まだ通っていない筋は多い。
ならばトップへのチャンスを目の前にして引く訳にはいかない。放銃したらまたそこから逆転を狙うさ。