憧れのあの人をかわせ! 渋川難波、初勝利までの獣道【Mリーグ2022-23観戦記10/11】担当記者:ZERO / 沖中祐也

心も足も痛い。

渋川難波、前途多難の幕開けである。

本物は誰だ

東2局、役牌を2つポンした寿人。

ホンイツをコンサルタントしていたが、思うようにソウズが引けずに【8ソウ】を余らせてブラフへと切り替える。

同じくその下家である仲林。

同じくホンイツをコンシェルジュしていたが、ピンズが引けなかったので【2ピン】【6ピン】と切ってブラフかつオリの選択を取る。

その【6ピン】に食らいついたのが渋川。

チーテンの渋。タンヤオ赤2で3900のテンパイだ。
ただ8巡目の【5ピン】があれば567の三色もあった。

渋川はここから打【5ピン】
おそらく親(下家)に対する安全度を考えて、【5ピン】よりも【3ピン】を残したのだと推測する。

ただ仲林(上家)に対しては【5ピン】の方が安全である(【2ピン】【8ピン】を鳴いていない)。
正否はわからないが前局の打【6マン】といい、やや慎重だなという印象を感じる。

さて寿人と仲林のブラフに渋川のチーテンが入ったところで、そっと親の魚谷がテンパイする。

【9マン】を切って、ピンフドラドラの両面待ち。
当然のリーチかと思われたが…

魚谷はヤミテンに構えた。
ソウズとピンズの仕掛けがいる中で、マンズは狙い目。
リーチとダマでアガリ率の差が大きいと考えたのだ。

しかし、2巡回したあとに…

魚谷はおもむろに牌を横に曲げる。
このツモ切りリーチには理由がいくつかある。

まず寿人と仲林はノーテンの可能性が高いと感じた。
寿人(下家)は【4ソウ】を対子で落としているし、仲林(対面)もピンズを連打している。
よって渋川の捨て牌に危険な【2マン】【5マン】はすでに止められて打たれないか、あるいは――

山にいるかだ。
リーチツモピンフドラ2、裏ドラこそ乗らなかったものの見事な4000オールとなった。

【2マン】【5マン】という良い待ち(自分が【4マン】を先切りしている)でヤミテンにしないだろう、という要素も少しだけあったはず。

ラストチャンスの渋

その後、流局と小競り合いで東場は終わり、渋川は…

ラス目のまま最後の親番を迎えていた。

そこそこの配牌をもらうも、5巡目に

にっくき仲林からリーチを受ける!
今日も… だめなのか。いや! 当然渋川は諦めていない。

この舞台にどれだけ立ちたかったと思っているんだ。

堀がサクラナイツの4人目に指名された時、渋川は悔しいとも感じなかった。
いや悔しいとも感じなかった自分に悔しかった。

そこから、解説を頑張るとともにYouTubeを初めた。
最大のチャンスとなった次の年、またしても渋川は選ばれることがなかった。

悔しかった。前年より悔しいと思えただけ進歩だが、涙が出なかった自分に対し「まだ努力が足りていないんだろうな」と自己分析した。

さらに努力を重ね、人気YouTuberとなった今年、渋川はドラフト最右翼の選手と言われるまでになった。
そのポジションは座して待っていただけではなく、自分の手で掴み取った席なのだ。

「努力は報われるべき」
そう語るサクラナイツの森井監督に指名され、晴れて渋川はMリーガーになった。

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