我慢と知性で足掻いたオーラス  園田賢のボーダーラインは、そこじゃない【須田良規のMリーグ2022-23セレクト・10月27日】

ただ魚谷は、【3ソウ】はそもそもアシストになると思っていなくて、
【7マン】はやはり伊達に赤赤などで当たる可能性がゼロではない以上、今は踏み込めないと。

【7マン】は堀が直前に切って伊達に鳴かれていないし、園田の側では確かに切った方がいい、と見える牌だが、
魚谷は伊達に打って3着落ちのリスクだけは微塵も負いたくない。

そこに双方の齟齬がある。
園田の考えももっともであるし、2着落ちはぎりぎり受け入れられる魚谷の【3ピン】打ちも仕方ない気もする。

また、魚谷はチートイツイーシャンテンの形は保っているので、園田の最終打牌を伊達がもう一度ポンするようであれば、
ハイテイで魚谷がテンパイする可能性はある。
【5マン】【7マン】【8ピン】を重ねて、そのときはまた切る牌の選択になるが。
(堀にマンガンまでは2着だが、伊達にはドラドラで3着になるから、難しい)

さて、そしてここで園田が誰かにポンさせる牌を選ぶとしたら、【4ピン】【7ソウ】
ただ魚谷は今園田に合わせた手出し【3ピン】で、
ピンズの方を持っていそうな河をしている。

【4ピン】は園田自身で9巡目に切っている牌ではあるが、
今魚谷にポンされる可能性があるのは、【4ピン】ではないだろうか。
それは後に園田も考察しているし、正しかった。

もしここで園田が【4ピン】切りを選んでいると、魚谷がポンしたかもしれない。

ただここもそう単純ではなかった。

魚谷の目線。園田の手番で現在ハイテイは次の堀である。

ここで魚谷が園田からポンできる牌を待ち構えていたとして、
実際園田が【4ピン】を切って、ポンできただろうか。

魚谷の心境としては、悩んで【3ピン】を切ったところまではノーテンの可能性もあるなと。
ただ、ここでノータイムで【4ピン】をスパーンと手出しされたら、テンパイと見えて鳴かなかったであろうということである。
親の園田にハイテイツモの機会を与える必要まではないからだ。

所作や時間が判断基準になるのは賛否あるかもしれないが、対人ゲームである以上少なからずそういう状況は起きる。

そして園田が多少考えて【4ピン】を切ったのなら、ノーテンの気配を感じたのなら、
ポンしてツモ番を回したかったと。

魚谷自身も、ポンする気はあったがそれが完全に100%というわけではなく、
微妙な状況であったのは理解できるだろう。

だからこそ、園田の側でも、魚谷の側でもすれ違いがある気がする。

さてこれは結果論に過ぎないが、そうするとハイテイは堀から園田に回り──、

この【3マン】を園田が引いて、テンパイを果たすことはできていた。

園田賢という選手は、思考の持続を諦めない、本当に理と集中力の人間だと思う。

特に前回の10月25日(火)の試合で見せたカン【5マン】止めの読みなど、常人業ではなかった。

どんな逆境が訪れようとも、運否天賦ではなく自身の思考能力だけで最善の道を示す姿が、
頼もしいし、面白い。

だからこそ、この親番を最後の最後までつなごうと足掻いて、
ふっとその執念の糸が切れたように【西】をツモ切ってしまったことが──、

惜しかったと思うのは酷だろうか。

まだここで、自身の切ってる【4ピン】をポンさせて、ハイテイを引き寄せなかったことを、
責めなければならないだろうか。

私は、園田ならまだ見ぬ未来さえも作り上げることはできたんじゃないかと思う。
園田のボーダーラインは、【3ピン】切りの向こうにあるのではないだろうか。

魚谷の動向は確かに園田の立場ではわからなかったかもしれないが、
それでも西をツモ切るよりは、
もう一度、閉じた運命を切り開く【4ピン】打ちに届くことはできたのではないだろうか。

私たちがいつも心打たれる、我慢と知性で耐える不屈の麻雀。
そのもう一歩先を、限界の向こうを、もっと園田は見せてくれるはずだ。

現在最下位のドリブンズであるが、
できることを最後まで探す園田の麻雀が、
このままチームを終わらせるわけがないのである。

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